これで終わりとは思わないが、いい方向へと進んでいるように見える
「へぇ、少し油断したかもしれませんねぇ~。やっぱり、面白い」
またしてもアクアは、余裕そうに笑う。
指を鳴らすと、また竜巻のように水が舞い上がり、同じ大きさの竜が作られた。
これだと、何回つぶしても意味はなさそう。
元を絶たないといけないのはわかるが、アクアを倒すのは不可能だし、魔力を枯渇させるのはもっと無理。
「最悪、帰せればいいんだよな。でも、アクアを帰す方法…………」
あの戦闘狂を戦闘から帰らせる方法……あるのか?
なら、視点を変えるか。
アクアは馬鹿だけど、管理者のことは大事に思っている。
さっき、そんなこと言っていたしな。
なら、そこをつくことができれば…………。
『兄さん…………』
おっと、城を見ているな、グラース。余程グレールのことが心配らしい。
今、リヒト達がどうなっているのか把握する手立てがない。
グレールと一緒にいるのか、別行動しているのか……。
「カガミヤ!!」
「アルカ?」
アルカとアンジュ達が俺の方へと来る。
────って、危険だぞ!? アクアが俺達を狙ってるんだからこっちに来るなよ!
「ちょうどいいです。このまま全員、食い殺してあげますよぉ!!」
大きな口を開き、水の竜が襲ってきた。
炎の竜も大きな口を開き迎え撃つ。
少しは時間を稼げるが、早く離れてもらわんと困る!
「カガミヤ、水に囲まれたこの場では俺の地魔法は意味が無い。でも、何か出来ないか? 俺も、手伝いたいんだ!」
「……アンジュに抱えられている今のお前に言われてもな」
「うるせぇ!!!」
あ、そこをつっこまれるのは恥ずかしかったんだ。
顔を赤くして、照れてる。そこは素直なんだな。
「地は確かに水に弱いか。それなら、城に向かってくれないか? グラースがグレールを心配しているし、俺もリヒト達の生存を確認したい」
アルカは自身を抱えてくれているアンジュと目を合わせ確認。頷いてくれて、俺に「行く!」と元気に宣言した。
「なら、任せたぞ」
「わかった!」
っ、後ろ、俺の竜魔法がまた押され始めた。
魔力を込めるけど、勢いが止まらない。
「大丈夫、なのか?」
「こっちは俺達に任せろ、早く行け!!」
「わ、わかった…………」
不安そうにしているけど、今はこう言うしかない。
何も安心出来る要素はないが、任せろ。俺達なら何とかなる、多分。
「逃がしませんよ。私ももう、怒られたくないので!!!」
っ!? 竜魔法の他に、水の竜巻を作り出しただと!?
まずい、アルカ達は今無防備、何も出来ないぞ!!
『水の竜巻を操るイメージしてください』
っ、アビリティ?!
水の竜巻を操るって………あっ、ナチュール山で行ったあれか!!
俺が作り出した水ではなく、近くにある水を自分のモノのように操る。
あれは意識的にできるものだし、魔力はそこまで使わない!
よしっ! 左手を水の竜巻に向け意識――竜巻は止めること出来たけど、逆に炎の竜が一気に押されちまった!!
意識をどっちにも集中って無理だろ!!
──おっ、イルドリ王が瞬時に黒い翼から羽を飛ばし、水の竜を食い止めた。
その一瞬で俺は、水の竜巻を潰し、アルカ達は無事に城へと向かった。
「あー……。まさか、そこまで出来るようになっていたとは思わなかったです……。甘く見すぎましたねぇ」
クスクスと余裕そうに笑うな!
って、あ、あれ? 急に顔を下げた?
「楽しい。ですが、これ以上時間をかけてしまうと、また怒られてしまいます。なので、終わりです。私も、怒られたくないですもん」
下げていた顔を上げる。アクアの藍色の目が、妖しく光る。
やばい、心臓の音がうるさい。
耳鳴りする。これが、あいつの本気?
――――パチンッ
「――――え」
指を鳴らした瞬間水の竜が、俺の炎の竜をつぶした?
首元を噛みちぎり、手で胴体を潰す。一瞬にして、俺の竜が潰された。
「では、今度は貴方が、今の竜と同じ目に合う番ですよ? 覚悟はいいですかぁ~」
水の竜が俺を見る。
今すぐ新たに竜魔法を出すことは可能。でも、簡単に負けるだろう。
イルドリ王も険しい顔を浮かべている。
打つ手がないのか?
「終わりです」
語尾にハートが付きそうな言い方をするんじゃねぇよ!!
あっ、竜魔法が襲ってきた!! くっそ!!
「~~~~|siege flame!!」
――――ガツン!!!
「…………へぇ、まさか、私の竜が、炎の鳥かごに封じ込まれるとは思いませんでした~」
今までとは比べ物にならないほどの大きな炎の鳥かご。
魔力量とかを考えなかったからだろう。
魔力がものすごい勢いで吸い取られるが、食い止められているのならいい。
「さすがだチサト!! 私も頑張ろうではないか!!」
言うと、イルドリ王は上空に舞い上がる。
黒い翼を左右に広げ、腕を組む。何をする気だ?
「アンヘル族は、神に認められた存在。女神の使い人となる我々は、それ相応の力を受け継ぐ。貴様が神に対応できるのか、見せてもらおうか!!」
イルドリ王が言い放つと、右手を上にあげた。
すると、水が風と共に舞い上がり、アクアに襲い掛かる。
手を前に出し止めようとするが、イルドリ王の方が上手なのか、止まらない。
水の竜を操作しようにも、俺が閉じ込めているから無意味。
「無数の人を殺し、自身が楽しむために強力な魔法を振りかざす。それは、私の中で悪となるのだ。神の怒り、受けるといい!!」
風で舞い上がる水の竜巻が、顔を押さえているアクアを襲った。
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