ずるだろうけど、目的のためには我慢してくれ
和気藹々と歩いていると、やっと二つ目の町にたどり着いた。
それまでの二日間は、野宿。体は痛いし、お風呂にも入りたい。
野宿って、こんなにも大変だったんだなぁ。
町に着いて、宿屋の温泉に入り、今は大部屋でみんな休んでいる。
「結局、馬車を使わずにツムリア帝国に着きそうだね」
「まったく、なんでだよ。馬車、使いたかった」
もう、体中が痛い。
これが、冒険者なんだな。ダンジョン攻略するよりきついかもしれない。
「明日には、辿り着きますね、おそらく」
「え、そ、うなんですね…………」
エトワールの言葉にリヒトが怯えてしまった。
まぁ、ツムリア帝国に着いたら俺達とは別行動。
リヒトには、編入試験を受けてもらわないといけないからな、怖いか。
エトワールは、余裕そう。
というか、余裕だろうな。絶対、編入試験をクリアできるよな。
一応、アクアからのアドバイスを忘れないように、一日数回はacquaを出して練習していた。
最初は時間がかかったり、また出せなくなって大変だったけど、今は安定している。
けど、エトワールとアマリアが言うには、今の魔力量だと編入試験はギリギリ。合格するか、わからないとのこと。
その事にも落ち込み、リヒトはたどり着いてほしいけど、たどり着いてほしくない気持ちの狭間にいるんだろうなぁ。
「魔力って、すぐに増やせないのか?」
「ほんの少しなら筋力や体力で増やせるよ。でも、それだけではさすがにねぇ……」
アマリアが息を吐いてリヒトを見た。
顔、青いなぁ。
「…………おい、編入試験の時は、理事長はいんのか?」
「いないはずですよ。たしか、編入試験の日、たまたま出張が入っており、席を外すはずです」
エトワールが言うと、ソフィアが一つの魔道具を懐から取りだした。
…………やっぱり、その外套は四次元外套なのか?
「これを使え」
魔道具を――――なんで俺に投げるの!?
反射でキャッチすると、それは小さな魔石のような機械だった。
イヤホンと言う訳でもないし、なんだこれ。
魔石ではないみたいだけど、デザインは石みたいだな。
「それは、魔力を共有できる魔道具だ」
「共有?」
みんながソフィアに注目する。
煩わしいと思いながらも、ソフィアは説明を続けてくれた。
「それは、二つで一つ。片方の魔力をもう片方に送り込むことができる」
「つまり、知里の魔力をリヒトに送り込むって事?」
「魔道具がこいつの魔力に耐えられればな」
へぇ、色んな魔道具があるな。
武器とかの知識しかないから、びっくり。
こういうのも、ツムリア帝国には沢山あるのだろうか。それなら、ちょっと見てみたい。
「多分、知里の魔力は耐えられないだろうね。グレール辺りはどうかな。リヒトよりは魔力多いし、編入試験くらいならどうにかなるんじゃない?」
グレールを見ると、「指示ならば」と、頷く。これで、問題はリヒトだけだな。
一応、編入試験をこれでクリアできたとしても、学校生活についていけない可能性がある。
裏口入学みたいなもんだからな。正式な実力でクリアしないと、編入したあとが大変だろう。
リヒトを見ると、考え込んでいる。
「あの、それは、ずるではないのでしょうか」
「ずるだ」
ソフィアの奴……。ま
ぁ、事実、卑怯な手ではあるな。
「もし、それで編入しても、なんとなく罪悪感が残るのですが…………」
「なら、実力で勝負してみろ。それで結果がどうなろうと、俺は知らん」
突き放したなぁ。
リヒトも言葉を詰めてしまった。
「――――編入試験は、ひとまず安全策で行い、そのあとにリヒトさんに頑張っていただいた方が良くないでしょうか」
「俺も、ロゼ姫に同意だ。編入試験は絶対にクリアして貰わんと次に進めん。ずるでもなんでも、学校に潜入してもらわんと困る」
試験に失敗しちまったら、エトワールがいるが、ダンジョンに関して言うのなら意味ないし。リヒトが強くならんと、ここまで来た意味が無い。
リヒトは考え抜いた後、コクンと、小さく頷いた。
「わかりました」
「心苦しいだろうけど、耐えてくれ」
「…………私のせいで、落ちる人もいるんですよね。そう思うと、ちょっと悲しいですが…………」
まぁ、そうだよな。
ずるがばれるとまずいし、リスクはある。
でも、やっぱりリヒトが試験にクリアしない事には話にならん。
悪いが、頑張ってくれ。
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