受けたいと思って受けられるわけじゃねぇのかよ
瓦礫をどかすのに時間かかったけど、無事に光っている物を取り出せた。
アマリアが拾って確認しているけど、俺にはどう見てもペンダントにしか見えないんだが?
紫色の石がはめられている、普通のペンダント。
「…………ペンダントだね」
「ペンダントだな」
それは見ればわかんのよ、他に何かないのか?
「…………」
「気になるもんでもあるのか?」
「うん。これ、魔石だよ」
「…………え? 魔石? その、紫色の石が?」
「そう」
へぇ、魔石なんだ、それ。
「これ、もう魔力が残ってない」
「へぇ」
「なんでそこを気にするのかわかってないでしょ。というか、考えてないでしょ」
「まぁな、アマリアが気づけばいいかなって思ってる」
「他人任せやめて」
そんなことを言われてもなぁ、考えたところでわかるわけ──魔力がなくなっている魔石?
魔石って、魔力が込められているから魔石とか言うんじゃないのか?
それなのに、魔力を感じないって……。まるで抜け殻みたいな……。
「わかったみたいだね」
「いやいや、何で魔力が込められていないのに魔石ってわかるんだよ。ただの石かもしれねぇじゃねぇかよ」
「僕が確証無く言うと思う?」
言いながらアマリアが俺にペンダントを投げてきた。
落さずにキャッチすっ――……
「残り香……的な?」
「微かに感じるでしょ、魔力。その魔石はもう用済み。つまり、何かをオスクリタ海底に仕掛けられた可能性がある」
嘘だろ。
まさか、もう管理者が動き出したのか?
「こんなことは多分、追い込められたとしても管理者はしない。なにより動き出すまでの期間が短すぎるよ」
「確かに。それなら、これは誰が?」
「さすがに分からないよ。だから、ひとまず僕が預かっている」
「構わんが、落さないか? これからSSSランクのダンジョン行きたいと思っていたんだが」
「そうなんだ。多分だいじょっ――――待って?」
ん? 待って?
俺はどこにもいかねぇぞ、何を待てばいいんだ?
「SSSダンジョン?」
「おう」
「行くの?」
「そう思ってる」
「狙いは?」
「精霊」
「クリアできる確証は?」
「あるらしい」
「…………らしい?」
アマリアが怪訝そうな顔を向けて来るから、カケルと話した内容を簡単に伝えた。
それが一番早い。
「へぇ、カケルがね」
「そう。今のメンバーなら大丈夫なんだとよ。まぁ、アルカにリヒト、グレールにロゼ姫、俺とアマリア。たしかに、弱くはないだろう」
「まぁね。でも、SSSダンジョンはカケル=ルーナしかクリアできていないダンジョンだよ? そもそも、アルカ達のランクって、たしかSSまで到達してないよね?」
そういえば、俺達にもランクが付けられていたんだっけ。
俺は確か、Sだった……はず。
…………何で俺だけランクが上がらないんだ?
最初からSで、SSランクダンジョンをクリアしてもランクが上がらなかった。
まぁ、ランクなんて関係ないだろう。
実力が全てだ、肩書はいらん。
「何を考えているのかわからないけど、一つ言えるのは、流石にSSSダンジョンは受付嬢が簡単に行かせてはくれないという事。普通なら」
「え? 今までみたいに話せばすぐに資料を渡してくれるんじゃないのか?」
「そんなわけないでしょ。SSまでは、実績とかを確認して問題ないと判断された場合行くことが可能なんだよ。でも、SSSダンジョンはそう簡単にはいかない」
簡単にはいかないとは、どういうことだ?
「SSSダンジョンは、今までカケル=ルーナしか攻略をしていない」
「それはさっき聞いた」
「SSダンジョンは今まで攻略者は多数いるんだよ」
「おう……」
だから、なに?
「つまり、SSSダンジョンを攻略できると判断できる材料を準備しないと、資料は渡してくれないの。それも、口だけじゃなくて、実績を証拠を含めて」
「…………つまり?」
「うん。口頭で管理者と戦って勝ってきたんだよと言っても、証拠がないからそれは無効となるんだよ」
……………………絶対に壊れないボイスレコーダーとかを仕込んでおけばよかった。
※
アマリアと共に空中散歩をしながら、頭を悩ませる。
いや、本当に困った、マジで困った。
「アマリアの口利きでどうにか出来ないのか?」
「どうだろうね。少しは出来るとは思うけど、確実な事は言えないよ?」
言いながらアマリアは、さっき拾った魔石のはめられているネックレスを覗いている。
本気で考える気はゼロらしい。
「SSSダンジョンより魔石の方が大事ですか」
「また、このオスクリタ海底が狙われて崩壊ともなれば、今度こそここから離れなければならなくなる。というか、もう離れた方がいいんじゃないかな。さすがにここに在住し過ぎだよ」
それもそうだな。
これ以上、オスクリタ海底に迷惑をかける訳にもいかないし、場所移動も検討した方がいいか。
でも、どこに行けばいいんだ?
俺、地上なんてセーラ村かグランド国しか知らないぞ?
そのあと、ずっとオスクリタ海底にいたし……。
こう思い返してみたら、俺の行動範囲せまっ。
「これから長い旅になるかもしれないし、準備はしておこうか」
「…………嘘だろう?」
「それは、みんなが起きた時の話し合いで決まるんじゃないか――……」
ん? アマリアが下を見て口を閉ざした。な、なんだ?
目線を追うと、下には――あ、あれ?
今までどこにいたのかもわからないアンヘル族、アンジュとアンジェロが歩いていた。
「今まで何をしていたんだ?」
「わからない。ちょっと降りようか」
あっ、待ってよ〜。
下に行ってしまったアマリアを追いかけると、アンジュとアンジェロが俺達に気づいたみたい。
「こんにちは〜。お久しぶりですねぇ〜」
「どうも」
アンジェロが笑みを浮かべ手を振ってきた。
同じく返事を返すと、同時にアンジュが俺達の後ろを見た。
振り向くと、星屑の図書館の管理をしている女性、アシャーがこっちに向かって歩いていた。
「あっ……」
アシャーも俺達に気づいたらしい。
…………あれ、どこか焦ってない?
「あ、あの、いきなりですいません。一つ、お伺いしてもよろしいでしょうか」
「どうしたんだ?」
「どこかで、紫色の石がはめられているペンダントを見ていませんか?」
紫色のペンダントって、さっきアマリアが拾った物じゃないか?
横目で見ると、アマリアが懐をまさぐりさっきのペンダントを取りだした。
「これ?」
「あっ、それです!! よかった、壊れてもいないですね……」
その場にしゃがみこんでしまうほどに嬉しいらしい。誰かからの贈り物とかか?
「そんなに大事な物なの?」
「はい。これには魔力が込められており、それが放たれたら危険なんです。確か、モンスターが放たれてしまうはずなんです……」
魔力が、放たれたら……。
思わずアマリアと目を合わせてしまった。
だって、魔力が放たれたらって……。
「ありがとうございます、本当に助かりました。これは、預かっていた物なので、本当に焦って……あ、あれ?」
放心状態のアマリアからペンダントを受け取ったアシャーも気づいたらしい。
そのペンダントにはもう、魔力が残っていないことを。
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