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実力的に上位でも、コミュニケーション能力が皆無だと意味はない

 体が、ちょっとだけ固まっている。


 気を失ってからどのくらいの時間が経っているのか。

 拘束されてから、どのくらいの時間が経っているのか。


 ……まぁ、いいか。

 拘束は解けたし、体を伸ばしてすっきりするか。


「いきなり拘束してごめんねぇ~。どうしてもお話がしたかったんだぁ~」

「世間話なら付き合わねぇぞ。今までの戦闘で疲労が蓄積されているんだ。今は休暇期間だし、頼むから休ませてくれ」

「癒し魔法、してあげようかぁ~」

「そんなもんいらっ――――出来るのか? というか、魔法?」


 こいつらに魔法という概念があるのか?

 いや、俺が勝手に魔法と思っていなかっただけか?


 だって、魔法唱えていなかったし、除外するだろう。魔力も感じなかったし……。


 自分に言い訳を繰り返していると、アンジェロがニマニマしながら説明してくれた、腹が立つ。


「魔法という概念はないよぉ。僕達(アンヘル族)には、属性とか得意な魔法とか。そんな物はなぁい」

「なら、さっきのはなんだ?」

「これだよぉ〜」


 耳に手を添えたかと思うと、突如光が放たれる。

 光りが薄れた時、見えたのはハープ。アンジェロの手に合わせられた大きさになり、握られた。


「あ、それは、俺が気を失う時に見た……」

「そうだよぉ〜。これはねぇ、僕とねぇさんが受け継いだものなんだ」

「受け継いだ? 誰に?」

「秘密〜」


 人差し指を口元に添え、秘密にされた。

 なんだこいつ、マジで腹が立つ。


 でも、下手に動けば、また眠らされる。

 はぁ、ふざけるなよ、本当に。


「もういいわ。それで、話ってなんだ」

「聞く気になってくれたんだねぇ~」

「聞かないとお前らが何をするか分かんねぇからな」

「わかってもらえて良かったよ~」


「後はお願い」と、後ろで腕を組み、ずっと傍観を務めていたアンジュに説明を託した。


「…………では、話させていただくわ」

「よろ~」


 聞きたくないけど。


「貴方達の状況は、ファーマメントから見ていたからわかっているわ。だから、この機会を利用させてもらいたいの」

「利用? なんだよ、利用って」

「以前、私達は、貴方達が助けようとしているカケル=ルーナに助けられたことがあるのよ」


 それは少しだけアンジェロに聞いたな。

 それで、俺に手を貸すって話なら、まぁ、わからなくはない。


 フォーマメントから見ていたから事態は把握済み。

 つまり、俺が転移者であることもわかっているという事でいいのだろうか。


「だから、私達は今の貴方に手を貸します。間接的にカケル=ルーナに恩を返せるので」

「なぁ、その話は分かったが、一つ確認してもいいか?」

「何でしょう」

「お前らはさっき、フォーマメントから俺達の動向を見ていたと言っていたが、それはいつから見ていたんだ?」


 聞くと、二人目を合わせ空中を見た。

 まさか、覚えてないとか言うなよ? 


