感情的な魔法
二人に夢魔法をかけたエトワールは、涼しい笑みを浮かべていた。
キロンニスとビジョンは、一瞬動きを止めた。
だが、すぐに動き出す。
「な、何が起きた?」
「わからん……」
二人は、何が起きたのか分からず困惑している。
そんな二人の前に立つのは、笑みを浮かべているエトワール。
先程までの交戦の中に入っていたにもかかわらず、傷一つない。
掠り傷すらないエトワールは、二人を見比べた。
「少し、戦闘が加速してきましたので、少々一息ついていただこうかと思いまして。あと、私達の事も混ぜていただきたいというのもあります。せっかくのチーム戦ですので、もっと、仲間意識を持って戦いませんか?」
まさか、戦闘中にそんなことを言ってくるなんて思っていなかった二人は、顔を見合せた。
リヒトは、後ろで立ち尽くす。
「本当に、エトワールさんは何を考えているの?」
もう、エトワールが得体のしれない人のように思い、リヒトは何も言えない。
それはリヒトだけでなく、キロンニスとビジョンも同じだった。
「…………やっぱり、年齢偽ってるだろ、お前」
「女性に年齢聞くのはタブーです。酷いですよぉ~!」
わざとらしく泣くふりをするエトワールに、キロンニスは頭を抱えた。
その時、ふいに後ろで待機していたアラリックを見た。
なにかを訴えているような目、アラリックは何も反応しない。
一度目を閉じたかと思うと目を逸らし、エトワールを見た。
「すまなかった。確かに、女性に年齢を聞くのはタブーだったな」
「物分かりがいいんですね。逆に、怪しいですけど」
「一番怪しい奴に言われたかねぇよ」
頭をガシガシと掻いて、キロンニスは杖に魔力を込めた。
「今は、一旦引くだけだ。戦闘に集中しないといけないしな」
言うと、キロンニスは息を大きく吸い、吐いた。魔力が徐々に高められる。
これは、強い魔法が放たれる。
瞬時に感じ取ったエトワールは、リヒトの場所へと跳び、戻る。
ビジョンも戻り、横目で二人を見た。
「どうするつもりだ」
「私の魔法は、物理攻撃が弱点なんですよ。ビジョンさんは?」
「攻撃特化型だ。だが、流石にあそこまでの魔力を高められちまったら、攻撃魔法で相殺は不可能。使いこなしているのは幻想魔法だが、お前と同じで物理には効かん」
「ですよね」
そうなるとと、リヒトを二人が見た。
「へ? わ、私?」
「仕方がないわね。lehrdに集中して防ぎ、隙が出てきたら私達の魔法を放ちましょう」
「それが確実だな」
二人が話を進めるが、リヒトでもどれだけ強力な魔法が放たれるのかは、予想が出来る。
出来るからこそ、自分では無理だと顔を青くした。
「リヒトさん。無理ではなく、やらなければならないのです。強くなるのでしょう? 知里さんの力に、なりたいのでしょ? 今日、今回の事を話したら褒めてくださるんじゃないでしょうか」
役に立ちたい、そう思っているリヒトにしたら、今の言葉は重くのしかかる。
自信は持てない。でも、やらないといけない。グルグルと考えていると、エトワールがリヒトの耳元に口を寄せた。
「これが出来たら、褒めて、抱きしめてくれるかもしれませんよ?」
エトワールの言葉に、リヒトの脳内には、知里が抱きしめてくれているイメージが頭に浮かんだ。
瞬間、急に恥ずかしくなり魔力が杖に集まる。
「これでも食らいやがれ! birdoflame!!」
放たれた魔法は、炎の鳥。
フェニックスのような姿の大きな鳥が、三人に襲い掛かる。
ビジョンがリヒトを守るように前に立つが、それは必要なかった。
エトワールの言葉で恥ずかしくなったリヒトは、顔を真っ赤にしながら魔法を放った。
「~~~~~~~~chain!!!」
「えっ、そっち?」
エトワールは、まさかリヒトが鎖魔法を放つとは思っておらず、驚いた。
だが、リヒトの魔法は、大きな炎の鳥を絡み取った。
キュィィィイと大きな鳴き声を放ち、暴れる。
それでも、次から次へと現れる鎖により、身動きが封じられ、最後には地面に引きづり落とされた。
「なん、だと?」
ここまで圧倒的にやられるとは思っていなかったキロンニスは、唖然とする。
ビジョンも目を見開き、魔法を放ったリヒトを振り向いた。
「はぁ、はぁ……。え、エトワールさん!! 戦闘中に何を言うんですか!!」
怒り出したリヒトは、頬を膨らませエトワールをポカポカと叩いた。
「あはははははっ」と、エトワールは笑うだけ。
落された炎の鳥を消し、キロンニスはリヒト達に近付いた。
何を言われるんだろうと、リヒトとビジョンはびくびくしながら見上げる。
鋭い眼光で見下ろされ、何も言えない。
両手が伸び、叩かれる! そう思い身構えたが、頭に優しい温もりが乗り、思わずリヒトとビジョンは顔を上げた。
「お疲れさん。すげぇもん持ってんな、お前ら」
「へ?」
手を離され、キロンニスは背中を向ける。
「お前らが入学するの、待ってるぞ」
言いながら手を振り、そのまま教師陣の中に戻る。
そんなキロンニスを見て、エトワールはニヤァと笑った。
「負け犬の遠吠えー!!」
「黙れ」
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