ここで逃がすわけないだろ、自分で言ったんだから責任を取れ
知里がヒュースと話している時、リヒトとエトワールは二人で魔法学校の編入試験について説明を受けていた。
今は、魔法学校内を案内係の魔法使いと共に歩いている。
見た目は、六十過ぎの老人。だが、眼光が鋭く、纏っている魔力は普通ではない。
エトワールはそれを瞬時に感じ取り警戒を高め、リヒトも肌がビリビリするため、怖がっていた。
他の受講者は、彼の纏う魔力に気づかずに歩く。
「今回の編入試験は、一対一の戦闘形式となる。編入試験場所は、魔法学校の裏手にある闘技場。今向かっている所だ」
案内係から聞いた説明は、エトワールが聞いていた内容とまったく違う。
それに関しては、エトワール自身も驚いており、リヒトも目を見開いた。
そんな二人など気づかず、廊下を進む。
学校の廊下は豪華に飾られており、海外のお城のような装飾に絵画。思わず見惚れてしまう。
周りを歩く在校生も礼儀正しく、《《一人で歩いてる》》。
話し声は聞こえず、足音だけが響く廊下。
ピアノの音楽がスピーカーから流れ、空気は綺麗に感じる。
けれど、話し声が説明をしている案内役だけ。
それには異様なものを感じていた。
エトワールは口を開きそうになっているリヒトを見て、口に人差し指を当てた。
話しては駄目、そう仕草で伝える。
理解したリヒトは口を閉ざし、不安そうに眉を下げ前を向いた。
一言も話すことなく歩いていると、裏手から外に出た。
そこはグランドのように広い空間が広がっていた。
「ここでは、魔法使い達が授業の一環で魔法の練習するのに使っている。他にも、争いが起きた場合も、申請をすれば利用可能。ここで、編入試験を行う」
ものすごく広い闘技場に圧巻。
リヒトは唖然と口を開き、金魚のようにパクパクした。
「編入試験の際は、すべての魔道具は利用不可。杖も、一般的に何も細工がないものを支給する形となる。それ以外の魔道具、杖、その他もろもろは全て試験開始の前に回収となる」
その言葉にリヒトの視界は真っ白。
エトワールは心の中で「どうしたらいいかしら」と、苦笑いを浮かべた。
※
「もう、前から一対一の戦闘試験となっていたはずだ。だから、単純なる魔力量だけでなく、技術も必要となるぞ」
う、嘘だろ……。
今までリヒトには、援助をお願いしていた。
だからなのか、リヒトが前戦で戦う姿が想像出来ない。
「勝利条件とかはわからないか?」
「相手を行動不能にするだけだったはずだ。殺さなければ何をしてもいい。万が一殺してしまっても、まぁ、失格だけのお咎めだ」
「なるほど」
魔法学校は厳しいな。
というか、殺しても失格だけって……。
他にもお咎めがあってもいいだろ。
これは、言わない方がよさそうだな。
リヒトが怖がる。一応、エトワールだけには伝えておこう。
今回の説明会でどこまで聞いているかわからんから、念の為。
「顔が青いが、心配なのか?」
「当たり前だろ。今回の編入試験は、リヒトにとっては今までにないほどの難関。しかも、俺達は外から何も出来ないかもしれない。殺されそうになったら追い出される覚悟で外から魔法を放つしか…………」
「それも難しいぞ」
「え?」
それすら難しい?
な、なんで?
「編入試験を行うのは、魔法学校の裏手にある闘技場。そこには関係者以外立ち入り禁止、透視も使えないはず。すべて、結界に弾かれるからな」
「…………詰んだ?」
「それはわからん」
うー、どうする。
何かあれば手を貸すと言った手前、打つ手がないからお前が頑張れは、とてもじゃないが言いにくい。
それに、そんなことを言えば本人の実力を出せない可能性もある。
必ず手を貸すと言った状態の方が肩の力は抜けていたし、このままで行かせた方が得策かな。エトワールに相談しようか。
「……私も、今回の試験は気になってはいた。理事長が不在の編入試験は初めてだからな」
「お、おう」
「それに、少しはここに滞在する予定だ。付き合ってやらなくないぞ?」
腕を組み、鼻を鳴らしながらそんなことを言ってくる。
ツンデレ、か? 俺達が心配でついてきてあげると?
へぇ、なるほど。
「それなら頼むわ。俺達もここについては詳しくない。それに、少々面倒ごとに巻き込まれる可能性がある。手は多い方がいいだろう」
「やっぱり私には時間がない。今の話はなかったことにしよう」
逃がすか!!
「おいおい、皇子と言うものが、一度口にした言葉を撤回しようとしていいのかい? 良いじゃねぇか、俺達の仲だ、仲良くツムリア帝国を回ろうぜ? ヒュース皇子?」
肩に手を置き、覗き込む。
ヒュース皇子の顔が真っ青になっていたような気がするが、頷いたから良しとしようか。
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