なんで俺の責任になりそうなタイミングでフラグが出てくるんだよ
力を温存し始めた。
それはそれで俺達からしたら好都合。魔法を消されずに済む。
これなら、タイミングを見てグレールの氷で拘束するのが手っ取り速い。
その前に靄を出させないと消されちまうけど。そこは、アマリアとのタイミングもある。冷静に、判断していいかないとな。
水の鞭を握り直し、足払い。上に飛び回避されたが、グレールとアルカが左右から攻める。
――――ガキン
「ちっ」
「かってぇぇえ!!!」
そんなに固いのか。
二人が悶絶している間に、水の鞭をもう一度放つ。
「えぇ、そういう回避方法??」
俺の鞭を刀で巻きとりやがった??
って、うわっ!!
やばい!! 巻き付けた鞭を使って俺を引き寄せやがった!
タイミングよく鞭を解き、刀を振り上げる。
「acqua!」
振り下ろされた刀に新acquaを発動。
ボヨンと、刀にくっつく。その隙にグレールが俺を抱え離れてくれた。
「助かった」
「無理はなさらぬようお願いします」
スイマセン、無理をした覚えはありませんが。
――――っ、魔力がさっきより吸われ始めた。
アマリアの方を見ると、顔を上げ俺を見ている。
目が、ギラギラと鋭く光る。
準備が、出来たんだな。
グレールと目を合わせ、頷く。
アルカも俺達の方に来たため、アマリアの準備が出来た事を伝えた。
「俺の水魔法で包み込む。今は偶然出したacquaにてこずっているし、一瞬で切り替えるわ」
「では、私は水魔法を繰り出したタイミングで凍らせますね。アルカさんは、気を逸らしてください。ほんの少しでもチサト様の魔法切り替え準備の時間を」
アルカは頷き、魔法を繰り出した。
「ground・blade!」
中距離土魔法か。
土でできた刃を四方から落ち武者に向けて放つ。
視線が、俺達から逸れた。
「wave water」
「frost」
俺が魔法を放つのと同時に、グレールも放つ。
凍り付く水。気が逸れてしまい反応に送れた落ち武者は、逃げる事も靄を出す事も出来ず、固まった。
「今だ、アマリア!」
言うと、勢いよく魔力を吸われた。
「――――tremble」
アマリアが唱えた魔法は、聞き覚えがないな、俺。
魔法が放たれると、いきなり落ち武者の地面が抉れ始めた。
沈み、氷が弾けるように破壊される。
身動きが取れるようになった落ち武者だが、もがき始めた。
あれって、なんか、蟻地獄みたいな感じだな。
どんな魔法なんだ?
「tremble。ゆっくりと魔力を地面に張り巡らせ、相手の足元を震わせるの。一度捕まってしまえば、もう抜けられない。…………普通なら」
「なんで最後、自信ないの」
聞くと、汗を拭きながらアマリアが顔を逸らした。
……へぇ、そういうことねぇ~。
誰かに破られたから自信を無くしているのか。ウズルイフあたりかな。
見ていると、動けば動く程地面に沈んでいる。
刀を地面に刺しているが、刀ごと沈んでいるし、黒い靄を出しているけど霧散するだけ。
ガシャガシャと音を鳴らし、ゆっくりと沈む。そのまま――――消えちまった。
「沈んじまった奴はどうなるんだ?」
「さぁ? 沈んでしまった後なんて、僕は見た事がないからね。どうなっているかなんて知らないし、興味ないよ」
…………気にしたら負けって事ね。
今、一瞬管理者の顔しなかったかい?
「とりあえず、これで中ボスは撃破って事になったでしょ。次行こう」
アマリアが言うから、とりあえず先に進もうとすると、後ろで待機していたリヒトが裾を掴んだ。なんだ?
「あの、お二人は怪我、大丈夫なんですか?」
「少しいてぇが、気にするほどじゃねぇよ」
グレールも観るけど、余裕そうに頷いた。
「問題ありません」
返答を聞いたリヒトは、まだ不安そう。
でも、ここで大丈夫じゃなかったとして、どうする事も出来ないぞ。
「二人が大丈夫じゃなくても、先には進まないといけないし、今は進むよ。知里、この雰囲気を壊さないモンスターって、何が予想できる?」
「なんで俺に聞いてくるんだ?」
「だって、知里はこういう感じの雰囲気得意そうだから」
なんだよ、その理由。
この雰囲気が得意? いやいや、雰囲気に得意も何もないだろう。
「別に、元の世界でこんな感じの小説やアニメを見ただけだ。だから、得意もクソもない」
「…………へぇ」
「わかってないのか信じてないのか。どっちだよ」
「どっちでもいいでしょ。それより、何か思いつかないの?」
信じてねぇーの確定。
そんなこと急に言われてもなぁ……。
「んー、女の幽霊が井戸から這い出て来るとかは定番だな」
「なに、その定番」
「俺の世界での定番」
「…………そう」
でも、井戸なんて存在しないしな。
それなら、なんだ?
和風ホラーの定番。ラスボスに使われていそうな妖怪か幽霊って、なんだろうか。
雪女? いやいや、和風ホラー関係ないじゃん。
和風ホラーの定番の落ち武者は出てきちまったし……。
他が本当に出てこない……。ろくろっ首??
廊下を考えながら歩いていると、開いている襖があったらしい。
俺は気づかずに素通りしようとしてしまったんだけど、呼び止められた瞬間に視界に入ってしまった。
――――――――映画とかで見覚えのある井戸が。
「あれって…………」
「まず、俺は言いたい。なぜ、畳の部屋に井戸があるのか。なんで、いきなり現れたのか。水は通っているのか」
リヒトが何かを言いそうになったのを遮り、疑問をすべて吐き出した。
吐き出したところで、現状が変わるわけじゃないけど。
「そういえばチサト様、先ほど、井戸から出て来る女性がなどと言っておりませんでしかたか?」
「言ってない言ってない。俺はそんなことを言っていない」
そんな、俺が一級フラグ建築士みたいなことを言うわけないだろう、グレールさんや。
「ひ、ひとまず、井戸に近付くぞ」
「誤魔化しましたね。まぁ、いいですけど。では、早くしましょう」
ふぅ、さてさて、何が出てくるんだ?
「いやいや、待って待って。グレールと知里は待機。早く終わらせたいからって勝手に動かないで」
「なんで? こういう時はいつも俺を送り出していただろ」
「そうだけど、今回は駄目でしょ。このメンバーで怪我をしている二人を行かせたとなると、なんか嫌だよ、気持ち的に」
まぁ、そうだけど……。
「でも、どなたが行くのですか? ロゼ姫は絶対に行かせんませんよ? そうなると、もう三人しか…………」
当たり前のようにロゼ姫を除外したな、グレールよ。
でも、そうなるとアマリアかアルカ、リヒトじゃないかな。
アマリアは大丈夫かと思うけど、他の二人は――……
震えているな。
顔が青いな。
俺と目を合わせないな。
涙を浮かべているな、リヒトよ。
「これで、どうしろと?」
「…………僕が行くよ」
「一人で大丈夫か?」
「大丈夫だよ。万が一、危険があっても僕はもう死んでいる存在だからね。知里の負担が減るだけ」
「そんなことを聞いている訳じゃっ――――俺の話は最後まで聞けよ」
何で俺の言葉を聞いてくれないんだよ。
もう行っちまったし、まぁ、いっか。
さて、どんなモンスターが出て来るのか、タノシミダナー。
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