俺のメンバーはいつでも油断ならないのを忘れていた
接続を確認するため、グレールとリヒトは魔道具を持った。
使い方はいたってシンプル。
まず、グレールは魔石を手に持つ。
リヒトは、腕に魔道具を埋め込むみたいだけど……怖いな。とか思っていたら、そんな難しくなかった。
魔力が必要だからソフィアは出来ないけど、ロゼ姫が代わりに魔道具に魔力を込め、リヒトの腕に押し込む。
すると、するりと、なぜかすんなり腕に埋め込まれた。
リヒトの表情は、一つ変わらない、痛みすらなかったらしい。
これで接続は出来たみたい。
あとは、リヒトが魔法を出すタイミングでグレールが魔力を魔道具に送り込めばいいらしい。
「微かにグレールの魔力が洩れるかもしれないけど、そこまでは気づかないでしょ、きっと」
「そうなんですか?」
「グレールくらい気配に敏感じゃないと気づかないくらい微かな魔力だと思うし、あそこは魔力の倉庫。さすがに……大丈夫だと……」
アマリアの言葉が徐々に小さくなる。
なんか、自信がなくなっていないか? 大丈夫?
「…………気づかれた時は、エトワール、任せた」
「お任せくださいアマリア様! 冷静に対処して見せますよ!!」
こっちは自信満々だなぁ。
なに、この差。
「気づかれた時って、大丈夫なんですか?」
「何とかお咎めなしまでは持って行きますよ。でも、編入試験は魔力の共有なしで行わなければならなくなるかと思うので、そこは、まぁ…………」
リヒトが頑張らないといけない訳ね。
またしてもリヒトが落ち込んでしまった。
「まぁ、どうにかなるだろ。大丈夫大丈夫」
「なんでそんなに楽観的なんですか、カガミヤさん。いつもは、へんな事ばかり考えているのに」
「そんなに俺、へんなこと考えているか?」
「はい」
はっきりと頷かれてしまった。
俺はお金の事しか考えてないんだけどな、普段。
「でも、知里の言う通りだよ。もうこちらでは何も出来ない。影ながら見守らせてもらう。あとは、エトワールの判断に身を任せて」
アマリアが話を終わらせ、今日は休むことになった。
リヒトの不安が伝わってくる。
明日、ツムリア帝国にたどり着いた時、大丈夫だろうか。
変な気は起こさないだろうけど、変に肩に力が入って魔法を思い通りに出せなかったりしたらと考えると──流石に俺も緊張するな。
でも、声をかけられない。
どうすれば、いいだろうか。
「――――カガミヤさん」
「なんだ」
「そっちの布団に行ってもいいですか?」
「……………………………………………………ドーゾ」
リヒトが、こっちに来る。
一応背中を向けているけど、これ、大丈夫? 俺、起きた時ロゼ姫に溶かされない?
怖がっていると、リヒトが俺のお腹に手を回してきた。
抱き着いて来ている。男女で、これはまずいだろう。
「…………リヒト」
「なんですか」
「俺は、お前に何も伝えられん、悪いな」
「わかっています、大丈夫ですよ」
「だが、何かあれば必ず手は伸ばすから」
「っ、?」
腹に回された手を掴み、横目で後ろを見る。
困惑しているリヒトと目が合った。
「自分の実力を信じられんのなら、他の奴の実力を信じて全力を出せ。必ず、助けるからよ」
周りを信じられるお前なら、このくらい簡単にできるだろ。
自分を信じられないのは仕方がない。口で何を言っても意味は無い。
だったら、まず周りを信じて、何があっても大丈夫だと信じ込ませた方がいい。
「今はもう寝ろ、俺も寝る」
流石に眠くなってきた。
返事はないけど、明日の反応でわかるだろ。
んじゃ、おやすみ~
※
次の日、またみんなで歩く。
この調子で何もなければ、夕方頃には付くだろうとのこと。
たしかに、町とか、人の通りとかが増えてきた。
服装的に魔法使いの人が多そう。
ちらほら、冒険者もいる。
この世界では魔法は当たり前。魔法使いを強くするためにここに訪れる人も多いんだろうな。
普通なら俺も、最初の頃に来るはずなんだろうけど、存在すら知らなかったしな。
「……」
キャッキャ笑い合っている、前を歩く女子。
リヒトも、昨日とは打って変わって元気そう。
気持ちを切り替えたみたいで良かった。
編入試験も、これで問題ないだろう。
俺達は、どうやって目立たないように生活するかを考えないとな。
宿も見つけないといけないし、最初は忙しいぞぉ〜。
「リヒト、元気になったみたいで良かったね」
「そうだな、これでひとまず問題はないだろう」
「うん。知里からの言葉が効いたみたいで何より。やっぱり、好きな人からの言葉が一番心に落ちやすいよね」
「おー…………聞いてたな?」
「あんなところで話していたら、嫌でも聞こえて来るでしょ」
くっそ、アマリアは寝なくても問題ない体だって事、常識から外れているからやっぱり頭から抜ける。
でも、アマリアにだけならいいか。
「チサト様にも、優しい所があったことに感心しました」
「グレールも眠りが浅かったな、そういや」
…………待てよ?
思わずソフィアを見る。
目が合ったと思えば――……
「…………ふん」
「どういう意味が込められた”ふん”なんだよこのやろう」
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