タイミング
エトワール達のさっきまでの戦闘は、試験とは関係ない。
そのため、他の人達と同じように教師陣と戦闘を行う事となるのだが、三人の実力があまりに高すぎるため、同じチームになることは禁止された。
そうだとしても、エトワールとビジョンチームは、簡単に教師陣を倒し、終わり。
残りは、リヒトがいるチーム。
「chain!」
だが、リヒトの鎖魔法で教師は簡単に拘束され、試験は幕を閉じた。
※
試験を行った夜に、魔法学校の理事長であるクインが戻ってきた。
その日の夜、上官達を集めて、緊急会議が行われた。
薄暗い会議室。魔法学校らしく普通ではない。
一定の教師しか持つことが許されないライセンスを通し扉を開くと、中に広がるのは宇宙を思わせる空間。
中に入ると、自分専用の椅子と机が準備されており、座ると魔力を原動力にし自由に動かせる乗り物となる。
ここには、強力な防壁魔法が張られており、外には絶対に情報を漏らさない。
どんな魔法でも防ぐため、なにか漏洩しては危険な情報や話し合いをする時はこの空間を使う。
今回も、クインの一声により、五人の上官が集まった。
一人は、もちろん理事長と居る時間が一番多い老人、アラリック。
もう一人は、意外にも今日エトワール達に戦闘を吹っ掛けたキロンニス。
他の三人は、今回の試験に参加はしつつも、戦闘はしなかった教師。
そんな五人を集め、クインが話し出した。
「今回の編入試験、いかがでしたか?」
貫禄のあるクインの問いかけに、最初手を上げたのはキロンニスだった。
「今回の受講生、面白い奴らが三人いましたよ」
「面白いとは?」
「得たいのしれない、年齢不詳の女。髪を結ぶと一気に豹変し、巧みに魔法を操る男。そんで、感情のままに魔法を放つ女。この三人が今回、この学校に荒潮を引き起こすかもしれませんよ」
今の説明では詳しくわからないクインは、共にいたであろうアラリックに詳細を求めた。
「魔法の知識が豊富で、いつでも冷静な女性、エトワール。普段は怯え、到底魔法使いとして活躍できそうないですが、髪を結ぶことにより様々な属性魔法を扱う男性、ビジョン。そして、そこまで目立ちはしませんでしたが、不思議な魔力を持っている女性、リヒト。この三人が、今回の受講者で期待できる方達でしょう」
名前を聞き、クインは手元にある資料に目を通す。
「ふむ。アラリックは、どう見る?」
「この三人でしたら、合格させていいかと。ただ、エトワールだけは要注意。何をしでかすかわかりません」
アラリックの言葉に、キロンニスは「ケッ」と、不機嫌そうに顔を背けた。
「わかりました。編入試験は今日で終わり。合格発表は、来週。それまでに他の合格者たちもまとめましょう」
クインの言葉で他の人達も頷き、会議室には静寂が広がった
※
リヒトとエトワールは、試験が終わり、ツムリア帝国をプラプラ歩いていた。
「本当に勘弁してくださいよ、エトワールさん」
「今回の試験は、ちょっとヒヤヒヤしたけれど、後は発表を待つだけですね」
ため息を吐くリヒトとは対照的に、エトワールはどこかウキウキとした表情を浮かべていた。
そんな二人の後ろを、何故かビジョンが静かに歩く。気配を消してはいるが、隠れながらという訳ではなく、堂々としていた。
「…………あの、ビジョンさん。私達に何か用ですか?」
気配を消していたとはいえ、エトワールには丸わかり、振り返り問いかけた。
リヒトは気づいておらず「あれ?」と、エトワールと共に振り向いた。
「ビジョンさん、こんにちは。何か私達にご用事ですか?」
「え、い、いや、あ、あの……」
リヒトに問いかけられ、ビジョンは頬を染め、目を至る所に向ける。
なにかをごにょごにょと言っているが、何を言っているのかわからない。
リヒトとエトワールはビジョンに近付き、顔を覗き込んだ。
「何かありましたか?」
リヒトが再度、問いかける。
顔の近さも相まって、ビジョンの顔が林檎のように真っ赤に染まった。
「え、えっと、あ、あの!!!」
やっと勇気が出たビジョンは、ひときわ大きな声でリヒトを見た。
そんな時――……
「おっ、リヒト、エトワール。編入試験は終わったのか?」
タイミングよく、片手に魔導書を持っている知里が二人を呼んだ。
ここまで読んで下さりありがとうございます!
出来れば次回も読んでいただけると嬉しいです!
出来れば☆やブクマなどを頂けるとモチベにつながります。もし、少しでも面白いと思ってくださったらぜひ、御気軽にポチッとして頂けると嬉しいです!
よろしくお願いします(*・ω・)*_ _)ペコリ




