しっかり休みたいのに結局休めないじゃないか。心を抉られたよ、悲しい
外は人が賑わっているが、まぁ、問題ない程度。
リヒトはまだ困惑しているが、俺の手を払おうとはしない。
「あ、あの」
「なんだ?」
「どうしたんですか? カガミヤさんらしくないのですが…………」
「まぁ、らしくはないな」
自覚ありだから安心しろ。
まさか、通帳よりリヒトの機嫌を直すために行動するとか。
あぁ、俺の癒しの時間。通帳を眺める時間が、無くなった。
でも、なんとなく気になるし、こればっかりは仕方がない。
今後、また戦闘パートに入ったらゆっくりなんて出来ないだろうしな。
しかたがないから、お前に付き合ってやるよ。
連れ出したのは、俺だけどな。
「ところでリヒト。お前は確か、買い物とかは好きだよな? ロゼ姫と一緒に買い物とかしていたよな?」
「好き、ですが、本当にどうしたんですか?」
あ、警戒している。
なんか、体をこわばらせているんだけど。
「ほ、本当に、あの、カガミヤさんですか? まさか、誰かと入れ替わっていたりしませんか?」
「なんでそこまで俺は疑われないといけないんだ。さすがに悲しいぞ」
悲しい、本当に悲しいぞ。
今までの行いがそう思わせてしまっているんだろうけど、悲しいなぁ。
……………まだ、困惑しているのか、俺と話したくないのか。
リヒトは何も言わない。これ、嫌がられている、のか?
「まさか、俺なんかより、ロゼ姫の方がよかっ――たに決まってるかぁ」
何で俺はこいつと共に出てきてしまったのか。
あ、俺が大丈夫なのをわからせるためだったわ。
「い、いえ。あの、嬉しい、です。嬉しいのですが、その…………」
「あ? 嬉しいんだったらいいだろうが、何を難しく考えてやがる」
「いえ、何でもないです……」
「えへへ」って、なんか、嬉しそう。
嘘ではなく、気を使っているわけでもなく。
本当に、嬉しそうに頬を染めて笑ってやがる。
……………………。
「帰るか」
「嫌です嫌です!! お買い物しましょうよ!!!」
ローブを引っ張られた。
くっそ、結構力強い。アマリアに鍛えられていたもんな。
良かったな、ちゃんと成果が出ているらしいぞ。
「はぁ、わぁーったつーの。そんで、どこか行きたい所とかあるか?」
「行きたい所、ですか? カガミヤさんはありますか?」
え、お、俺?
「いや、特には無い。お前が行きたい所があればと思ったんだが、ない感じか?」
「あ、あります! あります!!」
なんだ、あるんじゃねぇか。
それを先に言えよ。
「どこだ?」
「え、えーっと、えっと…………あの…………えっと…………」
?????
え、行きたい所があったんじゃないのか? なんで悩んでいるの?
「店の名前がわからない感じか? それなら、何を売っているかだけでも言ってみろ」
「いや、そういう訳ではないんですけど…………」
?????
リヒトが何を考えているのかわからない。
行きたい所はあるが、俺には言いにくいのか?
別に、俺はどこでもいいんだが。
色々耐性はついているし、簡単な事ではひかないぞ。
「えっと、あの……」
あー、これは…………。
「……………………行きたい所、ないんだろう」
「うっ…………」
はぁぁぁ、やっぱりか。
行きたい所、特にないみたいだな。
というか、思いつかないと言った感じか。
それなら行きたい所があるとか言うなよ、さっきまでの時間の無駄じゃねぇか。
「はぁ……。おい」
「うっ、か、帰るんですか?」
「ん? いや、行きたい所がないのなら、適当に歩くかと思ってな。ウインドウショッピングって知っているか?」
ショッピングモールとかで、よく同僚の彼女や女社員が目的もなく歩いていたなぁ。
荷物持ちとして駆り出された時は、殺意しかわかなかった。
対価はしっかりともらったけどな。
「え、は、はい」
「そんな感じで、適当にオスクリタ海底を回るぞ。武器屋とか防具屋とか。何かいいもんがあれば見てみよう」
オスクリタ海底に何があるのかわからんし、確かに行きたい所と聞かれても困るかぁ。
普通に服屋とか食べ物とかでも良かったが、まぁいい。
こんな感じで、適当に歩く。
…………?
歩みを進めるけど、何故かリヒトが付いてこない。
「おい、なにしてやがる。行かねぇのか? 帰りたいのか?」
「い、いえ!! 帰りません! 遊びましょう!!」
おっと、腕に抱き着いて来た。
…………手を繋ぐ理由、あるか?
ここは人がいないから別に俺、ふらついていないし大丈夫なんだけど……。
「行きましょう!!」
「お、おう…………」
…………めっちゃ、楽しそうで嬉しそう。
まぁ、いいか。
楽しんでくれているのなら。
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「まったく、女心がわかっていなさすぎよ、チサトさん」
「確かにね。今のリヒトは結構わかりやすかったのに、多分あれ、わかってないよ」
なんか、アルカの話を聞いたら今のリヒトと知里が気になってついついここまで来てしまった。
「アルカ様の話を聞いた後だと、リヒト様の反応も頷けますね」
「そうね。お金にしか興味がなかったにも関わらず、今は通帳よりリヒトさんの機嫌を優先してお買い物。どのような心境の変化でしょうか」
二人ともウキウキしているなぁ。
グレールとか興味無いと思っていたけど、他人の恋愛とか気になるんだ。
「めんどくせぇ…………」
「付き合わせて悪いね、クラウド。知里の弱点をゲット出来るチャンスだし、我慢してよ」
クラウドを一人にするわけにもいかないし、知里の弱点をゲットできるチャンスだよと言って無理やりついて来てもらった。
弱点をゲット出来れば、好きな時に炎魔法を見せてくれるかもよ?
と、言ったら簡単について来た。
皇子がこんなにチョロくていいのかな。
さて、知里はどんなデートをするのかな。
ロゼやグレールじゃないけど、ちょっと、楽しみだよね。
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