二重人格者って本当に要るんだな
エトワールって、人を無理やり従わせるのが本当にうまいよな。
脅しではないんだけど、なんか、逆らえない。
なに、あの笑顔。悪魔の笑み?
普通に怖い、逆らえば夢の中送りにされてしまいそう。
そんなこんなで、俺とビジョンは逆らえず今、戦闘準備をしていた。
フィールドに立って、怯えているビジョンを見据えた。
――――ビクッ
…………魔法学校に合格したみたいだし、強いとは思うんだけど、なんであんなに怯えているんだ?
強いのなら、別に怯える必要ないだろう。
「キロンニス先生、よろしくお願いします」
「へいへい。んじゃ、二人とも、準備はいいか?」
なんかなぁ、準備は良くないけど、いいって言った方が早く終わるだろうなぁ。
だから、渋々頷いた。
魔導書を取り出し――――あっ。魔法をあまり印字していなかった。
まぁ、何とかなるか。
今、魔導書を使って出せる魔法は、flame、flamaArrow、acqua、alawaterの四つ。
これだけで勝負できる相手ならいいんだが、エトワールがここまで言うんだから、なめてかからない方がよさそうだな。
「ふぅ…………」
「ひゃっ!?」
「…………なんなの、お前」
集中しただけでこれかよ。
これだと戦えないんだけど、どうすればいいの。
「んじゃ、戦闘開始~」
「俺達の状況ってお前らには見えないのだろうか」
…………魔法を放ちたいのはやまやまなんだが、あんなに怯えているビジョンに攻撃なんて放てないんだけど。申し訳ないん……。
「知里さん、一度本気の魔法を放ってみてください。大丈夫です、ビジョンさんなら余裕でで避けれます!!」
「無理無理無理!! だってこの人、めっちゃ強いじゃないですか! もう、纏っている空気が違います! 魔力も絶対に僕より多いですし、戦闘にも慣れてそう。絶対に勝てるわけがありません!」
…………へぇ、俺達、そこまで一緒にいないよな?
それに、俺はこいつの前で魔法を放ったことはない。
魔力量なんて、普通分からないだろ。
「…………確かに、楽しめそうだなぁ」
「ひっ!? なんで今のでそんなことになるんですか!!」
アマリアもグレールも、ビジョンの言葉に楽しそうにしている。
リヒトとアルカはわかっていないみたいだけど、そこはいいや。
「んじゃ、行くぞ――flame!!」
これは、特に意識のしていない普通のflame。
数個放つと、泣きわめきながら逃げ始める。
…………魔法を放ってくれよ。
「そのまま放ち続けてくださーい!」
「いいのかぁ?」
まぁ、危なくなったらすぐに魔法を消せばいいし、今は見てようか。
「いぃぃぃぃぃいいやぁぁぁぁぁぁああ!!」
「…………心が苦しくなってきた」
どうしよう、本当に放ち続けていていいのか。
うーん、やっぱりやめようかなぁ。
「…………あれ?」
いきなりビジョンが腕につけていた黒いゴムを取り出した。
髪を結んだかと思うと――え?
魔力が急に上がって――……
「acqua!!」
俺が放った炎魔法と同じ数の水基本攻撃魔法を放つ。
お互いの魔法がぶつかり合い、大きな音が響き渡る。
「ゴホッ! ゲホッ!! 魔力、互角?」
水が蒸発して視界が遮られる。
くっそ、気配をさぐっ――……
「後ろ? ――――どわっ!!」
いきなり風を切るほどの蹴りが繰り出されていた。
今までのソフィアの行動のおかげで反射的に避けることが出来て助かった。
いつも、理不尽に殴られているからな。ここで役に立って嬉しいよ、俺。
なんだか虚しいけどね。
「――――へぇ、やっぱり、お前、強いなぁ?」
「…………雰囲気変わりすぎ、二重人格?」
髪を結んだビジョンが、いつの間に握られている魔法の杖を振りかざし立っていた。
妖しい笑み、こめられる魔力。
「…………足元から、魔力?」
下を向くと、不自然に動く影。
これって――……
「phantasm」
影が俺を包み込もうと浮き出てきただと!?
「~~~~~~alawater!!」
水の翼を作り、上空へ逃げ――
「追いかけてくるんかーーーーーい!!!」
くるなぁぁぁぁぁぁぁぁあああ!!!
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