恋心って本当によくわからん
「いってぇ…………」
「あれは……五分五分かな」
「なにが…………」
「リヒトと知里の今回の分配」
「俺が確実に被害者だろうが…………」
「どうだろうね」
両手足首に鎖の跡がくっきりと残ってしまった。
さっき、何故か怒り狂ったリヒトの鎖魔法に絡まれ、拘束された。
アマリアとグレールが説得してくれたおかげで、何とか解かれ助かったところ。
なんか、説得する時、チサト様だから仕方がない、とか。
知里なんだから気づくわけないよ、今までもそうだったでしょ? とか。
なんか、なんか……。
俺、ディスられてないか?
解せない気持ちで両腕を摩っていると、ソフィアが近寄ってきた。
「さっきの鎖魔法はなんだ」
「リヒトの魔法」
「あれは、常時出せないのか?」
あぁ、怒った時に放たれるリヒトの鎖魔法ってすさまじいもんな。
たしかに、あれが常時で出せたらすごいだろう。
一瞬にして俺、囲まれたんだもん。
魔法を放つ隙も、逃げる隙もない。
本当に、瞬きをした一瞬で、怖い怖い。
「おい」
「なんだ?」
「もう一回、ピンク髪を怒らせろ」
「嫌だけど?」
なんで俺が怒らせないといけないんだよ、ふざけるな。
「殺されないだろ」
「痛いからヤダ」
「我慢しろ、もう一回見たいんだ」
「お前が怒らせろよ」
「どうやってだ?」
「知らん」
俺だって、今回なんでリヒトが怒ったのかわからねぇんだよ。
つーか、今までもそうだけど、リヒトの沸点がわからない。
俺しか被害にあっていないけど、張本人である俺がわからない。
他の奴らはわかっているみたいだけど…………。
「…………はぁ、わかった」
ん? ソフィアがリヒトに近付いて行く。
リヒト、ビビッて後ずさっているけど、大丈夫か?
「おい」
「は、はい」
「怖がるなよ?」
「え?」
リヒトがわかっていないけれど、ソフィアは目の前で止まった。
右手を上げ、銀の前髪を上げ――――っ!
「っ! そ、その顔……」
「黙れ、人から言われるのは嫌いだ」
「す、すいません」
いやいや、これは口に出しちまうだろう。
だって、銀髪で隠れていた左半分の肌が、黒くなっている。
あれは、普通の黒い痣じゃない。
なんか、禍々しいし、肌だけじゃなくて、目までハイライトのない闇に包まれている。
もしかして、あれが、呪い?
「――――お前、負の感情がないのか?」
「え? 負の、感情?」
あ、前髪を下ろした、
「いや、微かに負の感情はあった。自分は弱いとか、出来ないとか。だが、人を馬鹿にする感情はなかった」
「それがどうしたの」
アマリアが興味深く聞いている。
俺も気になる。どういう意味だ?
「こいつが黒髪を恨んでいたり、怒っているのなら、負の感情が見えると思ったんだ。だから、読み取って同じことをすればまた鎖魔法を見れると思ったが、何も思ってねぇじゃねぇかよ」
「つまらん」と、言い捨ててリヒトから離れる。
もう、何を言われているのかわからないリヒトは真っ白。
「…………あぁ、なんとなく理解した。でも、ソフィア、今回リヒトが怒ったのは負の感情じゃないよ」
「怒っているのにか?」
「リヒトの恋心が暴走した結果の怒りだから、負の感情として加算されなかったんじゃないかな」
え、恋心の暴走?
さっきので? どこが恋心に関係あったんだ?
「なっ! アマリア様!!」
「ソフィアに謎を埋めておくのは色々危険かなと思って」
リヒトがアマリアの両肩を掴んで、ガクガクと揺らしている。
もう、元管理者とか頭にないな。今は恥ずかしくてたまらないらしい。
「恋心? 関係あんのか?」
「ごほっ。えっと、リヒトは知里が自分の隠していた気持ちに気づいてくれたと思ったんだよ」
「透視でわかっただろう」
「スキルを使わないで気づいてほしかったんだよ。これは、女心ってやつだね」
……………………女って、めんどくさいな。
「女ってめんどくさいな」
「男からしたらそうかもね。でも、そのめんどくさい所も可愛いと思う相手が見つかったら、別だと思うよ」
アマリアがなんか、過去を思い出しているような表情を浮かべている。
…………そうか、まだ、アマリアの中でフェアズが生きているんだろうな。アマリアの恋人が。
「よくわからんな」
「恋は人を変えるって事だよ。これは、恋しないとわからないから、今の知里やソフィアでは絶対にわからない感情だよ」
思わずソフィアと目を合わせてしまった。
………………………………よくわからんなぁ~。
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