管理者との戦闘で目が慣れ過ぎたわ
魔道具と判断された俺の武器は、没収された。
そう言えば、精霊は使ったら……まぁ、駄目だろうな。
使っても良かったら、有利すぎるもんな。
――――ピィィィイイイイ
あ、前の試合が終わったらしい。
「次の方、準備をお願いします!」
フィールドの設備を整えながら呼ばれる。
俺達が相手にする奴らの名前は確か――……。
『トーナメント第一回戦目、最後を飾るのは、今回初参加であるチサト、クラウドペア。戦うは、コーザ、ジャジャクペア』
あぁ、そうだそうだ。
ザコと弱者だったわ。
…………あ、間違えた。
コーザとジャジャクペアだった。
「頑張ってくださいカガミヤさん!」
「負けるなよ、カガミヤ!! クラウドも、油断はするな!」
二人からエールを貰い、クラウドは欠伸を零しながらフィールに向かう。
俺も、一応頷きクラウドについて行く。
フィールドに行くと、なんか、山賊っぽい二人が嫌な顔を浮かべ立っていた。
…………なんか、何もしなくても勝てそう。
――――ピィィィイイイイイ!!!
おっ、始まった。
「一瞬で終わらせてやるよぉぉおお!!」
二人が一斉に突っ込んできた。
…………よわっ。
遅いし、余裕で魔力をためる事が出来る。
クラウドは――――動く気ゼロらしい。
俺に任せんな!!!
「しねぇぇええ!!」
手に持っていた鎌や槍を振り上げてきた。
はいはい、これで終わらせてやるよ。
「acqua」
二人の顔面に水属性の基本魔法を放ち、見事命中。
息が出来なくなり、もがき始めた。
「炎魔法じゃねぇのかよ」
「一回戦目で、大きな魔法はあまり使いたくねぇんだよ。これからのために」
出来るだけ皆が知っている基本魔法だけで勝ち進めたい。
無駄に情報を渡す義理もないしな。
そんな事を話していると、二人は限界というように口で”まいった”と言ってくる。
もう、酸素が足りなくて気絶するかな。
――――パチン
指を鳴らし魔法を消す。
すると、二人は酸欠で倒れ、動かなくなった。
勝負あり、余裕だな。
流石、名前は艇を表すとはよく言ったものだ。
「勝者、チサト、クラウドペア!!」
審判が言うと、歓声が沸き上がる。
こんな雑魚に勝ったところで、何も嬉しくないってぇの。
「はぁ、早くここから居なくなろう」
「おう」
次の相手は、一回戦目を勝ち抜いた奴のはず。
もっと、手応えのある奴が来ることを祈るわ。
・
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「今の、見たっすか、ソフィアさん」
「あぁ」
フィールドから離れた位置に建っている建物の影で、二人の青年が隠れるように知里達の試合を観戦していた。
一人は赤い短髪に、藍利休色の瞳。
ぶかぶかな黒い羽織を胸元辺りで紐で結び、落ちないように固定。
中は、茶色の軍隊が着ていそうな服を身につけていた。
名前は、アンキ。
口元には笑みを浮かべ、隣に立っている人物に声をかけていた。
一言だけ返した人物は、肩くらいの銀髪に、深緑色の瞳。
その瞳が見えているのは、左目だけ。
右は、前髪で隠れており、見る事が出来ない。
深碧色の羽織を身にまとい、中はシンプルな白いワイシャツに黒いズボン。
「決勝まで来るっすかね〜」
「知らん」
「まったまた~。ソフィアさん程の実力者が『知らん』で終わるわけがないでしょう」
ソフィアの真似をしながらケラケラと笑うアンキ。
そんな彼を横目にソフィアは腕を組み、表情一つ変えず歩き出した。
「行くぞ」
「はいはいっす〜」
その場から去る前、ソフィアは最後に、頭をガシガシと掻いている知里を見た。
「――――勿体ない」
それだけを言い残し、二人はその場から姿を消した。
※
「楽勝だったね、知里」
「余裕」
管理者を相手にしてきたからなのか、相手の動きがスローに見えた。
いや、実際に遅かったんだろうな。
魔導書を使わなくても、魔力を高める事が出来ていたし。
「次は二回戦目だね。今日でどこまでするんだろう」
「確かになぁ。こういうのって、数日に分けて行うイメージが強い」
全体のスケジュールとか聞いてねぇし、今日で全部やる可能性もあるのか……?
いや、そんな馬鹿な………。
「あ、あれじゃねぇか?」
アルカが指さした先には、大きなホワイトボード。
二回戦目のトーナメント表がたった今張られたらしい。
二回戦目は今日でやるらしいな。
魔力の温存も出来ているし、問題なし。
「え、えっと。次の相手は、ミカンとリンゴペアですね」
「…………名前、適当すぎじゃね?」
なに、果実? 美味しそうな名前だな。
女……いや、女の参加は禁止だったわ。
男でその名前? なんか、変……これは偏見か。
「それじゃ、また離れた所で観戦でもする?」
「そうだな。さすがに二回戦目となると、少しは強いだろう。見ておきたい」
「わかった。なら、人酔いしない程度で見ようか」
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