時間をかけたくはないけど、今回ばかりは仕方がない
アマリアがグレール達に今の話を伝えた。
アルカはまたしても動揺を見せてしまい、隙をつかれ危険な目にあっていた。
いい加減、アマリアの魔法に慣れろって……。
「はぁ…………」
「リヒト、大丈夫?」
「大丈夫、です。早く、治しますね」
「いや、もう動けるでしょ、知里」
…………うぅ。
まだ流石に痛いけど、リヒトの体力と魔力を考えると、ここまでだな。
痛いけど、本当に動くのも辛いけど。
体をおこっ――……
「いでででで…………」
「おっさん?」
「確かにおっさんだけど、人に言われるとむかつく」
「早く準備をして」
「はい」
今は言い争いをしている時間じゃないのはわかっているし、素直に従うけど、なんか、むかつく。
俺、怪我人なんだけど。…………グレールもだったわ。
「それじゃ、僕は魔法の準備をする。準備が出来次第合図を送るから、一瞬だけでいい、動きを止めて」
「わかった」
時間を稼ぐことはできるだろう。問題は、動きを封じる方法。
さっき考えたように、黒い靄の回数制限を利用して水に封じ込めるとかは、アマリアの魔法を逆算しないといけないし、流石に難しいな。
おっ、魔力を吸われ始めた。
でも、微弱だ。ものすごく少ない量を時間をかけて使う魔法か?
どんな魔法かわからんが、アマリアが使う魔法だ、大丈夫だろう。
というか、この感覚で逆算すればいいか?
流石に、放つ時は魔力を多く使うだろう。
それを感じて、戦うか。
「んじゃ、俺も加勢しますか」
接近戦ではなく、中距離。
流石に無理は出来ない、ラスボスもいるから体的にも休ませたい。
アルカとグレールもこれ以上は体力的に限界が近くなるだろう。
この後すぐにラスボスが来ないわけではない。
ここで減らせるもんすべて減らして、ラスボスで殺すという作りの可能性もある。
「リンク、助かった、一度戻れ」
『っ、なぜ!?』
「お前の空間魔法は、魔力の消費が激しい。ラスボスのために魔力を温存したい」
言うと、渋々ながらも消えた。
消えろまでは言ってないんだけど、まぁ。いいか。
「とはいえ、どの魔法がいいんだよ……」
『こちらはいかがでしょう』
アビリティが急に魔法一覧の画面を指輪から出した。
久しぶりに見たな、この画面。あっ、一つだけ光ってる。
「初めて見る魔法だな。ワーターということは、水属性魔法か」
『視線でも自由に操る事の出来る中距離魔法です。ですが少々、体を動かします』
「少々なら大丈夫だ。えぇっと――――|fouet・water」
魔法を放つと、水の鞭が左手に握られた。
へぇ、鞭、か。
想像すれば少しは形を変えられるみたいだな。
だが、鞭ということは、結構体を動かすんじゃないか?
「視線だけでもって、こういうことか」
視線もそうだが、想像した通りの動きをしてくれる。
しなりも、伸びも。ただ、アビリティが言った通り、腕は少し動かした方がいいみたい。
――――バチン!!
「殺傷力ありそ」
地面に叩きつけると、いい音が響いた。
これは、使える。
しかも、そこまで魔力を使わないみたい。アマリアに吸われている魔力の感覚と同じくらい。
「鞭なんて使ったことないけど、なんとなく動き方はわかる。これが、異世界転生者の特権かな」
左手を振り上げ、前方に飛ばすように叩き落した。
すると、鞭はしなり、真っすぐ落ち武者へと向かう。
同時に、アルカは一歩遅れたみたいだけど、グレールに合わせるように動き剣を振りかざした。
俺の鞭に瞬時に合わせられる反射神経、対応力の高さ。
本当に、二人って戦闘能力高いんだなと実感する。
「……うっ。さすがに、大きな動きは体に負担があるか……」
「大丈夫ですか?」
「問題ない。リヒトは後ろに下がって魔力の温存をしていてくれ。ラスボスのために」
「…………わかりました」
渋々だな。でも、魔力量を考えると、ラスボス戦に備えた方がいいと判断になったみたい。
ここは成長を感じる。前ならそれでもって、説得に時間がかかっていた。
――――よしっ、全員からの攻撃、流石に防ぎきれなくなってきたな。このまま押してやるよ。
「――――来るな」
また、両手を広げた。
すると、魔法を無効化する黒い靄を出した。
俺達全員の魔法が消された。
さっきは出せなくて、今は出した。
今が一回目として、また連続で出せるかどうか。それか、回数制限か。
また、全員で魔法を放つ。そこで判断するか。
グレールが氷の剣を作り出し、アルカも剣を構える。
ロゼ姫も酸のイルカを出した。
俺も、再度水の鞭を作り出し、叩き落すように振りかざす。
すると、またしても両手を動かした。
連続ではだせっ――はぁい!?
上に飛び、すべての攻撃を回避した!?
あんなに重そうな甲冑を見に纏っているのに軽快な動き。
いや、今までグレールとアルカの攻撃を回避していたわけだし、当然か。
「――――温存し始めたな」
アマリアを見ると、まだ集中している。
魔力的にも、まだ時間がかかりそう。
まだ、焦らなくてもいいか。
「ゆっくり、ゆっくり。じわりじわりと、せめていこう」
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