なんでこんなにも複雑な気持ちにならないといけないんだよ
気配を感じ、アマリアからの指示を受ける。
『蔓が動き出した。狙いは僕。知里は上、アルカは下に』
アマリアからの指示。
言われたと通り、上に行く。
――――ビタン! ビタン!
うわっ、アマリアの視界が見えるから、変な感じ。
蔓をギリギリで回避しつつ、気を引こうと近づこうとしているな。
近づいて何かをするって意思はないだろうけど。
『知里、右』
? 冷静に言われ、右に移動――
――――ビタン!!
すぐ左からめちゃくそでかい音!?
俺も狙われたってこと!?
それならもっと焦ったように言ってくれよ! 冷静過ぎるわ!
『蔓が暴れ出した、まずいかも。指示が追い付かない』
アマリアが焦ってる。
たしかに、蔓が広がり始めたな。
アマリアの視界から外れているところがわからない。
『っ、知里! 全体魔法!』
いきなりかい!
「wavewater!」
どこに誰がいるかわからないから、もう言われた通り全体に放った。
多分、アルカとアマリアも巻き込まれているだろうが、仕方がない。
『アルカ、僕が道を作るから幽霊を切って! ――――viasunet』
あ、あれ、その魔法って、たしか大人の姿じゃないと反動が酷いんじゃないかったか?
っ、アルカが水の玉から出ちまった。
アマリアが作り出した道を通り、剣を振り上げる。
「|ground spada!」
よしっ! 井戸ごと幽霊をきっ――――どわっ!
弾けるように空間が爆発した。
吹っ飛ばされる!!
「ガハッ!!」
────くっ、背中をどこかにぶつけた……。いたた……。
「大丈夫ですか、カガミヤさん!」
「あ、あぁ…………」
リヒトが向かってくる。
ということは、あの貞子(仮)が作り出した空間から弾き出されたのか。
アルカとアマリアはどこにいる? 俺と一緒にはじき出されたか?
周りを見るとアマリアをグレールが、アルカをロゼ姫が診てあげていた。
アマリアは、いつの間にか大人の姿になっていたみたい。
やっぱり、さっき俺の水魔法を切り裂いた時に放った音魔法は、大人の姿でないと出せないらしい。
アルカは……びしょ濡れだけど、起き上がっているな。
問題はアマリアか……。起きないな、魔力が足りないとかはないと思うんだが……。
ほんの少し眠たいけど、強制睡眠にはならないし、魔力の枯渇ではないと思う。
アマリアに近付いてみるけど、怪我もない。でも、起き上がらない。
「グレール、脈――って、こいつにはないのか。なら、息はあるか?」
口元に手をかざして確認してみると、頷く。
息はあるみたいだな、それならよかった。
「疲れて寝たか? 最後に放った魔法は反動が素晴らしいみたいだからな、少し待つか」
その間に、アルカの確認。
近付くけど、ロゼ姫と普通に話しているから問題なさそうだ。
「あっ、カガミヤ、大丈夫か!?」
「俺は問題ない。所々の怪我は痛むがな」
落ち武者と戦った時の傷が痛むけど、もう戦闘はないだろうし、早くダンジョンを出て報酬を貰おう。
戻ったらリヒトに怪我を治してもらおっと。
「んっ………」
「あっ。チサト様、アマリア様が目を覚ましました」
おっ、それから良かった。
近付くと、アマリアが大人の姿で俺を見上げてきた。
「無事だったんだね、良かった」
「それはお互い様。アマリアも無事でよかったぞ」
手を伸ばし立たせると、なぜかアマリアの視線が高い。
少し顔を上げないと視線を合わせられない。
一応下を見るけど、地面に足はついている。
…………負けた気分。
「いて! なんで僕、脛を蹴られたの? 地味に痛いんだけど。疲れた体には大ダメージ」
「うるさい」
まぁ、いいや。
これで、ダンジョンクリアだろ?
早く行こう。報酬報酬、お金、お金。
――――あっ、違った。
今回は精霊が狙いだった。…………ちっ。
めんどくさい精霊ではありませんように……。
子供姿に戻ったアマリアが、俺の隣まで来た。
後ろを見ると、ボロボロではあるけど、みんなしっかりとした足取りで付いて来る。
廊下を進むと、一番奥に辿り着いたらしく大きな襖が見えた。
「これが、ダンジョンの最奥か」
「みたいだね。開けて」
「…………はい」
もう、俺が開けるのね。
怪我をしているからまた違う人ではないんだ。悲しい。
この奥からモンスターの気配を感じないからの判断だろうけど。
「よしっ、開けるぞ」
ガラッと、襖を開けてみる。
そこにあるのは――――複雑な気持ちになる物だった。
「今回は外れだね。まぁ、そう簡単に出てこないのは仕方がないし、辛抱しようか」
「喜びたいのに、なんで喜んだら駄目な雰囲気なんだよ、此畜生…………」
目の前に広がるのは、山になっている財宝。
今にも飛びつきたい、埋まりたい。
財宝に生き埋めになってそのまま命を落としたい。
…………ヤンデレ化してしまった。
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