表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

32/644

目標がある方が燃えるよな、めんどいけど

 ん、なんだ。なんか、腹が温かい。というか、くすぐったい、何だろう。

 俺は今、何をしているんだ?


「ん……、あれ…………?」

「あ、目を覚ました!?」


 ……何があったんだっけ。なんで俺、寝ているんだっけ。

 ――――――なんで、リヒトは泣きながら俺を覗き込んでるんだ?


「大丈夫ですか? 痛い所はないですか? 意識はしっかりしておりますか? 頭痛や腹痛などはありませんか?」

「…………ひとまず、近い」


 リヒトの距離感ってバグってるよな。今もめっちゃ顔近づかせてきた。

 俺が少し動いたらぶつかってたぞ、どこがとは言わないが。


 ――――――って、そうか。俺は、負けたんだ。

 あの二人に、管理者を名乗っていた二人に。


 俺は、なんも出来ないまま、負けたのか。

 …………普通にはずいわ。これが、黒歴史か。


 虚勢だけ張って何も出来ず負ける、はは、消えたい。


 ――――ポタッ


 んっ、頬に冷たいな雫が落ちてきた?

 あーあ、泣いてる、リヒト。そこまで…………?


「…………グスッ」


 はぁ、まったく……。


 リヒトの頬に手を寄せ、親指で涙を拭いてあげる。

 すると、俺が生きていると実感できたらしいリヒトは、俺の手にすり寄ってきた。


 よっぽど心配かけたらしいな、すまん……。


「……今はもう痛くはない。少し眩暈がするが、おそらく血が足りていないだけだ、問題はない」

「それなら、良かった。本当に、良かった…………」


 あー、せっかく拭いたのに、また泣いちゃったよ。

 アルカは安心したようにリヒトの頭を撫でている。


 …………あれ、そういえば俺、なんで体痛くないんだ?


 お腹を触ってみても痛みはない、完全に治ってる。

 傷、深かったと思うんだけど……。


 そう言えば、リヒトは回復魔法を扱えたっけ。


「リヒト、まさかあんなに深かった傷を治してくれたのか?」

「うん。早く治さないと、カガミヤさんが死んじゃうと思って…………。私、本当に怖くて、怖くて…………」


 俺の手を掴んでいるリヒトの手が微かに震えてる。

 大丈夫だって、本当に。

 

