そういや、こんなだったなぁ。油断したわ
「ここって、美味しいんですかね」
「食ったことないから知らん」
「ですよね」
目の前には、ファンシーな建物。
行く所がなくどうしようと話になり、リヒトが「カフェで少し休憩しませんか」と提案。
休めるしと思いカフェに来ちまったんだが、周りを見ると、女、女、女。
「……んじゃ、俺はこれで」
「すいませーん、二人でお願いします~」
くそっ、腕を掴まれちまった。
しかも店員に案内された。もう、逃げられねぇじゃねぇかよ。
こんなファンシーな……いや、どっピンクじゃないだけまだましか。
ここも、オスクリタ海底のイメージを崩さないように、海をイメージした作りになっているみたいで助かった。
デザインは貝やヒトデを使って可愛く飾られ、ロゴもファンシーな雰囲気を崩さないように作られている。
女性向けと言えば、そうなんだが、男性も入れなくはない。
俺より若い奴とかなら簡単に入れるだろうな、高校生とか。
リヒトに手を繋がれ中に入ると、水族館的な作りになっていてびっくり。
小さな水槽には、小魚が優雅に泳ぎ。
壁には海の生物達のぬいぐるみ、天井や壁は青色で波を描いでいるみたい。
んでもって、まぁ、そうだよなぁ、うん。
女の比率が多い。
つーか、男、いるか?
「こちらをどうぞ」
案内された先は角の方、助かった。
二人でテーブルを囲い、向かい合わせに座る。
壁側にメニュー表。
店員が水を置き、いなくなった。
「何にしますか、カガミヤさん!!」
「お前が先に決めろ」
「はーい!!」
目を輝かせ、メニュー表を見るリヒト。
こう見ると、ただの子供だなぁ。
そういや、リヒトはまだ未成年だったっけ。
十七…………だった気がする。
アルカが十九。
まだまだ子供。なのに、俺はこんな子供に何回も命を救われているのか。
こんな、スイーツを目の前にして目を輝かせ、無邪気に笑っている女の子に、何度も。
「…………あ、あの、カガミヤさん」
「ん? どうした?」
「いえ、あの、し、視線が…………」
顔があけぇな、どした?
……あぁ、俺、無意識にリヒトをガン見しちまっていたか。
「わりぃわりぃ。ほれ、早く決めろ」
「はい…………」
目を逸らすと、またリヒトは視線をメニュー表に戻す。
「うーん」と、本気で悩んでんなぁ。
…………なにで悩んでるんだ?
「おい」
「あっ、はい。すいません、すぐに決めます」
「いや、それはいいんだが」
「??」
あー、なんて言えばいいんだ?
んー…………。
「えぇっと、なにで悩んでいるんだ?」
「あ、この二つで悩んでて…………」
壁にかけられているメニュー表を指さした。
見てみると、イチゴのパフェとチョコのパフェの絵。
イチゴの方は甘そうだな。
だが、チョコの方はビターで甘さ控えめと書かれている。
「なら、俺がチョコの方頼むわ」
「え、でも、他にも色々ありますよ?」
「いや、別にこれといって食いて―もんとかねぇし、おめぇに一口やるよ」
呼び出しボタンを押しながら言うと、リヒトが目を丸くする。
なんか、もう慣れたわ、その表情。
店員にパフェを頼んでから数分後、二つのパフェがテーブルに置かれる。
「はわぁぁぁあ!!」
「うっ!」
リヒトよ、目を輝かせているところ悪いが、その、甘そうだな。
グラスにいっぱいの生クリームと、リヒトの方はイチゴが華のように鮮やかに盛り付けされ、最後にはイチゴシロップがかかっている。
俺のチョコは…………何が甘さ控えめだ此畜生。
いや、写真をしっかり見なかった俺が悪い。
まさか、ここまで生クリームたっぷりだとは思わなかった。
それに、上にガトーショコラが乗っているのね。
チョコシロップもかかっているのね。
あー、うん。
甘さ控えめなんだよな? なんだ、よな?
「食べないんですか?」
「あー、タベルヨ」
リヒトに差し出されたスプーンを受け取るが…………あ。
「おい」
「はい」
「一口――いや、何口でもいい。満足するまで食え」
「え、いいんですか?」
目を輝かせているなぁ。
そんなに食べたかったのか。
「あぁ、構わん」
「ありがとうございます!」
リヒトがチョコパフェを一口すくい、食べる。
「ん~~~~~!! 美味しいですよ! 確かに甘さ控えめかもしれません!」
「それならよかったわ」
お、もういいらしい。満足したのか?
自分の方を食べすすめた。
俺も、食べるかぁ。
い、いやぁ、甘いものはいつぶりだろうか。
…………胸やけしそうだな、歳を舐めるなよ。
――――パクッ
「…………ん"っ」
「え、大丈夫ですか!?」
「大丈夫だ…………」
…………胃もたれ、確定…………はぁ。
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