気負い過ぎなんだよなぁ、もっと気楽に生きようぜ
「それじゃ、まずグレールからお願いしてもいい?」
「わかりました」
グレールと俺が入れ替わり、宝石に触れる。でも、無反応。何も変わらない。
つまり……。
三人の視線がリヒトに注がれる。
元々青かった顔がさらに青くなっちまった。
「え、わ、私?」
「以外、居ないね」
アマリアから容赦のない言葉を放たれ、リヒトは今にも倒れそう。
なんで、そこまで…………。
「何か不安があるの?」
「不安しかありませんよ……」
「なんで?」
「だって、releaseって、どのような魔法でも解除できる凄い魔法なんですよね? 私、扱いきれるかわかりません……」
あぁ、扱いきれるかの問題か。
「そこは安心しろ、どっちみち精霊が居なければ意味ないみたいだし、普段の戦闘では使えん。だから、精霊をゲットしてからそんな心配しろ」
「精霊……。あの、その、精霊を見つける事が出来た時、やはり私が主として精霊を従える形になるんでしょうか……」
「そうなるだろうな。お前がreleaseを持つことになるんだから」
…………あっ、俺から距離を取ってしまった。というか、俺達全員から距離を取ってしまった。
壁の方に移動し、体を震わせしゃがみこむ。
涙目を浮かべている、そんなに不安か?
「なんでそんなに不安なんだ?」
リヒトの隣でしゃがみ聞くと、横目でこちらを見た。
「だって、責任重大じゃないですか。私が魔法を手に入れてしまって、万が一カガミヤさんとはぐれる事態になってしまったり、魔法を扱えることができなかったら…………」
「ふんふん」
「それに、私はまだ弱いです。なので、戦闘で負けて命を落とす事もあるかと思います。そうなると、また魔法を見つけだすところから始めなければなりません。そうなってしまったら、私は後悔してもしきれないです…………」
・・・・そこまで考える?
「今、そこまで考える? とか、思ったでしょ」
「思った。だって、普通ここまで考えないだろう。俺ならめんどくせぇの一択だわ」
「だろうね。でも、リヒトは違うんだよ」
再度リヒトを見ると、気まずそうに顔を俯かせている。
まぁ、アマリアとの会話は聞こえていただろうし、気まずくなるよな。
「…………気負い過ぎなんだよ、お前」
「でも…………」
「あとな、考えすぎ」
デコピンをしてやると、「イタッ」と、額を抑えたリヒト。
困惑の表情を浮かべて俺を見る。
「俺を見てみろよ、この俺を。そこまで考えてないだろう? 精霊も、よくわからんうちにゲットしているし、よくわからんうちに管理者に狙われ、よくわからんうちにカケルを助け出さなければならなくなった。責任感とか言うより、今はもうめんどくせぇの感情しかないぞ」
本当に、この世界を必ず守ってやるとか、管理者から救い出してやるとかないからな。
普通に、ここで引くのは負けた気分だし、カケルを放置するとアビリティがうるさそうだからやっているだけ。
あと、普通にカケルは強いと思うし、管理者との戦いに参加してほしい。
「………でも」
「でもはいらん。お前に覚悟が無くてもあっても、今はリヒトしか魔法を授かる事が出来ないんだ。覚悟を決めろとは言わない、早くここから出させてくれ」
素直な気持ちを言うと、リヒトが頬を膨らませてしまった。
なんだよ、その顔。お前は何を望んでいるんだ。
「もう、わかりました……。まだ精霊もいないので、授かっても結局扱う事が出来ませんしね。すぐに覚悟は決められませんが、授かるだけ授かります」
「それでいいんだよ」
適当にやって行こうぜ、真面目な人ほど損する世界なんだからな。
リヒトがアマリアの元に行くと、「大丈夫?」と、聞いていた。
「大丈夫ではないです。でも、大丈夫です」
「どっちだよ」
「カガミヤさんは黙っていてください」
酷い……。
「大丈夫ならよかった。それじゃ、やり方伝えるね、僕の言う通りにやってみて」
「はい」
その後は、アマリアの言う通りにリヒトが宝石に手を伸ばした。
添えると、宝石は光り出す。
「やっぱり、適合しているね」
「…………」
リヒト以外何も反応なかったからな、そりゃそうだろう。
「それじゃ、まず杖を預かるね」
「はい」
「それで、両手で宝石を包み込むように触れてみて」
リヒトの手は小さいから、両手で包み込もうとしても、宝石の方が大きい。
「次に、魔力を感じて」
「感じる、ですか? 両手に灯すなどではなく?」
「うん。宝石から魔力を感じるの。意識すれば出来ると思うよ」
アマリアの言葉を信じて、リヒトは目を閉じて魔力に意識する。
呼吸は一定、すぐに感知できたらしい。
「感じました。澄んでいるような綺麗な魔力です」
「それを掴んで離さないでね」
「はい」
リヒトが緊張の面持ちで宝石を包み込んでいると、突然強い光が放たれた。
「えっ!?」
「動かないで、離したらやり直しだよ」
アマリアに釘を打たれ、リヒトは離れそうになった手を再度宝石に添える。
光りが徐々に強くなる、目を閉じても眩しい。
だ、大丈夫なのか?
うっ、視界が光に包まれっ――……
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