穴がない完璧なダンジョンなんて存在するわけないよな
最初に出したのは、陽炎。
斬ろうとしているグレールとアルカの幻影を作り出す。
目で見て判断しているのなら、これで惑わせるはず。
魔力察知でも、反応は遅れるだろ。
沢山の陽炎に本物は二人。
全てを見極められるわけが無い……はず。
────だったはずなんだけどなぁ。
「すっご…………」
「感心してないで、次」
「あ、はい」
陽炎は無視、本物からの攻撃だけを受け止めている。
流石に反応は少し遅れているけど、”少し”だけでは駄目らしい。
甲冑は固い、重い一撃を食らわせないと意味は無いだろう。
「acqua」
陽炎を出しながら、新acquaを発動。
アルカ達に引っかからないように気を付けながらぶっ放す。
斬ろうと剣を振り上げた。そのまま、水の雫を切りやがれ。
「――――こっちも駄目か」
何かを察したらしく、斬る事はせず黒い靄を手から繰り出し、溶かした……のか?
新技見せてくれてサンキュー。
「リンク、出番だ。|Mitrailleuseflame」
陽炎を消し、炎のガトリング砲発射。
リンクが素早く空間魔法を作り出し、アルカとグレールを割け、落ち武者にしかける。
流石二人、と言うべきか。
炎のガトリング砲に一切引っかかることなく攻撃をしかけている。
しかも、凄い連携。隙が無い。
落ち武者の甲冑が固く無ければもう決着はついているだろう。
それくらい、攻撃をしかけている。
「ロゼ、準備はいい?」
「はい」
次は、ロゼ姫の酸魔法の出番。
俺のacquaに紛れさせ、酸魔法を繰り出す。
さっきは切られなかったけど、酸魔法を操作すれば甲冑を溶かせることが出来るかもしれない。
俺と目を合わせ、ロゼ姫様は頷いた。
「行きます。――――acid」
見た目は、俺が出したのと同じ水の雫。
でも、触れると簡単に解かされてしまう、酸。
これなら──なんなんだよ!!!
「あんなんアリかよ…………」
「色々情報ゲット出来たね。そんで、厄介だという事もわかった」
刀を宙に浮かせ、両手を左右に広げたかと思えば、黒い靄が噴射。すべての魔法を打ち消しやがった。
「これって、魔力量で負けているという事か?」
「その可能性は低いかな。だって、それだと知里の魔法まで打ち消されるのはおかしい。ダンジョンモンスター特有のバフじゃないかな」
「最悪じゃん」
どうすればいいんだよ。
すべての魔法を打ち消す靄を出させないようするしかないか。
「グレールの魔法で両手を凍らせて靄を封じるとかはできないんかな」
「ロゼと知里の魔法を打ち消しているんだから難しいんじゃないかな。でも、やってみる価値はあるかもね。今は思いつく限りの事をしよう。――――|imagination」
また、周りに簡易的な作戦を伝えた。
アビリティから警告もないし、俺の魔力はまだ問題ないだろう。
「――――無茶ぶりがお好きなようで」
「大丈夫なのか?」
「問題ありませんよ、余裕です」
グレールから一瞬、殺気が向けられたような気がしたけど、余裕なら気のせいだな。さっきの殺気は気のせい気のせい。あはははは……。
「それじゃ、グレールのアシストしないとね」
「…………はい」
戦闘の後が怖いな。
「ゴッホン。――――wavewater」
グレールの氷のアシストと言うなら、やっぱり水魔法だろう。
アルカとグレールを割け、落ち武者に向かわせる広範囲水魔法。
また、さっきの黒い靄を出すだろうけど、視界が遮られた時にでもグレールが仕掛けてくれればいい。
「――――あ、あれ?」
「黒い靄、出しませんでしたね……」
リヒトの言う通り、今回は簡単に水の中に沈められた。
よくわからないけれどグレールが瞬時に対応。俺の魔法を凍らせた。
「よくわかりませんが、閉じ込められましたね。でも、怪しい」
「そうだな。さっきまで出していた黒い靄を出さなかったというのは気がかりだ。次の仕掛けに賭けたのかもしれない」
でも、動きを見せない。
仕掛けても大丈夫だろうか、カウンターを仕掛けようとしているんじゃないか。
「――――出さなかったのではなく、出せなかったとかはありませんか?」
ロゼ姫が後ろからそんなことを言ってきた。
出せなかった?
「あのように強い魔法や力には、何かしらのリスクがあるはずです。例えば、何回までしか連続で出せないとか…………」
あー、なるほど。
たしかに、何でも打ち消す黒い靄が何のリスクもなく出せたら、いくらSSSダンジョンだろうと攻略者が不利すぎる。
どこかには必ず穴を用意しなければ、攻略できない。
攻略できるようには、必ずしているはずだ。
「ロゼ姫の着眼点、面白いな」
「あ、ありがとうございます」
「んじゃ、そっち方面で考え直そうか」
連続で出せないのなら、今のようにしかければいい。作戦を練り直そう。
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