言葉に出来ないけど不愉快という気持ちはなんとなくわかるわ
あの場にいた全員で城の中に入ったはいいが、オスクリタ海底の混乱はまだ微かに続いていた。
ロゼ姫が王妃に事情を説明し、問題はない事を伝えているらしいが、それでもすぐには元通りにはならん。
だが、これも時間の問題だろう。
今まで、アマリアとフェアズの襲撃や、フィルムの来訪という事態があったが、特に問題はなかった。
気にする必要は無い。
俺達は別にやることがある。
今は、いつもの部屋にロゼ姫を抜いたいつものメンバーと、アンヘル族の三人。
リトス達はどうしているのか聞いてみたが、別の部屋で長と共に待機してもらっていると聞いた。
絶対に部屋から出るなと言い聞かせているらしいし、警備も付けているみたいだから問題はないだろう。
俺とアルカ、クラウドがベットで横並び、グレールとアルカは立ちっぱなしで、リヒトは椅子に座っている。
アマリアと他二人のアンヘル族は、空中待機。
「そんじゃ、改めて。お前の言っていたおっさんって誰の事だ?」
「わからん」
「……………………はぁぁぁぁぁあ」
もう、俺は疲れた。
今すぐ俺に癒し|《通帳》をくれ、気持ちを落ち着かせるから。
項垂れていると、アマリアが口を開いてくれた。
「多分、そのおっさん、クロヌだと思うよ」
「っ、え、クロヌって、管理者のか?」
「うん」
あっ、だからさっき、アマリアはあんなに取り乱していたのか。
もう、繋がりはないとはいえ、クロヌというおっさんがどんな奴なのかは頭に刻まれているだろう。
「クロヌって奴、なんでクラウドの元に姿を現したんだ」
「知らん」
「お前には聞いてねぇから安心しろや」
クラウドが知らねぇのはもうわかってんだよ。
クロヌの事をおっさんと言っている時点でな。
アマリアは顎に手を当て、眉間に深い皺を刻み記憶をたどってくれている。
だが、わからなかったらしい、首を横に振った。
「クロヌの考える事って、僕にも、他の管理者にもわからないんだ」
「だが、管理者でアマリアは一応頭脳派だったんだろ? なんか、話し合いとかしていなかったのか?」
「何回も言っていると思うけど、僕はフェアズとアクア以外の管理者とは最低限の付き合いしかしてこなかったんだよ。これで察して」
へいへい、スンマセンシター。
………はぁ、くっそが。
クロヌという新たな管理者が動き出しやがったってことだろう、これ。
マジで息付く暇がねぇじゃねぇかよ、俺の休日は消えた。
「…………?」
待てよ、ちょっと、変だな。
アマリアの奴、今までウズルイフに対してだったとしても、あそこまで取り乱したことはなかった。
なんで、あんなに動揺を見せたんだ?
絶対に、何かあるだろう。何を隠してやがる。
「…………なに? 聞きたい事があるんなら言ってみなよ」
「クロヌって人物、知っていることがあるのなら教えろ」
「あー、僕が何かを隠しているって思っているのか、なるほどね」
「んー、そうだなぁ……」と、腕を組み考え込んじまった。
なんで、そこで頭を悩ませるんだよ。
知っている事だけを話せと言っているだけなのに。
「クロヌは、本当に何を考えているのかわからないんだよ。説明が難しい位には」
「えぇ…………」
それって、どういうことだよ。
「なら、今までどんなことをしてきたんだ?」
「指示出しとか、ウズルイフとチェスとか。そんな感じ」
「…………なんでぇ、アマリアはあんな過呼吸になるくらいにまで怯えたの?」
「それは、知里も何となく察しているんじゃない?」
まぁ……、確かに。言いたい事は、わかる。
見られただけで背筋が凍り、話しただけで体が震え、冷や汗が止まらなくなった。
あれって、確かに説明しろと言われても無理な話。
無理な話ではあるけど、けれども!!
「少しは話せることがあるだろ!?」
「だから、指示出しとか、ウズルイフとチェスをしたりとか」
「それ以外でだっつーの!! 指示以外にも何かあったんじゃないのかよ! 自ら動いてとか…………」
「知らない」
「だからっ――」
「知らないの、本当に。わからないの」
…………なんだ、アマリアの奴。体、震えてねぇか?
「わからない、知らない。だから、これ以上の事は、言えない…………」
顔を俯かせて、自身の身体を抱きしめている。
声も震えてきたし、これ以上はさすがに聞けねぇか。
────これは、本当に知らないのか?
そんなわけない。知っている、だけど、話せないんだ。
話せば、何をされるかわからない。
でも、殺されることは当たり前のように受け入れていたのに、なんでここまで怯えているんだよ。
「カガミヤさん、これ以上はさすがに……」
「あぁ、そうだな。アマリア、これ以上は聞かない、悪かった」
アマリアが小さく頷いた。
心なしか、安心したように見える。
これは、今のアマリアの心境を覗いてもいいのだろうか。
…………やめておこう。
今覗けば、俺も耐えきれないかもしれない。
アマリアがここまで震えているんだ。ただ事ではないし、アマリアに許可を得るまではやめておこう。
「ひとまず、クラウドの傍に現れたのはクロヌって事で考えようか」
見回して確認してみると、みんな頷いてくれた、良し。
「だが、クロヌと決めつける事はしない。まだ他の可能性があるからな、仮定の話という事を忘れるなよ」
「わかりました」
だが、本当に仮の話だが、指示出しのクロヌが自ら動き出したという事は、管理者も慌て始めているという事か?
残っている管理者は、四人。
アクア、クロ、ウズルイフ、クロヌ。
アマリアは完全にこっち側だし、フェアズは殺された。
フィルムもダンジョンと共に死んだだろう。
三人は確実に管理者はいなくなっている。
今までこんなことはなかったはずだ。
カケルの時でさえ、一人も管理者は欠けることがなかったらしいしな。
逆に、封印されているし、カケル。
つーか、カケルってめちゃくそ強いのに、なんで封印されっ――――俺の場合は、管理者全員をいっぺんに相手している訳じゃねぇからか。
運の問題だな、昔から運はそこまでよくはなかったけど。
「今動いているのがクロヌって事で、仮定するか」
「いや、それはやめよう」
「え、復活したのか? アマリア、大丈夫か? なんでだ?」
「質問、多いね」
いや、つい、ごめん。
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