授業開始
知里達と別れ、リヒトとエトワールは魔法学校の寮に戻る。
その際、リヒトはブツブツと「イメージ、イメージ」と呟いていた。
傍から見たら変人となっているリヒトを横目に、エトワールはニコッと微笑む。
楽しそうに魔法学校の敷地を歩いていると、ふと、魔法学校の理事長、クインが歩いているのが目に入る。
生徒達を見張っているような様子に、さっきまで楽しそうに笑っていたエトワールの表情が呆れ顔に変わる。
寮に入る為の出入り口の付近に立っている為、避けられない。
めんどくさい事にならないといいなぁと思いながら、エトワールは笑顔の仮面を顔に張り付けた。
リヒトは、ずっと「イメージ、イメージ」と呟き続けており、クインに気づいていない。
寮の出入り口まで行くと、クインが二人を視界に入れた。
「こんにちは!!」
「こんにちは」
エトワールは大きく挨拶、リヒトも誰が目の前にいるのか確認せず、つられるように挨拶をした。
クインは、そんな二人を見て、何も言わない。
エトワールが「なんですか?」と聞くと、眉間に深い皺を寄せた。
「学校内ではないので今回は許しますが、馴れ馴れしく他人と過ごすのはおやめなさい。貴方が弱くなります」
上から威圧的な声が降り注ぎ、リヒトはやっと顔を上げた。
その時に初めて目の前にクインがいることに気づき、顔が徐々に青くなる。
そんなリヒトを横目に、エトワールは笑みを浮かべながら反論した。
「えぇっと、規則は学校生活の中のみの話ですよね? 今は寮をお借りしているとはいえ、規則は適合外のはずです」
「そうですね。なので、罰則は致しません。ですが、貴方の実力はすばらしい。なのに、こんな底辺魔法使いと共に過ごせば、その実力は損なわれてしまいます」
リヒトはクインに睨まれてしまい、何も言えない。
そんな彼女の前にエトワールが立ち、笑みを浮かべた。
「少々、言葉が過ぎるのでは?」
「…………入りなさい」
エトワールが纏っている空気が変わり、クインは一瞬息が詰まる。
深い息を吐き、空を見上げた。
もう、夜も遅く薄暗い。ここで生徒を拘束する訳にはいかないと思い、クインは横にずれた。
怖がりながらリヒトは、エトワールに背中を押されながらも寮の中へと入る。
最後、エトワールはクインを睨み、だが何も言わずに出入り口の扉を閉じた。
※
部屋に戻った二人は、どちらもなにも話さない。
リヒトは、さっきまで恐怖で何も言えなかったが、クインの言葉は頭に残っており、気まずそうにベッドに座っていた。
二段ベッドの上に座っている為、下にいるエトワールからは表情を確認できない。
でも、雰囲気だけでも落ち込んでいるのはわかる。
せっかく、楽しい気分で戻ってきたというのに、散々だ。そう思い、エトワールは頬を膨らませ一人、怒る。
「これは、早急にどうにかした方がよさそうですね」
エトワールがボソッと呟くと、上から名前を呼ばれた。
「エトワールさん」
「なんでしょう?」
見上げるが、リヒトの体勢は変わらない。そのため、エトワールからはリヒトが何を思っているのか分からない。
何を言われるのか考えながら次の言葉を待つ。
「──私、強くなりますから」
「え?」
また、弱音を吐くのかなと思っていたエトワールは、予想外の言葉で変な声を出してしまう。
「絶対に、強くなります。カガミヤさんの役に立てるように。もう、今のような事を言われないように。なので、明日からも、よろしくお願いします!」
やっと、ベッドから顔を出したリヒトの表情は、覚悟が決められた、凛々しい表情となっていた。
エトワールは、自然と口元に笑みが浮かぶ。
「そうね、頑張りましょう」
「はい!!」
※
次の日からは、通常の授業が始まった。
最初の授業は、魔法の理論を学ぶデクスワーク。
エトワールとリヒトは違うクラスになってしまったため最初は不安そうにしていたが、授業が始まると、リヒトは真剣に教師の話に耳を傾ける。
魔法学校の教室は、一つ一つが広い。
教師が立つ教卓には、長方形の黒板が壁に備え付けられ、教師が魔法の杖で文字を書く。
生徒の席は、後ろの人も黒板が見れるように山なりに机が置かれている。
教師からも、生徒がさぼっていないかを確認できるため、この仕様となった。
リヒトは、後ろ側の席。
リーとスーは、前の方の席。
元々、話す事すら厳しい規則だが、席が離れすぎており、情報共有すらできやしない。
そんな大きな教室で、教師は今、魔力の操作について説明をしていた。
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