話すだけで気持ちが晴れるって、あながち間違えていないかもな
掲示板には、昨日の受付嬢の死因が細かく書かれている。
アマリアも、やはり管理者なんだな。
だが、引っかかる。
たしか、アマリアはギルド管理以外の仕事はしないんじゃなかったか?
処罰はアクアが行うと聞いていたし……。
なぜ今回は、アマリアが直々に処罰したんだ?
掲示板に書かれているのは死因だけ。
経緯や理由は一切書かれていない。
アマリアに直接聞きたくても、今どこにいるのかわからないし……。
「……ここにいても仕方ない。アルカ、部屋に戻るぞ」
「あ、ああ」
唖然としているアルカの手を引き、部屋に戻った。
アルカは椅子に、俺はベッドに腰を下ろす。
「なぁ、掲示板に書かれていた内容って、俺達に関係あるのかな」
「なんでだ」
「タイミングが、なんとなく……」
俯いていて表情は見えないが、相当落ち込んでいるな。
「嫌な予感がするんだ。この胸騒ぎは何だ。これから、何が起きるんだ」
「そんなもん、俺にわかると思うか? 俺は預言者でも占い師でもない。考えたところで意味はない。余計なことを考えるな、今は休め」
言い切ると、やっと顔を上げた。
今にも泣き出しそうな顔だ。
自分を追い詰めてどうする。
どうにもならないだろう……。
「そうだな。でも、なんとなく休めなくてな」
その気持ちはわからなくもない。
この世界に来て、二人の知人が死んだ。
村長と受付嬢。どちらも管理者の手によって。
アクアとアマリアは、どんな気持ちで人を殺していたのだろうか。
今まで、どんな気持ちで人と関わってきたのだろうか。
「……チッ」
今までの俺は、人との距離が近くなるのが面倒で、最低限の付き合いしかしなかった。
一人の時間が楽だったから、無駄に関わらなかった。
だから、こういう時、何と言えばいいのかわからない。
「────カガミヤは、今までどんな生活をしてきたんだ?」
「なんだ、藪から棒に」
「なんとなくな。友達や恋人はいたのか? 家族はどんなだった?」
アルカを見ると、無理に笑っているのがわかる。
……面倒くさいな。
だが、時間つぶしにはちょうどいいか。
「別に話してもいいが、気持ちのいい話じゃねぇぞ」
確認すると、アルカは頷いた。
「ネグレクトって知ってるか?」
「ネグレクト?」
「知らんか。簡単に言えば、育児放棄だ」
言うと、息をのんだ。
「俺は育児放棄されていた。まともな飯はもらえず、親は家にいない。最初は食事代を渡されていたが、それもなくなった。催促すれば殴られた」
今思うと、よく生きていたな。
「その過去が、俺を金に縛りつけた。金があれば一人で何でもできるからな」
軽く話しただけだが――
――――グスッ
……ん? 鼻をすする音?
「えっ、なんで泣いてんだ?!」
俺が泣かせたのか?
「わ、わりぃ。でも、止まんねぇ」
目元が赤い。
ただ育児放棄されていたと話しただけなのに……。
────そうか。
こいつは人の感情を感じ取りやすいのか。
純粋なんだな。
俺には、あんな感情はなかった。
「……お前は、そのままでいろ」
「え? どういう意味だ?」
「別に。ただ、少し羨ましいと思っただけだ」
「羨ましい?」
嘘でもないし、本音でもない気がする。
まあ、どっちでもいい。
「気にするな。話は終わりだ。寝るぞ」
「お、おう」
ベッドに横になると、リヒトの寝息が聞こえた。
さっきまで気づかなかった音。
後ろでアルカがまだ戸惑っている。
……笑える。
目を閉じると、不思議なほどすぐに眠りに落ちた。
心地いい。
こういうのも悪くないと、少しだけ思った。
※
リヒトが眠り始めて一週間、まだ目を覚まさない。
俺達はとっくに回復し、あとはリヒトが起きれば行動を再開できる状態だ。
大丈夫なのか?
魔力が底をついたせいで回復に時間がかかっているのだろうが、ここまで昏睡状態が続くとさすがに心配になる。
「……なんだ」
ベッドで眠るリヒトの隣に椅子を置き座っていると、横からアルカがうざい顔を覗かせてきた。
ニヤニヤするな、キモい。
「リヒトが心配か? カガミヤ」
「そんなんじゃねぇ。ただ、このまま眠りっぱなしは胸糞悪いだけだ」
「ふーん」
うわ、腹立つ。
だが、アルカが余裕そうにしているということは、十中八九大丈夫だな。
「魔力の回復で寝てるだけだ。多分、もう少しで目を覚ますぞ」
「誰も聞いてねぇよ」
「そうか」
……絶対わかってて言ってるだろ。
「今日はどうする? 依頼を聞きに行くか?」
「それでもいいが、受付は大丈夫なのか?」
「今回は大丈夫だろ。掲示板に書いてあったが、立て続けに問題が起きたから、アマリア様が自ら声をかけて受付をお願いしたらしい。ある意味信用できる」
……確かに、それは信用できる。
今回の件はアマリアが処理した直後だしな。
……気の毒だな、今回の受付嬢。
これ以上、巻き込まれるのは御免だ。
ギルドへ向かうと、一人の受付嬢が笑顔で冒険者と話していた。
あれが新しい受付嬢か。
派手だな。
銀髪に青のグラデーションのツインテール。
ぱっちりした二重で、見た目はかなり整っている。
頬を染めている冒険者もいる。
俺達に気づき、満面の笑みを向けてきた。
「こんにちは、冒険者ですか?」
「おう」
……なんか、じっと見られてないか?
「──もしかして、今話題の黎明の探検者様達でしょうか!!」
「お、おう……」
「わぁ!! 私、新しく受付を務めます、アマリア様の未来のお嫁さんことエトワールですー! よろしくお願いします!!」
元気よく言い切った。
……何を言ってるんだこいつは。
アマリアが女に興味あるとは思えない。
最悪だ。
妄想系か。
関わりたくないタイプだ。早く終わらせよう。
「依頼を──」
「え!? あの人彼女いたのか!?」
おい。
「いやだぁ、彼女なんて!! それはまだ先の話というか! でも、もう彼女みたいなものなんですけどぉぉぉおお!!」
アマリア、絶対わざとだろ。
もしかして、他に受付やる奴がいなかったのか?
「依頼を──」
「貴方についてはアマリア様から聞いております。今までお疲れさまでした」
おい、本題に入らせろ。
「――本物でまちがいないですよね!? 聞いていた通りのイケメン!! その死んだような瞳、気だるげな雰囲気、どストライクです!! 趣味は? 好きな物は? 彼女は!? 管理者と戦ったと聞きましたがどうやって生き延びたんですか!?」
……アマリアを殺す。
「カガミヤ? 目が死んでるぞ」
「俺の敵は管理者じゃなくてこの女かもしれない。だからこいつを殺して、ついでにアマリアも殺す」
「落ち着け!!」
深呼吸だ。落ち着け。
「殺してくださると!? 本当はアマリア様がよかったですが貴方でも全然大丈夫です!! どんな殺し方ですか!? 絞殺? 溺死? 撲殺? でも顔は最後まで見たいので目だけは残して──」
……もういい。
「目だけ残して焼き殺してやる」
「落ち着けぇぇぇぇぇええええ!!!!」
アルカの叫びと同時に頭へ衝撃。
右手に作った炎は、俺が倒れると同時に消えた。
……絶対、俺は悪くない。
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