無限に持っている訳じゃないのにな
背後の刃の段数は六本。
四方に飛ばし、ワープも使い、縦横無尽に操作する。
鱗を狙っても意味は無い、切り傷一つつけられない。でも、気を逸らす事は出来る。
氷の柱、炎の竜、水の刃。
こんな魔法に囲まれているヴリトラは、迂闊に動けないだろう。
これで隙を作って、炎の竜を懐に入れ一発で終わらせる。
それか、口を大きく開いた時にでも、中にflameを放つ。
隙があれば、なにかしらぶち込んでやるよ。
「…………隙が出来ない…………」
「そうですね。硬い鱗で守られている為、最小限の動きで攻撃を防いでいます。これでは、時間がかかりますね」
「鱗を破壊できるという事を相手にわからせればいいんだろうが、魔力を大量に消費するし、確証がない」
失敗すれば、相手に優位な状況なんだと思わせてしまう。
さて、どうするか。
「それなら、もう一回僕にチャンスをちょうだい?」
後ろから声が聞こえて振り向くと、動きにくい体を引きずっているアマリアの姿があった。
目を覚ましたらしいけど、動いて大丈夫なのか?
「アマリア様、まだ動いては駄目ですよ!!」
「大丈夫だよ、痛みはないんだ」
「でも……」
「今回は、音魔法が活躍できる相手でしょ、もう一回やらせてよ。次は、確実に鱗を破壊できるからさ」
自信満々だな。
アマリアがここまで言うという事は、絶対に策はある。
でも、こんな傷だらけのアマリアに任せてもいいものなのか。
痛みはないにしろ、体には限界がある、無理をさせたら壊れるんじゃないか?
だが…………。
なんか、アマリアの非対称の瞳が闘志に燃えてる。さっき負けたの悔しかったのか?
アマリアって、意外と負けず嫌いなんだよなぁ。
めんどくさいが勝つと、負けてもいいみたいだけど。
「…………んじゃ、任せたわ」
「カガミヤさん!? アマリア様の傷は本当に酷いんですよ! 一回でここまで怪我を負っているんです。また同じ攻撃を喰らったら……」
リヒトの言葉もわかるが、アマリアの気持ちもわかるんだよな。
俺だって、このままじゃ終わらせたくないと思うし、負けたくないって思う。
「アマリアだって、ただ感情だけで言っている訳じゃないだろう。少なからず、今この場で一番経験豊富なのはアマリアだ。そいつがやると言っているんだから、任せるしかないだろう」
「でも…………」
不安そうにしているリヒトの頭を撫で、口を閉ざさせる。
これ以上何を言っても意味は無いし、アマリアはもう戦闘態勢を作っている。
「仲間を信じるのも、戦闘には大事だぞ」
「…………わかりました」
アマリアがヴリトラへと向かっていく。
スピリトが一瞬、ゆっくりと近づいてくるアマリアを見たけど、すぐに視線を戻した。
リンクも戸惑っているみたいだが俺が何も言わないから、スピリト同様直ぐに自分の役割を果たす。
「――――鱗が硬くて攻撃が通らないのなら、柔らかくすればいいよね。どんなに硬い石でも、地震や水で削れるんだよ」
ん? なんか、魔力が徐々に吸われていくんだけど?
なんか、勢いが凄いんだけど?
「チサト様、魔力の方は大丈夫ですか? アマリア様から強い魔力を感じるのですが」
「あー、うん。強制睡眠にはならないとは思うから大丈夫だ…………タブン」
任せると決めたのを今、俺はものすごく後悔している。
さっきまでは感情的に動いていないと思っていたけど、半分は感情的になってるだろう、これ。
頼むから、強制睡眠まで魔力を減らさないでね?
「全力で行くよ。――――via sunet」
さっきと同じ、前方に超音波のような振動を放つ音魔法。
いや、同じだけど、同じじゃない。威力がやばいぞ。
轟音を響かせ、ヴリトラへと向かっていく。
スピリトとリンクが驚いて、慌てて退避。炎の竜もスピリトの気持ちと通じているからか、心なしか驚いているように見える。
ヴリトラは表情を変えずに、自身を翼で包み迎え撃つ。
――――ドカンッ!!!!
「当たった!!」
「当たった、が…………」
何とか耐えている。
アマリアも、今の魔法は反動があるみたいで、苦しそうに放ち続けていた。
せめぎ合い、見ているしか出来ない。
魔法を放ち続けていると、徐々に翼が削れ始めた。
「今までの攻撃も無駄ではなかったみたいですね」
「蓄積はされていたらしい」
小さな傷から徐々にボロボロと鱗が崩れ落ちていく。
空中で耐え切れなくなってきたヴリトラは、後ろに吹っ飛ばされた。
――――ドカンッ!
壁に激突した!
「はぁ、はぁ…………」
「サンキュ-、アマリア。ここからは任せろ」
まだ、|Dragonflameは生きている。
「スピリト、任せたぞ」
退避していたスピリトが、壁に激突したヴリトラの前に移動する。
もちろん、|Dragonflameを掲げて。
「『――――行け』」
俺とスピリトの声が重なり、炎の竜は体を大きくし、ヴリトラへと放たれる。
ヴリトラを丸呑みできそうなほどの大きさになり、大きく口を開き、叫んでいるヴリトラを喰らった。
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