チート能力かどうかって、どこで判断すればいいんだか
俺についてを話しながら、来た道を戻ることになった。
始終、二人は驚きっぱなしだけど、事実だから仕方がない。
「つまり、カガミヤは違う世界の住人なのか?」
「そうだ。少なからずここの世界の住民ではない」
「それだったら、流石に強い力を持っていたとしてもワイバーンと戦うのは難しいんじゃないか?」
難しいを通り越して無理だろう。
力を持っていたとしても、俺は放ち方すら知らん。
「そう言えば、魔法っていうのがこの世界にはあるんだろう? そうすれば放てるんだ?」
「本当に知らないんですね……。魔法は、魔力を杖や剣に込めるんです。そこからはイメージ。頭の中で属性魔法をイメージして、放つんです」
イメージ? イメージと魔力。魔力と言うのもわからない俺には、魔法を半つのすら難しいかもしれない。
「そう言えば、カガミヤはどれだけの魔法を持っているんだ? あんだけの能力値の高さだ。すっげぇ持っているんだろう!!」
目を輝かせて俺を見ないでくれよ、アルカ君。
何にもわからない俺に、そんなことを聞くのはやめてくれ……。
「えぇっと、そもそもどうやって魔法を見る事が出来るんだ?」
「アビリティを開き、横に指でスライドすると見れますよ」
リヒトに教えてもらった通りにアビリティを開き、横にスライドする。
画面が切り替わり、読める文字と読めない文字が大量に現れた。
よ、読みたくねぇ。
「やっぱり、沢山の魔法を持っているな!!!」
「すべてが読めるわけじゃないけどな」
えぇっと、試しに一つ、放ってみようかな。
俺が足を止めると、二人も足を止めた。
「ちょっと、一つだけ魔法を放ってみたい」
「出来るのか?」
「わからん。だが、やってみるだけやってみる」
えぇっと、魔力はわからんから無視。
一番上にある魔法を唱えて見るか。
「えぇっと――――flame」
右手を壁側に向けて唱えると、赤い光が現れ始めた。
それが炎へと切り替わり、放たれた。
――――ドカン!!
「…………お、おぉ」
ダンジョンの壁が、抉れた。
え、抉れるものなのか?
「い、今の威力で基本攻撃魔法、なの?」
「あ、ありえねぇ」
二人も困惑しているみたい。
だが、俺が一番困惑しているぞ。
え、今放ったのって、基本攻撃魔法なの?
※
ひとまず、魔法が放てることはわかったから、もう適当に戦うしかないという事で話がまとまった。
廊下を走っていると、やっと奥の方に光が見え始めた。
走り続けると、その光は大きくなる。目的地が近い。
「――――見えた!!」
アルカが叫ぶのと同時に、広場にたどり着く。瞬間――……
――――グワァァァァァァァアアアアアア!!!!
体にのしかかる咆哮。
最奥にいるのは、恐竜くらいの大きさはあるSランクモンスター、ワイバーン。
天井を隠すほどの大きな翼を広げ、威嚇してくる。
大きな牙をむき出し、咆哮して来た。
体が一気に重たくなり、足を今以上に踏み出せない。
アルカとリヒトも、汗を流し苦しそうにしている。
それでも二人は、俺を守るように前に出た。
そして、リヒトは杖を、アルカは剣を構え始めた。
「大丈夫か、カガミヤ」
「…………問題ない」
まったく、若者がこんなに頑張っているのなら、俺も負けてられないじゃないか。
「…………お前を殺せば、俺は金が手に入る。ここで手に入れたところで何になるかわからんが、もらえるもんはもらうぞ」
ワイバーンを見上げると、赤い瞳が俺達を射抜く。
体が竦みそうになるがなんとか堪え、指輪がはめられている右手を前に出した。
「flame!!」
前に突き出した右の手のひらに、炎の渦が生成された。
それはたちまち炎の弾になり、渦巻く。
「────行け」
燃え上がっている炎を操作し、前にいるワイバーンへ放つ。
このままもろに当てられれば――……
――――バサッ!!
「うわっ!! せこ!!」
ま、まぁ……。
そりゃ、翼があるんだから、上に飛んで逃げるか……。
っ! 翼が大きいからか、風が勢いよく吹き体が煽られる。
「…………――――っ。上にいるんじゃ、flameを当てられないな」
広い空間を自由に飛び回るワイバーン。
flameは溜めてから放つから勢いはすごいが、飛び回っているあいつに当てるのは困難だ。
そもそも、魔力をわかっていない俺が放った魔法って、あんな固そうな鱗を纏っているワイバーンに効くのか?
いや、今は弱気にならないで、出来ることはやるぞ。
「――アビリティ」
言うと同時に映像が現れ、すぐ俺が見たい魔法一覧を出してくれた。
えっと、俺が使える魔法…………っ。
「っ!! ちっ!!」
ワイバーンが俺に向かって急降下してきやがった!
映像は半透明だから遮られていたとしても前方は見える。
今回はそれのおかげで早めに気づけたが……。
もし当たっていたらと思うと……考えたくない。
「っ、また!!!」
今度は後ろから迫ってくる、考える時間すら与えてくれんのか!!
「っ!」
視界の端に映る一つの魔法名。偶然かもしれないが、時間がない。
名前的にも、現状に適した魔法が出てきてくれるだろ、多分!!
「heat haze!!」
向ってくるワイバーンに向けて出した手から、何か揺らいでいる物が出現した。
これは、霧? 煙? いや、違う。
「なんだこれ……って、ワイバーンに当たっても意味ねぇじゃねぇかよ!!!」
現れた霧がワイバーンの突進で霧散した。
体が勝手に動いてくれたおかげで本当にギリギリになったけど、避けられた。
風で煽られはしたがな。
それにしても、なんか違和感があったな。
目の前まで来ていたワイバーンを、咄嗟に体が動いたからと言っても避けきれる距離ではなかった。
と、いうか。さっき、俺じゃなくて違う奴を狙ったような気がした。
ワイバーンの身体が勝手に横へ逸れたような…………。
「もしかして、今の魔法って…………」
heat haze、熱の霞。
もしかして、相手に歪んだ映像を見せた感じか? 陽炎的な感じで。
陽炎なんだとしたら実態はない。だから、恐らく物理で消すのは不可能。
────これは使える。
flameとheat hazeを何とか使い分け、勝ち道を……。いや、他にも使ってみたい魔法はあるな。
幻覚はなんでもいいんだろうか、俺の頭の中で変えられるのか。
それも試して、こいつを倒すか。
「チート魔法なのかは知らんが、持っている力は全て使わせてもらおう。報酬のために、金の為に」
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