ここまで完全に雰囲気を崩さないのもすごいな
廊下を進むと、また同じ光景の繰り返し。
襖を開いても、畳の部屋で変わり映えしない。
「もしかして、また合わせ鏡?」
「それはさすがにないでしょ。多分だけど、どこかに違う光景が──あったよ」
アマリアが指さす方向をみんなで見ると、そこには畳の部屋にはありえない物が置かれていた。
いや、刻まれていた。
「魔法陣か」
「魔法陣だね。ないと思っていたけど、そこばかりは雰囲気に合わせる事が出来なかったみたい。ひとまず、知里、触れてみて」
「なんで俺?」
「一番適任でしょ?」
知らんわ。
まぁ、触れるしかないから触れるけど。
「んじゃ、触れるぞ」
魔法陣の近くでしゃがみ、触れてみる。
──っ、魔法陣が赤く光り出した!!
「魔法陣が発動したよ! 知里、離れて!」
「おう──え?」
アマリア達の方に走り出そうとしたら、足が動かなくなった。
いや、動かなくなった訳では無い。動かせなくなった。
下を見ると──……
「うわぁ……」
甲冑……か、これ。に守られた手が俺の足を掴んでいた。
────ガシャン ガシャン
「ガシャン?」
魔法陣の中から聞こえる、不吉な音。
なんの、音?
「チサト様!」
「来るなグレール!!」
っ、後ろから気配。しかも、強い。
な、なんだ、これ。中ボス? この気配が?
ここはSSSダンジョン。中ボスはSSのはず。
それなのに、なんだよこの気配。
ラムウの時とは比べ物にならないくらいどす黒い空気が流れ込んでくる……。
後ろを、見ることが出来ない。
「カガミヤ!」
「カガミヤさん!! 早くこっちに!!」
リヒトが手を伸ばす。掴もうと俺も伸ばすが、それより体がグンッと後ろに引っ張られた。
体に次々黒い鞭のようなものが巻きついてくる。
体が、拘束される。身動きが全く取れなっ──……
「──わけじゃねぇーよ!! |absolutewater」
全方位に水の膜を張る魔法。俺に影響は無いが、後ろにいるナニカには直撃のはず。
────っ、うっし!
俺を拘束するよくわからんやつが緩くなった。
「flame」
右手に炎を灯し、拘束してくるもんから逃れる。
畳に降り、上を見ると俺の出した水に沈められている──お、落ち武者……?
甲冑に身を包み、腰に指した刀を握る落ち武者が、俺の水魔法に囚われていた。
「あ、あれもモンスターなのか?」
「モンスターだね。しかも、すごい強い」
アマリアも警戒している。
後ろにいるみんなも真っ青な顔を浮かべ、囚われている落ち武者を見上げていた。
「中ボスもしっかりと、このダンジョンに合わせているみたいだね」
「そこまで厳密に作り上げなくて良いだろうが……」
落ち武者は、現代でもレベルの高い敵として指定されることが多いよな……。
今回もSSSダンジョンだし、中ボスだろうと油断はできない。というか、油断すると普通に負ける。
っ、刀を抜いた。
――――バシャン
「なっ?! 俺の水魔法が、簡単に斬られた?」
ゆっくりと下に降りてくる。
畳に足を突けると片足を前に出し、姿勢を低くし俺を睨む。
悪寒が走り、体が震える。
でも、今までみたいに体が動かないわけではない。
気持ちは落ち着いているし、視界もはっきりしている。
空気に押されてしまいそうになるけれど、大丈夫。
手に炎を灯し、構えを取っている落ち武者を見据える。
すると、警戒するように落ち武者が後ろに下がった。
相手の気配に敏感らしい、凄い警戒している。
そう簡単には、襲ってこないか、この調子だと。
だが、出方を間違えると、こっちがやられるな。
さて、どんな攻め方のモンスターなのか。
「――――っ、後ろ!!」
瞬きした一瞬で姿を消した。
空気の微かな揺れ感じる、後ろから。
振り向くのと同時にリヒトの後ろに回っている落ち武者が刀を振り上げていた。
――――ガキン
「グレールさん!」
「早く避けてください!」
リヒトの前に滑り込み、グレールが氷の剣で落ち武者の刀を受け止めた。
苦しそうだな、態勢が悪いよな、あれじゃ……。
片足を突いて頭の上で受け止めている。
リヒトがすぐに離れると、剣を傾け刀をスライドさせた。
バランスを崩した落ち武者に横一線の攻撃を喰らわせる。
だが、畳を蹴り後ろに下がり回避された。カツンという音が聞こえたから完全回避は出来なかったと思うけど……。
「固いですね、あの甲冑」
「そう簡単に崩せそうにないな」
速さはわかった、あと、固さも。
慣れるまではみんなで気配を察知し守りつつ、慣れてきたら仕掛けた方がよさそうだ。
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