これでやっと次に進める、助かった
刺激が強い言い方をしてしまってから、なんとなく手鏡の奥から怯えているような空気が流れ込んでくる。
んで、隣からいや~な視線を送られている。
「……そんな顔、俺に向けないで」
「だって、今回のは確実に知里のせいでしょ。どうするの、空気が重たいんだけど」
「知らねぇーよ」
なんで俺が何とかできると思っているんだよ。というか、俺のせいなの?
いやいや、普通に一回殺しているんだろう? なら、また同じように殺せばいいだけだろう。
「はぁ、ひとまず、アルカ。気絶しているモンスターを倒して」
『え? やっ、でも、殺してもいいの、かな………』
…………だから、アマリア君、そんな顔を俺に向けないで。
何を思っているの、その顔。なんていう顔なの。
俺を責めている顔だっていう事はわかるけどさ、困るって。今更俺を責めても意味は無いでしょ。ほらほら、早くアルカを説得してよ。
俺はこれ以上邪魔をしないように口チャックでいるからさ。
「…………大丈夫だよ、殺すんじゃなくて、倒すの。いつもと一緒。今まで、いろんなモンスターを倒してきたでしょ? 相手が人の姿なのかドラゴンなのか。違いはそれだけ、簡単でしょ?」
『そうだけど……』
「それに、一回倒しているんだから、大丈夫。頑張ってみて」
『わかった……。やってみる!!』
「うん、信じているよ」
手鏡の奥から不安そうな空気が消えた。
こういうの、アマリア得意だよなぁ。
「さて、あとは待つだけだね。こっちでできることは、モンスターを拘束し続けることかな」
「そうだな。なんか、腑に落ちないところもあるけど」
「自業自得」
どこだがだよ、この野郎。
※
アマリア様が励ましてくれた。
頷いた以上、俺はまだ気絶して畳の上に倒れているモンスターを殺す――いや、倒す。
えぇっと、カガミヤが言うには、後六回は倒さないといけない。
あと六回…………気が遠くなりそう。
いやいや、ここはSSSダンジョン。生半可な気持ちでは絶対にクリアなんてできない。
覚悟を決めろ、俺!
まずは、今目の前に倒れているモンスターを倒す。
「おりゃ!!」
――――ザシュッ
「はぁ、はぁ…………」
今、白い顔が俺を見た。目があった――気がした。
人を、殺したような感覚があった。
けど、手に残っている感触は、モンスターを切った時の感触だった。
この感覚なら、もう慣れている。
もう、何体も、何体も、倒してきた。
この感触なら、俺は何体でも倒せる!
「よしっ! これならいける!! 二人はさっきまでと同じように拘束してくれると嬉しい。お願いしてもいいか?」
二人に聞くと、元気に頷いてくれた。
よしっ、やってやるわ!!
※
「映画を見ている気分だな」
「なにを楽しんでいるのさ。まぁ、ここまで人間、吹っ切れるんだなぁとは思うけど」
手鏡から見えるのは、アルカの無双。
あっちのモンスターも一度倒すと変わるみたいだな。
でも、どれにも対応して、すぐに切ってる。
立って見るのも疲れるから、もう畳に寝っ転がっている。
その間は、グレールにこっちのモンスターをお願いしていたんだけど……。
「おーい、漏れてるぞ。flame」
こっちまで寄って来たモンスターを簡単に燃やす。
俺を襲ったところで、もう意味はないだろう。
まったく…………。
あっ。魔力を減らすという目的があるか。
「うるさいですよ、わざとです。なぜ、私が寛いでいる貴方の分まで頑張らないといけないのですか。自分の身は自分で守ってください」
「酷いなぁ。俺だって今、アルカを見守るので必死なんだよ。お前の世話をしている時間はないの」
「今、世話をしているのは間違いなく私ですけどね」
あ、隣で膝をついた。
なんだよ、まだ文句あるのか?
「いかがですか、あちらの様子は」
「アルカが四体目を倒した。あと二体――あと一体になったな。もう終わるだろ」
そんなことを言って欠伸をこぼいていると、歓喜の声が聞えた。
『撃破ぁぁぁぁぁぁぁああああ!!』
おっ、ラスト一体も終わったらしい。
よっこいしょっと…………うっ、腰が……。
腰をポンポン叩いていると、アルカが手鏡を覗く。
『カガミヤ! 倒したぞ!!』
「見ていたからわかるぞ。おつかれさん」
『おう!』
んじゃ、やっと次に進めるな。
でも、次が中ボスだよな? ここまでが前座だよな?
ここから中ボスで、また魔力だけがなくなるような事態は起きないでくれよ?
俺の場合はたぶん大丈夫だと思うけど、他の奴らはそうはいかないと思うし。
「んじゃ、まずは襖を開いて姿見を見つけてくれ」
『わかりました』
アルカが返事をする前にリヒトが返事をした。
横から話を聞いていたらしいな。
おっ、画面が動いた。
「モンスターはまだ出てくるからな? 油断するんじゃないぞ」
『わかったぞ!』
んじゃ、俺達も姿見の前に立って準備するか。
これで、同時に合わせ鏡をした時に前に進むことが出来るかどうか。
だが、めんどくさい事に、今も俺達を止めようとモンスターが襲い掛かってくる。
しかも、焦ったように。
――――これが証拠だろう。
手鏡と姿見で合わせ鏡をしよう、絶対に次の道が現れる。
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