胸糞わりぃなぁ……
夜は、やっぱり人がいない。
元々深海だから暗さは特に変わらないけど、人がいないと心無しが薄気味悪く感じるな。
「この気配って、裏路地か?」
「そうだね。急ごうか」
走り、店の裏に。
街灯とかがないから、心無しとかではなく普通に暗くて不気味。
足元や、気配などを意識しながら走っているが、特に気になるものはない。
物音も特に聞こえないし、魔力も感じない。
「――――止まれ」
俺とクラウド以外の足音が微かに聞こえる。
アマリアは飛んでいるから、足音なんて絶対にしないし。
俺達が止まっても、耳をすませば聞こえる。
人のあしおっ――……
『しっかりしてください! ソフィアさん!!』
今の叫び声!
「行くぞ!!」
「うん」
今の叫び声、アンキだ。暗闇の奥に、アンキとソフィアがいる。
言葉的に、ソフィアが危険な目に合っている。
くっそ、リヒトも連れて来るべきだったか?
軽傷だといいんだが、あそこまで取り乱しているということは、絶対に命に関わるだろう。
全力で走ると、前方に人影が二人、見えた。
――――いや、二人、じゃない。
三人、見える。
やっと肉眼で確認出来る所まで近付けた。
だが、そこで足が止まる。
「――――おやぁ? お久しぶりですね~。元気そうで何よりですよぉ~、知里」
「やっぱり、お前だったのかよ、アクア」
アクアが赤く染まった手を一舐めし、にっこりと笑いかけてきた。
黒いローブにも、よく見ると返り血が付いている。
――――いや、返り血だけじゃない。
「お前、結構な傷じゃねぇか?」
「そうなんですよぉ~、すごく楽しかったですよぉ~? でも、もう終わりですかねぇ。残念」
眉を下げ、本当に残念そうに腕を下げるアクアの目線の先を辿ると――――っ!
「ソフィア!?」
ソフィアが、アンキに抱きしめられ倒れている。
見たところ、意識がない。気を失ってんのか?
しかも、酷い傷だ。
二人の下に血だまりが出来ている。
あれは、ソフィアだけの血じゃない。
…………アンキの右腕が、無くなってる。
暗かったのと、アクアに気を取られていたからすぐ認識できなかったが、酷い惨状となっていた。
壁や床には血が飛び散り、ここだけ雨が降ったのかと思う程に濡れている。
腕も一本転がり、胸糞わりぃ。胃にある物がせり上がってくる。
「さすがに、残酷な事をしたね、アクア。ここまで散らかすなんて」
「アマリアじゃないですかぁ〜。これは、命令なんですぅ~。ソフィアを仲間に勧誘。無理なら、殺せと」
フフッと笑いながら、アクアが近づいて来る。
「これは、アマリアもいけないんですよ? 管理者が徐々に人数を減らし、この世界の管理が難しくなっているんですぅ~。もう、働きっぱなしで大変ですよぉ~」
やれやれと言うように、アクアが肩を落とし、二人の隣を通り抜ける。
あともう少しで、俺達の目の前まで来る。
「でも、それだったら補充すればいいという話になったんですぅ~。メンバーを集めれば、人数が集まれば、個々の負担は減りますもんねぇ~」
気配が、わからない。
空気が、揺れない。
足音が、聞こえない。
確実に近付いて来ているのに。
確実に目の前まで迫ってきているのに。
確実に、俺達の近くまで来ているのに、そう、感じない。
――――ピタッ
「でも、やっぱり、知里。貴方が一番、悪いです」
視界が、アクアの藍色の瞳で塞がれる。
何も見えない、何も感じない。
まるで、水の中に入れられた感覚だ。
「――――おもしれぇ!!」
歓喜の、声?
――――ザシュッ
視界に、光の刃。
アクアは後ろに跳び回避、不機嫌むき出しの表情で俺の隣を見た。
俺も視線を辿ると、そこには悪魔のような笑みを浮かべているクラウドの姿。
さっきの光の刃は、クラウドが出したものか。
「誰ですかぁ~? 貴方の事、すらっ――――」
アクアが話している途中、彼の背後あら拳。
体を捻り回避、避けた勢いのまま振り向くと、そこには息の荒いソフィアが舌打ちを零し立っていた。
「おやぁ。まだ動けたんですね!? 力もまだ込められるみたいで良かったですぅ~」
「嬉しそうに言ってんじゃねぇよ、サイコ野郎」
ソフィアとアクアが睨んでいると、クラウドが俺の前に出る。
「なぁ、俺様と勝負してくれよ。お前、面白い」
下唇を舐め、クラウドが光の刃を握りながらアクアの睨む。
おいおい、辞めろって、殺されるぞ!
「…………貴方は、つまらないです」
「はっ――――!?」
――――はぃ?
「クラウド!?」
見えない何かが、クラウドの身体を切り刻む。
い、いや、切り刻んだわけじゃねぇけど。
「ぐっ!!」
「クラウド、大丈夫か?」
近付くと、結構酷い。
体の至る所が深く切られている。
「おやぁ? これで殺せたと思ったのですが、残念ですねぇ」
「くっそ…………」
今は動くなと言い、後ろに下がらせる。
アクアの後ろには――――あ、あれ? ソフィアはどこに?
「今う具に動けるか?」
「うおっぷ!? お、おう…………」
け、気配無く後ろに立つな!!
…………って、やっぱり、こいつも酷い怪我だ。
「ソフィア、大丈夫なのか?」
「問題ない。このくらい、日常茶飯事だ」
普通に話しているが、今も血は止まっていない。
足は深く切られているのか右足に力が入っていないし、腕からも血が流れている。
額も深く切っているみたいだし、重症じゃねぇかよ。
「まだまだ元気そうですねぇ~、良かったです。まだ、勧誘が出来ますねぇ~」
「何度勧誘されても、俺の答えは変わらねぇよ。管理者と言う、よくわからんもんに入る気はさらさらねぇ」
「それなら死ぬだけですが、それでもいいのですかぁ~」
「元々、どんな殺され方をされても無理はない人生を送ってきたんだ。問題、っ、ねぇよ」
息が、荒い。
本当に死んじまうぞ。
「それは残念です。では、さようなら、しましょうか」
獣の手は、水が渦を巻くように無くなり、人間の手に戻る。
あれも魔法だったのか。
右手を前に出し、魔法を放とうとする。
させるかよ!!
魔導書を出し魔法を放とうとするが、なぜかソフィアが焦ったように俺に飛び掛かってきた!?
「ばかやろう!! もう魔法は放たれている!!」
「――――え」
だって、魔法、唱えてっ――……
――――ザザザザザザザッ
「────地面が、刃が通ったみたいに、削られた、だと?」
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