時間
振り下げた剣は、簡単に透明の膜を切り裂いた。
同時に突風が吹き荒れ、アルカとロゼ姫は後ろに飛ばされる。
「えっ、アルカ! ロゼ姫様!!」
反対側の壁に背中をぶつけ、咳き込んでしまった。
リヒトが駆け寄り、二人を起こす。
「ゴホッ、ゲホッ。だ、大丈夫か!?」
「すいません、ケホッ。だ、大丈夫です……」
咳き込みながらアルカがリヒトの手を借り立ち上がり、襖の方を見た。
そこには、アマリアが床に倒れ込んでいた。
「アマリア様!?」
アルカとリヒトが駆け出し声をかけると、頭を支えながらも立ち上がる。
その間にロゼ姫も立ち上がり、アルカ達の隣に移動した。
「いてて……。あぁ、アルカ。助かったよ」
「よ、良かった……。何があったんだ?」
アマリアは、三人に中で起きていたことを簡単に伝えた。
話を聞き終えた後、三人は難しい顔を浮かべた。
「やはり、リヒトさんの水魔法に頼るしかないかもですね」
「え? リヒトの水魔法?」
acquaと似たような水の玉を作り出し、その中に入り部屋の中に突入という作戦を伝えると、アマリアは「へぇ」と、面白そうに頷いた。
「内容はわかった。でも、今のリヒトだと、一人でそこまでするのは不可能だと思うよ。絶対に他の人の手が必要だ」
「なら、どうすれば」
ロゼ姫の質問に口角を上げ、アマリアは知里とグレールを見た。
「もうそろそろ、知里もダメージ食らっているし、出来るかな」
何かを企むアマリアの表情に、三人は首を傾げる。
不思議そうにしている三人を無視し、アマリアはグレールに視線を向けた。
「|imagination」
呟くと、グレールはピクッと肩を上げる。
知里と距離を取り、グレールはアマリアに振り向き頷いた。
「一瞬だけですからね」
「充分」
言うと、グレールは向かってくる知里に向けて、氷の剣の剣先を突きつけた。
「frost」
剣先から勢いよく冷気が噴射される。
知里が手に作っていた炎が凍り、視線が一瞬、グレールから離れた。
瞬間、気配を消していたアマリアが知里の後ろに現れた。
気付いた時には遅く、右手を知里の頭にかざす。
「sunet」
右手からモスキート音が出て、知里の脳を沸騰させる。
動きを止めた知里は、耳を抑え叫び出した。
流石に本気でsunetを放ってしまうと、知里の頭を吹き飛ばしてしまう為、魔力はコントロールしている。
そのため時間がかかり、アマリアは苦い顔を浮かべた。
「もう少し、グレールに頑張ってもらえばよかったかなぁ~」
後悔しつつも、アマリアは手を緩めない。
叫び続ける知里にsunetを送り続けた。
耳を塞ぎたくなるような絶叫。
アルカ達は顔を歪め、耳を押え必死に耐えた。
数秒、アマリアがsunetを送り続けると、知里は急にプツンと、糸が切れたかのように倒れ込んでしまった。
「はぁ……。こんなもんかな。それじゃ、リヒト。魔力の集中とか、出し方とかは覚えてる?」
いきなり聞かれてしまいすぐに答えられなかったが、気を取り直しリヒトは頷いた。
「それなら、今から集中して。知里は大丈夫だから」
床に倒れ込んでしまった知里は動かない。
不安に思いつつも、アマリアに焦りはない。
リヒトは、アマリアのことばを信じることにして、杖に魔力を込め、イメージを固めた。
アマリアはリヒトが集中したことを確認すると、床に倒れ込んでいる知里に声をかけた。
「知里、起きて」
体を揺さぶると、知里は唸り声を上げながら体を起こした。
頭を支え、「あ?」と、抜けた声を出し、アマリアを見る。
「……………………何があった?」
「説明する時間がないから、ひとまず僕が今からやってほしい事を伝える。何も考えずにやって、文句も受け付けない」
何も反応できない知里の耳に口を寄せ、呟いた。
瞬間、知里は今まで見た事がないほど顔を赤くし、頭を抱えてしまった。
ここまで読んで下さりありがとうございます!
出来れば次回も読んでいただけると嬉しいです!
出来れば☆やブクマなどを頂けるとモチベにつながります。もし、少しでも面白いと思ってくださったらぜひ、御気軽にポチッとして頂けると嬉しいです!
よろしくお願いします(*・ω・)*_ _)ペコリ




