信じなくてもやらんといけない事実は変わらない
「それじゃ、入るぞ」
アルカと目を合わせると「おう!」と、元気な返事。
そんな時、後ろからはめっちゃ重い空気が流れ込んでくる。
「私には無理ですよ、二人の命を背負うなんて……。大体、今突発的に出した魔法ですよ、どうすればいいんですか。無理です、怖いです。命なんて背負いたくないです」
もう願望出てんな。
俺だって命を背負いたくないから何も言えないけど。
「ここまで来たらやるしかないぞ、リヒト。腹をくくれ」
「そんなこと言わないでください。それに、カガミヤさんですよ? 危険なの。アルカもだけど」
「なんで俺はついでみたいな扱いなんだよ」
怖がってはいるけど、まだ周りの声は聞こえているらしい。
声まで聞こえなくなっていなくて良かったよ。
「それに、カガミヤさんは平気なんですか? 私、今出したばかりだし、正直、長く続けられる自信ないです。お二人をもし、殺してしまったら……」
「俺は、リヒトなら大丈夫だと思っている」
言うと、リヒトは目を大きく開き、固まった。面白れぇ顔。
「確かに、中に入っている時にリヒトの魔法が解けたら十秒も持たずに死ぬみたいだが、逆に言えば、十秒の猶予がある。お前は、十秒もあるのに俺がタダで死ぬと思ってんのか?」
聞くけど、リヒトは何も言わない。
アルカは、俺達の会話が聞こえていないのか、当たり前のように中へとすっぽり入ってしまった。
「おーい、カガミヤ。早く行こ―ぜ」
「お前は呑気か」
まぁ、リヒトの事を心から信じているからの行動だろうな。
信じているから、何も疑うことなく中に入れた。
今も、呑気に俺を呼んでいるし……。
「リヒト、信じてる。だから、お前も俺達を信じろ。お前に、俺達を殺させない」
まぁ、俺達がもし死んでも、リヒトではなくモンスターのせいなんだけどな。
それを言ったところで、絶対に自分を責めるから言わないけど。
俺も、目の間にある、成人男性が入れそうな水の玉に触れる。
意識すれば、中に入れそうだ。
目を閉じ、ぐっと押してみた。
するとボヨンと、中に入れた。
「息も、出来るな。声は聞こえているか、アルカ、アマリア」
「聞こえているよ」
「俺も問題なしだ!」
連携は問題ないな。
それなら、次はこれをどれだけうまく操縦できるか、だな。
上に行くように意識――――動かない。
「これ、どうやって操縦できるんだ?」
「魔力を水に少しだけ送り込むと、連動出来ないかな」
アマリアの言う通り、水の玉に魔力を少しだけ送ってみる。
そんで、もう一度イメージ。
「────ゆっくりだけど、動いたな」
「これは、あまり素早い動きは期待できないね」
アマリアの言う通り、早く移動できないから狙われたら危険だな。
アルカも同じく魔力を注ぎ動かしてみたら、俺と同じで動かせた。
「これ、俺達邪魔にならないか?」
「僕だけだともう一歩が足りなかったんだよ。気を引くことはできるけど、始末できない」
「なるほど」
だが。ここで注意しないといけないのは、貞子(仮)と目を合わせてはいけない事。さっきそこだけは説明を受けた。
俺が安易に貞子(仮)と目を合わせてしまったから、操られグレールと一戦していたと。
グレールは楽しそうにしていたみたいだし、結果オーライと言う事になっていたと聞いた時は、もう苦笑いしか浮かべられなかった。
「目を閉じて中に入るしかないか」
「誤って目を合わせないようにだな!」
「そうそう。さすがアルカ、出来るか?」
「大丈夫だ! モンスターの気配を強く感じればいいんだろう? ただ、アマリア様とカガミヤの位置を把握できないんだが、そこはどうするんだ?」
たしかに、そこは困りもんだな。
「僕が中に入って、モンスターの気を引く。同時に、|imaginationで指示を出すから従って」
ほう、それは確かに合理的だ。
「ただ、完全に気を引くのは難しいし、うまく出来るかわからないから、そこは許して」
「そん時はそん時だ、行くぞ」
俺が言うと、アマリアは数回瞬きを繰り返す。
なんか、怪しんでない? なんで、俺、怪しまれているの?
「マジで、人を疑わないよね。今、二人は他人に命を預けている状態なのに」
「別に。何かあっても、対処する時間はあるし、何とかなるだろう」
「十秒も満たないよ?」
「充分」
それに、信じるも信じないも。今はそれ以外の作戦を考えろと言われても困るし、従うしかないだろ。
「なら、入るよ」
アマリアが入ろうとすると、すんなり入れた。
膜が張っていたと言っていたけど、やっぱり招き入れるために今は解除しているんだ。
俺も中に入る。
――――なるほど。リヒトも、俺が中に入った瞬間、苦い顔を浮かべた。
「空気が震えてる。魔力が張り巡らされているのか」
「そういうこと。目は閉じてる?」
「今閉じた」
「わかった。アルカも準備は出来たね、行くよ。――――|imagination 」
アマリアのイメージが頭に届く――――これは、アマリアの視界?
あぁ、そうか。今見ている視界をイメージして俺達に送っているのか。
便利だな。
んじゃ、攻める準備は出来た。
絶対に目を開けてはいけない。
そんで、気配も感じて一撃を食らわせる。
最後に見たリヒトの表情が苦しそうだから、時間もないのだろう。早く、終わらせるぞ。
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