敵に情けをかけてもらった気分で腹立たしいのだが?
「――――えっ」
何が、起きた?
「ソフィアさん!!」
アンキの焦った声がフィールドに響くのと同時に、赤い血が地面に落ちる。
それはもちろん、俺のではない。
俺の背後に背負っていた水の刃が勝手に動き、ソフィアの腕に突き刺さったのだ。
今は、ソフィアが後ろに下がり、腕を支えている。
色々わからんことが多い。
ひとまず、クラウドは、どうした?
周りを見ると、唖然とソフィアを見ている姿。
見ている限り、傷はない。手には短い光の刃が作られていた。
「…………これは、おめぇの意思とは反する動きをする魔法、なのか?」
「い、いや、わからない」
ソフィアが腕を支えながら問いかけてきたが、最近使い始めた水魔法、わかるわけがない。
返答を聞くと、ソフィアは「そうか」と、傷ついた腕から手を放し、スクッと立ち直す。
「大丈夫なんすか? ソフィアさん」
「問題ない。問題にすら、なっていない」
水の刃を無理やり引き抜くと、血がしたたり落ちる。
だが、力を込めたのと同時に止まった。
まさか、筋肉で止血した、のか?
え、そんな事、普通出来るのか?
「…………今は、期待できないな」
は、はぃ?
俺を見て、なに残念そうにしてやがる。
「おい、馬鹿にしてんのか?」
「馬鹿にはしていない。ただ、今のお前は弱すぎる。本気を出す価値すらない」
――――――――カチン
ほう、へぇ、ふーん。
チート魔力を持って?
二つの属性を持って?
精霊を持っている俺が、弱い?
強制的とはいえ、この世界から恐れられている管理者を二人も倒してる俺が、本気を出す価値すらないって?
「……………………」
――――――――ブワッ!!
「っ、な、なんすか、あれ」
アンキも、いつもの笑みを消し、驚愕の表情を浮かべている。
それも、そのはず。
「なら、本気、出させてやるよ。俺の、本気でな」
片手に水属性魔法、lama・water。
もう片方には、炎属性魔法を放つ準備として赤く光っている。
あんなことを言われちゃー、仕方がねぇわ。
確かに? 俺も? 本気を出してはいなかったしぃい?
別に、今までのが全力でもなかったしぃい?
苦手を克服できたらいいなとか思っていただけだしぃい?
「ふふふふっ、いいぜ、いいぜ。やろうじゃねぇか? なぁ、元殺し屋君よぉ~」
「…………わかった。さすがに言い過ぎたらしい、俺も少し本気出そう」
言いながら、ソフィアは拳を握り、構えを取る。
魔法は、出さないらしい、
いや、もう魔法は発動しているのかもしれない。
絶対に、油断してはいけない。
「やれやれ~。こうなってしまったら、もうどちらも止まらないっすねぇ~。それで、俺達はどうするっすかぁ――――あ、あれ?」
頭の後ろで手を組み、クラウドを確認したアンキ。
まぁ、言葉を失うよな。
クラウドの視線、めっちゃ感じる。
俺の炎魔法を楽しみにしてやがるな。
まぁ、今はそっちはどうでもいい。
ソフィアが動きだっ――――っ!
「ちっ――――heathaze」
自分の幻覚を作り、視線を誘導。
視界から消えたソフィアは、俺の幻覚に一瞬眩んだみたいだが、すぐ横に避けた俺を追尾して来た。
拳は眼前、水の刀で受け止める。
――――ガツン
「ぐっ!」
「この程度か、おめぇも本気は」
「~~~~んな訳ねぇだろうが、糞が!!!!」
無理やり押し返そうとするが、ソフィアは動かない。
それなら!
「turboflame!」
一本の炎の竜巻をソフィアの足元に出す。
後ろに下がり回避したみたいだが、次の動き出しが早い。
複数の竜巻を放ち、動きを制限しようとするも、ソフィアはすぐに対応。
竜巻の隙間を縫い、俺へと迫る。
「なら、これならどうだよ! |Mitrailleuse flame」
竜巻を消し、炎のガトリング砲を放つ。
だが、それすらソフィアは体を捻ったり、横に跳んだりと簡単に回避する。
やっぱり、ソフィアを倒すには飛び魔法では駄目らしい。
ちっ、クッソ。
「お前は、強力な魔法に胡坐をかき、無駄が多い使い方をしている」
「っ、無駄?」
それは、グレールが教えてくれた、魔力が広がっているって事か?
でも、それはもう意識しているはず、無駄に飛んでいないだろ。
「――――っ?!」
「…………宝の持ち腐れだな。そんな魔力、俺が欲しいものだ」
首を、掴まれた。
まずい、このままこいつが俺を殺す事を厭わなければ、一瞬で骨を折られ殺される。
下から見上げて来るソフィアの深緑色の瞳から目を離せない。
離せば、殺される。
グググッと、体を持ち上げられる。
やばい、苦しい。
足をばたつかせても意味はない、このままじゃ……。
リヒトやアルカの声が微かに聞こえるが、なんて言っているのかわからない。
「大きいのを放てば強力という訳ではない。弱い魔法でも、使い方一つで相手を抑え込むことが可能だ」
ソフィアが、そんなことを言ってくる。
今、そんなことを言われても…………。
「魔力がない俺でも、お前に食らいつくことは可能だ。お前は、もっと魔法一つ一つを極めろ。そうすれば、もっと強くなる」
「――――え、らそうな、こと、いっ、てんじゃ、ねぇ…………よ!!!」
思いっきり足を蹴り上げると、冷静にソフィアが俺の首から手を放した。
地面に落とされたが、まぁ、いい。
息を吸えるって幸せだ。
「はぁ、はぁ…………」
「……俺が、お前を育ててやろうか」
「…………はぁ、っ、え、はい?」
今、こいつ、なんつった?
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