警戒だけはしておいて損はないだろうな
今は、リヒトと二人でツムリア帝国を見て回っている。
なんで二人っきりなのか。それは、周りの奴らが自由人だから。
グレールとロゼ姫は、アルカを連れて武器を見て回ると言っていた。
ヒュース皇子もさすがに自分の仕事を進めないといけないという事で、別行動。これに関しては仕方がない。
アマリアは、アクアと共にツムリア帝国を回りたいと言っていた。
…………こいつは、リヒトと俺を二人っきりにしたい匂いがプンプンしていたんだよなぁ。
ちなみに、エトワールは一人で今日は過ごしたいと言っていた。
流石に昨日、アマリアに怒られたから変な事はしないとは思うし、大丈夫だろう。
それより、今、俺は何をすればいいんだろう。
リヒトは、さっきからなにも言わないし。
はぁ、今日は新しい魔導書を試したかったんだが、仕方がないな。
これから時間は沢山あるだろうし、いつでもいいだろう。
…………管理者の動き次第だけど。
「あの、カガミヤさん」
「どうした?」
「今日は、新しく買った魔導書を試したかったんじゃなかったでしょうか?」
「まぁ、確かに試してみたいとは思っていたんだが、別にそれはいつでもいいしなぁ。これからリヒト達が授業を受けている時間とか暇だし、その時にでも試すよ」
言うと、リヒトが俺の手を掴んで、見上げて来た。
「まだ、合格するかわからないのに、よくそんな事が言えますね?」
「それもそうだが。別に、そこは深く考えての発言じゃねぇよ。試すだけなら本当にいつでもいい。ただ、本当にそれだけだ」
「…………私も、カガミヤさんが魔導書を試す姿を見たいので、魔法を放っても大丈夫な所に行きませんか?」
…………え?
「いや、別にそこまで気を遣わんでもいいぞ? お前はまだツムリア帝国を見て回れてないだろ。これから、俺達より拘束された生活を送るかもしれないんだぞ? 今の自由を楽しんだ方がいいだろう」
子供が気を遣うんじゃありません。
これから大変なのは明らかに俺じゃなくてリヒトなんだからよぉ。今は自由に動こうぜ?
「気は使っていませんよ? 私、魔法を使っているカガミヤさんを見るのも好きなんですよ。だから、私のわがままでもあります。見せていただけませんか?」
えぇ、そんなこと言われると、断りにくいんだけど。
それをわかって言っているとか、無いよな?
「…………俺はいいが…………」
「それなら、ツムリア帝国を一度抜けて、外に行きましょう。来る時に通った森の中でしたら、魔法を使っても問題はないはずです」
なるほどなぁ。
ツムリア帝国を一度出て、ねぇ。
「俺達、怪しい入り方をしていたが、大丈夫だろうか」
「…………そうでした。でも、大丈夫じゃないでしょうか? ほら」
ちょうど出入り口が見える場所まで来ていたらしく、リヒトが指さした。
見ていると、魔法使い達が何も確認せずに出入りしている。
いや、よく見ると受付の近くにカメラが設置されているみたいだ。
監視カメラみたいな感じか? あれで、初めましての人とかを認識しているのだろうか。
「行き来は確かに簡単そうだな」
「はい」
あぁ、でも、そうだな。ここで確認しておいた方がいいのかもしれないな。
これから安い宿に移動すると考えると、どっちみちツムリア帝国は出ないといけない。
「んじゃ、行きますか」
「はい!」
…………なんか、手を繋がれたままなんだけど。
これは、振り払ってもいいのか? いや、悲しませるか。
…………どうすればいいんだよ。
※
無事に外に出れた。
何も確認無かったけど、大丈夫なのか?
そんな不思議に思っていても仕方がないし、森の中に入る。
少し開けたところに移動すると、リヒトが手を離した。
「ここだと、お試しできそうですね」
「そうだな」
少ししか開けていないけど、大きな魔法を放つわけじゃないし、大丈夫だろう。
「んじゃ、魔導書を取りだしてっと」
前まで使っていた革の魔導書鞄。
そこから黒い魔導書を取りだす。
ここには、一つも魔法を印字していない。
印字すると最後かなと思って、怖くてしていなかったんだけど……。
「なんか、いざやってみようとなると不安になるな」
「何が起こるかわかりませんもんね」
リヒトが近づいて来る。
「うーん。なんか、不思議な魔導書ですよね、本当に」
「そうだな」
不思議と言えば、不思議だな。
前まで使っていた魔導書とは、なんか、違う。
何が違うとかは言えないけど、感覚的に違う。けど、悪い感じはしない。だから、買ったんだけどさ。
「うーん。まぁ、やってみないとだし、ひとまず魔導書に魔力を込めるか」
「わかりました!」
さて、どうなるのか。
警戒しながら魔力を送り込もう。
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