油断したわけじゃないんだけどなぁ~
アマリアが一人で井戸に近付いて行く。
何もないはないだろうし、俺達も動けるようにしておくか。
おっ、井戸に到着。中を覗き込んでいる。
――――が、何も反応がない。
「おーい、何かあったか?」
聞いてみるが、反応がない。
…………反応がない、か。
「何もなかったのでしょうか」
「そうかもしれないな。近づいてみよう」
リヒトとアルカが近づこうとしたが、二人の肩を掴み止める。
「カガミヤ?」
「カガミヤさん?」
「まぁ、待て。うん、アマリアは捨てよう」
「「え?」」
ここで惜しい人を失ってしまった。
だが、第二次被害が起きるよりはマシだろう。
アマリアには悪いが、俺達は先に行く。
「ちょっと、勝手に殺さないでよ」
「――――ちっ。何があった?」
「来たらわかるよ」
「行くか」
「ちっ」
今度はお前が舌打ちするな。
お前が直ぐに何も教えないということは、絶対に何かあるだろう。行きたくないって。
けど、焦っているようには見えないな。
まだ余裕があるんだろう。それなら、無視でも大丈夫大丈夫。
がんばれー。
「はぁ、助けてくれないならいいや。自分で何とかする。――――vibration」
え、ぶぃぶ――――え?
それって、たしか周りの人も巻き込む広範囲攻撃じゃなかったか?
「っ?!?! だぁぁああああ!」
「カガミヤさんが意地悪をするからですよぉぉお!!」
「俺のせいにするなぁぁぁああああ!!」
アマリアの音魔法は、敵味方関係なく巻き込むものが多い。
俺への怒りをみんなにぶつけやがった。
まぁ、俺だけへぶつけるんじゃなくてよかったよ。
連帯責任ということで大目に見てくれ、俺の仲間達。
※
「ふぅ、びっくりした」
「結局、何があったんだ?」
「その前に、なんで知里の頭に三段のたんこぶが作られているの?」
そう、何故か俺はグレールに三回、げんこつされた。
「わからない、グレールにやられた。怪我人なのに」
「そう言えば知里、怪我していたね。普段通り過ぎて忘れていたよ。まぁ、それだけ元気なら気にしなくてよさそうだね」
「気にしてくれ」
「それより、あれは僕でよかったかもしれないよ。中からすごいのでてきっ――」
井戸を見て、アマリアは固まった。
俺もつられて見る。
瞬間、黒い瞳と目が合い、そこから意識がなくなった。
※
「知里?」
「チサト様?」
あっ……しまった。
説明する前に、知里がやられた。
いつも警戒するのに、何でこう、やばい時だけ警戒を解くのさ!!
「絶対にみんなは井戸を見ないで!」
井戸を見ると、白い着物を着た一人の女性が手招きをしている。
黒い目は、真っすぐ知里を見ていた。
さっき、僕の事を井戸から掴んできた女性だ。
あれって、異国の本で読んだことがある。
たしか、死んだ人の魂が目に見えている、幽霊と呼ばれる存在だ。
絶対に物理攻撃は効かないし、どうすればいいんだろう。
「アマリア様!!」
「――――え?」
グレールの言葉に顔を上げると、知里が水の剣を振り上げていた。
「うわっ、一番嫌な展開……」
振り下ろしてきた剣を体を横にそらして避ける。
距離を取り、グレールの横に避難。
「どういうことですか? なぜ、チサト様はアマリア様に攻撃を?」
「このダンジョンのラスボスが、あの井戸にいる女性。んで、人を操るモンスターなんだと思うよ」
「なるほど、厄介、ですね。────ふふっ」
「………………普通だったらね」
グレールの横顔を見なければ良かったと心から思うよ。
最悪だと思っていたけど、意外と一番いい人を操ってくれたのかもしれない。
だって、グレール、ものすごく楽しそうなんだもん。
笑っているし、剣を握る手に力が込められている。
アルカとリヒト、ロゼですら引いてるよ。
「知里様は、私に任せていただけませんか? 少々、楽しめそうと思いまして」
暗黒の、笑み。
今までの知里に仕返しする気満々じゃん。
「大丈夫なのか、グレール。操られているとはいえ、カガミヤだぞ?」
「そうですね。今回の相手はチサト様。厄介ですよね、なぜこう巻き込まれるのでしょうか。本当に――――厄介な方ですよねぇ~。ふふっ」
「後はよろしくお願いします」
あ、アルカが負けた。
というか、すべてを悟ったような顔を浮かべている。
リヒトも、心配そうにはしているけど、もう何も言わない。
うん、巻き込まれたくないよね、わかる。
「…………任せたよ、グレール。でも、無理はしないで、怪我人同士の戦いなんだから」
「わかりました。皆さまは、いつでも動ける準備と――――」
わかっているよ、グレール。
僕は、あの幽霊をどのように倒せるかを考えてみる。
あいつは、僕以外の人と目を合わせるとどんどん操る。
僕、生きていないから、ある意味助かったかな。
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