「ずっとよ。貴方がこちらに来る前から見ていたわ」

「なら、もっと早くに降りて手を貸せや」

「それは出来なかったの。フォーマメントでも色々トラブルが起きていてね」

「トラブル?」


 聞くが、答えてくれない。

 巻き込まれたくないし、黙っておこう。


 おっ、アマリアが俺の前に出た。


「さっきの話に戻すけど、手を貸すって、何をしてくれるの?」

「貴方に話しても意味はないわ。私は貴方ではなく。チサト様――いえ、カケル様に恩があるの。気軽に声をかけないでくださらないかしら」

「デジャブ」


 アマリアが深い溜息を吐き、頭を抱えてしまった。


 この光景、俺もデジャブ感があるなぁ。

 デジャブではないんだろうな、過去に違う奴とやった会話だなぁ~。


 どっかの、癒し魔法に特化した魔法使いとか。


「もう、本当にめんどくさい」

「今までの自分の行動が招いたことだ。受け止めるしかないぞ」

「うん」


 素直だな。

 今までの行動に対し、アマリアは後悔の念があるし、そんなもんか。


「なら、俺が質問する」


 一瞬、嫌な顔をしたが、まぁいいだろうと妥協した表情で「なにかしら」と言われた。


 張った押してやろうか。

 俺からおめぇらに手を貸すようにお願いしたわけじゃねぇんだよ、この野郎。


 いや、ここは俺が大人になれ鏡谷知里。よしっ、落ち着け。


「ふぅ……。んで、どんな形で俺達に手を貸してくれる予定なんだ?」

「どのような形でもいいわよ。私達に出来る事であれば」

「出来る事はなんだ?」

「まずは指示を出してくれないかしら。その方が判断しやすいわ」


 そんなこと言われてもな。

 俺達も正直、今すぐ動き出すとか考えてねぇし、指示を出すことできないんだよな。


 考えていると、アマリアが耳打ちして来た。


 あーーーーー、確かに。

 それは聞いておいた方がいいか。


「今すぐは特に動く予定はないから、まずはお前らの実力を教えてほしい」

「実力?」


 お? 腕をくんで偉そうにしていたアンジュが一瞬、動揺を見せた。


「俺達が一番懸念している部分なんだが、管理者との戦闘で、お前らが何をできるのか、それは事前に知っておきたい」


 聞くと、アンジュが気まずそうに顔をよそにそらした。

 アンジェロは欠伸を零し、何も言わない。


「君、自身の力、コントロール出来ないんでしょ?」

「で、出来るわよ!!」

「なら、今、みせてもらえるかな」


 グヌヌヌと、アンジュは苦い顔を浮かべたかと思うと、すぐにピアスに手を伸ばし、ハープを握る。


 え、まさか…………。


「覚悟しなさいよ。私を挑発した事、後悔しなさい!!」


 やばっ、アンジュがハープに手を添えた。

 眠らされるのか!?


 ジャランと、勢いのある音が響く。

 同時に、見えない何かが放たれた。


 魔法がまにあっ――……


 ――――ドカンッ!!


「…………あ、あれ?」

「やっぱり、コントロールできないじゃん。見栄を張らない方が君の為だよ」


 俺の横を見えない何かが通りすぎ、壁に激突。

 刃のような形に傷がついた。


「ま、まだよ!!」


 また、同じことを繰り返すが、一切動いていない俺とアマリアにはぶつからない。

 何回か繰り返すうちに、体力が底をついたらしく、肩で息をし始めた。


「えぇーと。なんだ、その。大丈夫か?」

「うるさい。うるさいわよ!! そうよ!! 私はコントロールが出来ないの悪い!?」


 いや、俺は何も言っていませんが?


「馬鹿にしたかったらすればいいじゃない!! 自分の力をコントロール出来ない出来損ないと! 馬鹿にしなさいよ!」


 それ、馬鹿にされたいと言っているようなもんなんだけど。


「いや、落ち着け? 馬鹿にしねぇから」


 したいとも思わないし。


「なによ、同情しているの?」

「なんで俺がお前に同情しないといけないんだよ」

「馬鹿にしなとか言うから…………」


 何で馬鹿にしていない=同情になるんだよ。

 ただ、馬鹿にするような内容じゃねぇからだよ。


「なんか。もう、色々めんどくさい」

「僕もおんなじだよ。本当に疲れる」


 …………んー、なんか、冷静になってくると、頬が痛くなってきた。

 さっき殴られたところだな。


 まぁ、我慢できるけど、なんか、嫌だ。


「…………頬、いたいのかしら」

「まぁな」

「そう……」


 ん? 後ろにいるアンジェロを見ている?


「アンジェロ、治してあげなさい」

「わかったよ、姉さん」


 欠伸をして、今にも寝そうだったアンジェロは、アンジュに呼ばれた瞬間に笑みを浮かべ、近付いてきた。


「治すねぇ~。痛いのは頬だけ?」

「あ、あぁ」

「わかった~」


 言うと、アンジェロは俺の頬に口を寄せてきた。


 な、なんだ?


「ふぅーー」

「どわぁぁぁぁああ!!!!」


 な、なななななな、な、なぁぁぁぁああ!?


 い、いきなり息を吹きかけられた!?

 頬に、息を!! 体に鳥肌が立って気持ち悪いんだけど!?


「――――あ、あれ?」


 息を吹きかけられた頬、痛くない…………?

ここまで読んで下さりありがとうございます!

出来れば次回も読んでいただけると嬉しいです!


出来れば☆やブクマなどを頂けるとモチベにつながります。もし、少しでも面白いと思ってくださったらぜひ、御気軽にポチッとして頂けると嬉しいです!


よろしくお願いします(*・ω・)*_ _)ペコリ

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