これで一安心だけど、何でこうも俺は不運なんだ
うーん、襖は開けられたし、当たりも引けた。
姿見も見つけられたし、合わせ鏡もしてみたんだが、反応がない。
その間も、モンスターは俺の邪魔をしてくるから、グレールとアマリアで拘束している。
もう、倒す必要は無くなったしな。
「こっちでできる事は無くなったな。あとは、アルカ達に任せるしかないだろう」
「本当にそうでしょうか」
「他に気になるもんでもあるのか?」
「…………ないですね」
「だろ?」
グレールが考えるが、何も思いつかなかったらしい。
アマリアも考えるけど、同じみたいだ。首を横に振った。
「でも、アルカ達が何かしなければならないのであれば、少し厄介かもしれないね」
「そうだな。こっちと同じことをあいつらがやらなければならないのであれば、モンスターを何度も倒さなければならない時点でリヒト辺りが嫌がりそうだし、魔力を無断に使っている可能性がある」
あの三人は実力も高いし、時間をかければダンジョンをクリアできるとは思う。
だが、時間をかける訳にはいかないのがこのダンジョン。さすがに気ばかりが焦るな。
この後、ラスボスが待っていると思うと、どうしても早くしてと思ってしまう。
くっそ、何か連絡する手段があればいいんだが……。
「ねぇ、その手鏡、何かできないかな」
「なにか? なにかって、なんだよ」
「なにかは、なにかだよ。少し見せて」
アマリアが手を差しだしてきたから、手鏡を渡した。
覗き込むと、何を思ったのか。いきなりお札を勢いよくはがした!?
「な、何をしているんだ!? それを剥がすのは最終手段と言っていてだろうが!」
「今がその最終手段の使い所じゃないの? もう、手の打ちようがないんだから」
「……そうだな」
で、でも、せめて、俺達に相談くらいはしてくれよ。
いや、一声だけでいい。「お札を剥がすよ」とか、そういうのはなかったんかい。
「――――へぇ、面白いものが映ってるよ」
「え?」
グレールと目を合わせた後、アマリアの持っている手鏡を覗き込むと――え?
「これって、リヒト?」
「多分、手鏡を持っている人の角度で、リヒトが見えているみたいな感じじゃないかな。誰が持っているんだろう」
えぇっと、あ、ロゼ姫も映った。
つまり、持っているのはアルカか?
「これって、あちら側の手鏡とこっちの手鏡が繋がったという事か?」
「その可能性があるね。お札で繋がりが遮断されていたみたい。ということは、あっちもお札を剥がせば話せるようになるんじゃないかな。せめて、口パクだけでも会話が出来れば嬉しい」
そうだな、どんな形でも繋がる事が出来れば嬉しい。
だが、あっちはお札を剥がさないだろう。だって、怖がり三人衆だから。
俺でも、お札を剥がすのは最終手段にしていたのに、あっちが手っ取り速く剥がすとは思えない。
「なんとか、お札を剥がすようにあっちに伝えられないか……」
「魔法だけでもあっちに送る事が出来れば、僕の音魔法、|imaginationで指示を出せるんだけどね」
魔法をあっちに……か。
「え、なにしてんの?」
「手鏡を壊さない程度に魔法を放ってみようかなと」
「いいの?」
「壊さなければいいだろう。ダンジョンに用意されていた手鏡だし、そう簡単には壊れないと信じる」
アマリアから手鏡を受け取り、左手で持つ。
右手に炎を宿し、壊さない程度に魔法、flameをはなっ――……
「あっ、アルカが鏡を覗きこんっ――――」
『あっちぃぃぃぃいいいいいいい!!!』
・・・・・・・・・・・・あっ。
やっべ、アルカが手鏡を覗き込んだ瞬間にflameを放っちまった。
アルカの断末魔が聞こえるなぁ、あははは……。
「なんか、タイミングが凄かった、みたいだね」
「すごい声が聞こえましたが、大丈夫ですか?」
「アルカなら大丈夫だろう。それに、今ので偶然繋がったんじゃないか? 俺の魔法であっちのお札が燃えただろう、きっと」
絶対にそうだ、あっちに魔法を届ける事が出来たのは、アルカの断末魔が証明してくれている。
『アルカ!? え、炎!? 大丈夫!?』
『アルカさん!? 大丈夫ですか!?』
あー…………。やっべぇぞ、これ。
リヒトとロゼ姫の心配の声が聞こえる。
え、これって、俺が悪いの?
俺なの? 俺、悪者?
「めっちゃ冷や汗流れているところ悪いけど、早く声をかけてあげたら?」
「アマリア、任せた」
「えっ」
無理やりアマリアに手鏡を渡し、俺が映らないようにした。
慌てているようなあっちの声が落ち着き、アルカの『大丈夫だ』という声を聴いて、アマリアが声をかけた。
「アルカ、アルカ聞こえてる? 僕、アマリアなんだけど」
さぁて、聞こえるのか、どうなのか。
返事を待っていると――……
『えっ、アマリア様!?』
どうやら、無事につながる事が出来たらしい。よ、よかったぁぁぁぁぁぁ……。
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