「よっこいしょ」


 泣いているリヒトを少しだけ下がらせて、体を起こした。


 二人はまだ休んでいた方がいいと言ってくるが、いつまでも大の大人が自分より年下のアルカの膝を枕にし続けるのも……なんか、駄目な気がする。


「今回は本当にありがと。頭に血が上って冷静な判断が出来ていなかった」


 その場で座り直し、アルカとリヒトの頭をぽんぽんと優しく撫でた。


「俺はまだ、魔法に慣れていない弱者。だから、これからのダンジョン攻略で魔法に慣れ、今とは見違えるくらいに強くなってやる。そんで、管理者に必ず下剋上をしてやる」


 二人は驚いた顔を浮かべたが、すぐに満面の笑顔になり、大きく頷いた。


「おう!! 俺もお前に負けないくらい強くなるぞ!! 絶対にな!!」

「若い奴は伸びしろが無限だから怖いんだよなぁ。まぁ、俺も負ける気はないけど」


 俺はよく、やる気がないとか、気だるそうに見えるとか色々言われてきたが、そんな事はない。


 こう見えて、誰よりも負けず嫌いだ。だから、このままは絶対に嫌だ。

 必ず魔法に慣れ、スキルを使いこなし、あの二人にリベンジしてやるよ。


「必ず、アマリア以外の管理者全てをぶん殴り、あんなイカレタ制度を廃止してやる」


 アマリアは……………………保留で。


 ※


 コツン…………コツン…………と。

 二人分の足音が響き渡る通路。光源がなく、先を見通せない暗闇。

 後ろを振り向いても同じ景色。闇が広がり、何も見えない。


 そんな道を歩いているのは先程まで、知里と殺りあってた管理者の二人、クロとアクアだった。


「まったく、時間の無駄をしたよ」

「ごめんなさい。つい血が騒いでしまったのですよぉ~」

「これで二回目じゃん。もう同じことしないで」

「それはどうでしょうかぁ~」

「はぁ、最低でもうちと一緒の時はやめて。あんたを止められる力はうちに無い」


 ため息を吐き、クロはアクアを置いて行くような勢いで歩みを進める。


 アクアも置いて行かれないように歩みを速めると、先ほどまで何も見えなかった前方に、一つの光が現れた。


 近づくと、現れたのは両開きの観音扉。

 クロは、闇から現れた扉を迷いなく開けた。


 中は明るく、まるで雲の上にでもいるような感覚になるほどに静かで、澄んでいる空間が広がっていた。


 地面、壁、天井。全てが青空。

 二人は歩みを進め、部屋の中央に向かう。

 そこには六つの椅子と、長方形のテーブルが置かれていた。


「あ、来た」

「お待たせしました」


 ”来た”と呟いたのは、ギルドを担当しているアマリア。今も少年の姿をしているが、服装は違う。


 大きな白衣を纏っていたアマリアは、アクアやクロと同じローブを羽織っている。フードをかぶっているため口元と、隙間から覗く水色の髪しか見えない。


「アクアが余計なことをしたから遅れたじゃん」

「だからごめんと、何度も謝っているじゃないですかぁ~。何度も言うなんて酷いですぅ~」

「悪い事をしたのはどっち」

「…………私ですけど」


 二人の会話が止まると、それと同時に老人のようなしわがれた声が青空が広がる空間に響き渡った。


「では、これから会議を始める」


 今の言葉だけで、緩かった空間に緊張が走る。

 文句を言い合っていた二人も口を閉ざし、自身の席へと座った。


 タイミングを見計らったように、一人の女性が手を上げる。


「会議が始まったのなら、まず私から良いかしら」

「では、まずフェアズ。報告を」


 フェアズと呼ばれた女性は、ローブから出している細く白い手を顎に持っていき、フードから見える赤い唇を横へ引き延ばす。


 笑みを浮かべながら、アマリアに質問をぶつけた。


「報告というより、質問よ。アマリア、何か隠していることはないかしら」


 質問されたアマリアは特に反応を見せず、数秒の間を置き答えた。


「その質問の意図がわからないな」

「そうね……。貴方は今までの行動で私達からの信頼を失っているわ。だから、どのような些細なことでも報告は義務。わかっているわよね?」


 今回の問いかけには、アマリアは頷きも首を振ることもしない。


「ふーん。答えられないのかしら?」

「答える意味を見出せないから答えないだけ」

「そう」


 肩を落とし、やれやれと言った感じで二人の会話は終わる。

 次に手を挙げたのは、アマリアの隣に座っていた一人。


「私、一つ」

「フィルムか。良かろう」


 高く、鈴の音のような声でフィルムと呼ばれた女性がクロに質問した。


「クロ、何あった。不機嫌」

「別に。ただ、またしてもアクアが興奮しただけ」


 クロの言葉に、他の人が全員、一斉にアクアを見る。

 そんな視線を受けてもなお、アクアは焦らず肩を竦め、口を開いた。


「面白い人がいましてね。まだまだ伸びしろがあり、期待出来る存在だったため殺しはしませんでした」

「ほぅ。貴様を興奮させるなど、あの時以来ではないか……?」

「そうです。あの、ダンジョンに封印されている男。カケル=ルーナ以来の胸の高鳴りでした。本当はもっと殺り合いたかったのですが、相手がまだ自身の魔法に慣れていない様子でしたので、我慢したんですよ? 褒めて頂きたいですぅ」


 頬を染め、興奮を隠しもせず語る。


 アマリアは今の言葉を耳にし、何か思い出すような仕草を見せるが、発言するより先に話が進んでしまった。


「その者は、違反を犯す気は無いか」

「今のところはなさそうでしたよ。ただ、我々管理者を倒すとは言っていましたが」


 老人からの質問に簡単にアクアは答えたが、最後の言葉に、静かな空間がザワザワと騒がしくなる。


 だが、すぐさま低く落ち着いた声がざわめきを止めた。


「落ち着け。アクアよ、その者は今、どこにいる」

「移動をしていなければセーラ村に」

「なら、アマリア。注意だけでも良い、警戒態勢でいろ」


 老人の声に、アマリアは何も言わず小さく頷く。

 フェアズはじぃっとアマリアを見るが、何も言わない。


「では、今後。また何かあれば直ぐに報告するように。今回はここで解散だ」


 今の言葉により、全員がお互いに顔を見合い、その場から姿を消した。

ここまで読んで下さりありがとうございます!

出来れば次回も読んでいただけると嬉しいです!


出来れば☆やブクマなどを頂けるとモチベにつながります。もし、少しでも面白いと思ってくださったらぜひ、御気軽にポチッとして頂けると嬉しいです!


よろしくお願いします(*・ω・)*_ _)ペコリ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