なんか、気になるんだよなぁ
リヒトが喜んでブレスレットを付けてくれたのは良かったが、それは別として……。
「さっきより殺気の鋭さが増してないか?」
「増しているね」
なんか、あいつからの殺気の鋭さが増したんだが……。
確か、名前がビジョンって言ったか。
なんで、今日──というか、さっき会ったばかりの奴をそこまで経過する。
俺、お前のこと何も知らないんだけど。
「ビジョンさんは、リヒトさんに一目ぼれしたらしいですよ」
「…………え、一目ぼれ?」
「はい。なので、リヒトさんの貴方に対する態度が嫌だったのではないでしょうか」
…………そういや、女だと思っていたあいつ、実は男なんだっけ。
リヒトに惚れ込んでいたから、俺に笑顔を向けて来るリヒトを見て、標的が俺になったと。
なんで、恋愛に興味も何もない俺が巻き込まれないといけないんだ。
それに……。
――――チラッ
――――びくっ
「はぁ…………」
視線が煩わしいからと思って振り向くも、すぐに怯えて目を逸らす。
んで、俺が前を向くと、また視線を感じる。
「俺、視線苦手なんだけど」
「あればかりは仕方がないね。ところで、それは使うの?」
「それ?」
「それ」と、アマリアが俺の右手を指す。
あぁ、試しで買った魔導書の事か。
「まぁ、使い勝手がよさそうなら」
この魔導書、なんか怪しいばーさんが売ってたんだよな。
出店みたいになっていて、思わず手を伸ばしてしまった。
すると、なんか、俺の魔力に反応したように魔導書が光ったんだよな。
この瞬間を見ていたのは誰もいなく、俺だけ。
微かに魔力が魔導書から漏れ出たのか、近くを見ていたアマリアとヒュース皇子が近づいて来たんだったな。
「…………あのばーさん、信用していいと思うか?」
「わかんない。だって、黒いフードで顔を隠していたし、笑い方変だったし気持ち悪かった。怪しいこと、この上なかったよ」
「だよね」
「ヒヒヒヒヒヒッ」とか笑ってたな。
んー、怪しい人からは何も買いたくないし、なんなら近づきたくなかったんだけど、これは買わないといけないと思ったんだよ。
何でかはわからんけど。なんか、感じたんだよなぁ。
「…………」
魔導書を見てみる。
黒い、五芒星が描かれている表紙。その左右には、精霊のような人物が中央を向いていた。
古本なのか擦り切れているけど、まぁ、気にならない。
気にならないけど、俺の魔力に耐えてくれるのかは正直不安。
「ちょっと、魔法を試してきてもいいか?」
「もう、夜近いよ。また明日にしよう」
そう言えば、もう夕方か。
辺りがオレンジ色に染まっている。
「ねぇ、ビジョン。君はどこかに泊まっているの? それとも、家がここから近いとか?」
エトワールが一番後ろを歩いているビジョンに問いかけた。
「え、えっと……。宿を、取っています……。ただ、ツムリア帝国では、あり、ません…………」
「ここから近い町に宿を取っているのですか? なぜ、わざわざ」
「魔法学校には、寮があるはずなんです。もし受かることが出来ればそこに入ろうと考えていたので、わざわざ高いツムリア帝国の宿に泊まらなくてもいいかなって…………」
え、たしかにツムリア帝国の宿は高い気はしたけど、そんな手があったのか。
なら、合格発表の結果次第で、宿を取り直すか。リヒトとエトワールは、僚に入るだろうしな。
「ツムリア帝国の隣の町って、そこまで大きくないよね? 宿なんてあるの?」
今度は、アマリアが問いかけた。
一瞬ビビっていたな、俺が見た時より肩が上がってたぞ。
「え、ええと。逆に、宿しか、無いです……」
「安いの?」
「素泊まりだと、安い方かと。一泊、千ヘイトなので」
やっす!!
「アマリア、俺達もそこに行くぞ。明日にでも!」
「せめて、合格発表が終わってからにしようよ。というか、そんなに安いという事は、他にも色々弊害があるんじゃない?」
あぁ、それもそうか。
さっきまでは、合格発表が終わってからとか考えていたのに、金に釣られた。
「合格発表っていつ?」
「そう言えば、何も言われませんでしたねぇ」
エトワールがリヒトとビジョンを見て確認し合うけど、二人も首を横に振るから本当に何も告知はなかったとわかる。
「明日も試験があるとかは、ないよな?」
「それはさすがにないと思いますよ。それだと、今日の最後に時間と集合場所などを伝えてくれるはずなので」
「そうだよなぁ」
それなら、これから知らせが来るって事か。
合格していますよーに。
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