いい脅し道具をゲットしたわ
「…………もう深く考えるのはやめた。それより、今回のは、冒険者としての仕事になるのか?」
「あぁ、そういえば、知里は今、強制休暇中なんだっけ。さすがに、グレーゾーンだね」
アマリア、普通に忘れてたな。
俺が休んでも休まなくても、どうでもいいらしい、悲しいなぁ。
「それなら、僕が先に教わる。それを知里に教えるよ」
「二度手間じゃね? 普通に一緒に受ければいいじゃん。一か月後に」
「それだと遅い、ものすごく遅い。二度手間でも、良いでしょ」
相当、本の中身が読みたいらしいな。
「まぁ、良いわ。それは二人で話し合ってくれ。それと、クラウド」
名前を呼ぶと、本を消し、振り向いた。
魔法でまた消したらしいな。
「俺の魔法が見たいのなら、これからは俺の指示に従い、絶対に無駄に暴れるな、良いな?」
「お前らが俺様を逆なでするから悪いんだろうが」
「お前の地雷がわからんこっちからしたら理不尽極まりない理由だな。悪いが、あと一回でも騒ぎを起こせば、もう俺はお前に魔法は見せない。わかったな?」
きつく言い聞かせねぇと、こいつはまたしても騒ぎを起こす。
指を差しびしっと言い切ると、バツが悪そうに顔を逸らしやがった。
「おい…………」
「俺様は、悪くねぇし」
…………頬を膨らませてふてくされるな。
男がそれをやっても可愛くねぇよ。
女がそれをやってもうざいだけで結局可愛くねぇけど。
「約束できねぇのなら、お前はこの部屋から出るな」
「断る」
「なら、暴れないと約束しろ」
「嫌だ」
子供か。
「なら、炎はもう見せない」
「っ、……………………チッ」
「約束、するか?」
「……………………わかったっつーの。なるべく、暴れないように気を付ける」
居心地悪そうに顔を背けているが、ひとまず約束はしてくれた。
そんなに俺の炎が好きなのか。
これは、いい脅し道具をゲットしたな。少しきもいけど。
これからはこれを使って、こいつをうまく扱っていこう。
身体能力、魔法とも呼べそうな力、戦闘能力。
今までのこいつを見ていて、これらの数値が高いのはもうわかっているし。
あとは、頭脳だな。
今まではめんどくさがっていたようだが、アルカ程の馬鹿ではないだろう。
カケルも、アンヘル族は味方にしておいた方がいいと言っていたし、絶対に裏切らないとも言っていた。
「――――利用価値が高いな」
「口に出しているけど、大丈夫?」
「問題ない」
アマリアにしか聞こえていなかったから、セーフセーフ。
※
クラウドは「寝る」と、ふてくされてしまったから、俺とアマリアは癒し処で体を癒した後に、星屑の図書館に来ていた。
何も趣味はないし、やりたい事もない。
でも、体は休めたい。
ベッドでゴロゴロするのも変に疲れるし、本を読んで気分転換しようとアマリアからの提案。
「へぇ、ここが星屑の図書館なんだ」
「そういえば、前回知里はここに来なかったもんね」
「おう」
前回は、アルカとリヒト、アマリアの三人でここに来ていたんだよな。
俺は初めて。
目の前に建てられているのは、お城ほどでは無いが、それでも大きな海をイメージしている建物。
中に入り見回してみる。
壁や天井、床は藍色。波を表現しているのか、白い線。貝殻やヒトデなどが描かれている。
そんで、一階はくつろぎの空間と少しの本棚。二階は本メインらしい。
薄暗く、気持ちが落ち着く作りになっているなぁ。
静かで、音楽もこの空間にマッチしている落ち着く曲が流れている。
目を奪われる光景に、出入口で思わず足を止めてしまった。
「? そんな所で立ち止まって、どうしたの?」
「目が奪われる光景に唖然としただけだ、気にするな」
図書館という所には行かず無縁だったが、転移前にも行っておけばよかったな。こんなに心が落ち着くのなら。
いや、これはこの世界ならではの光景なのかもしれない。
過去を思い出しても仕方がないし、進むか。
カツン カツン
と、静かな空間だからか、俺の足音が響く。
アマリアは浮いているから足音とかしなくていいな。
「それじゃ、僕は自由に本を読ませてもらうよ」
「俺が帰ると言ったら帰るぞ」
「…………」
「返事」
「…………」
「返事」
「…………わかった」
まったく……。
アマリアは俺から視線を逸らしたまま、ふよふよと離れて行ってしまった。
俺も、何か読もう。
何を読もうかなぁ。
二階まで行き、階段近くの本棚に向かう。
そこにあるのは、歴史や時代の本。興味ないな。
他に面白そうな物はないかねぇ~。
「――――――――ん? ”天使の怒り”?」
なんだ、この本。
時代の本とかに囲まれて、一つだけぽつんとファンタジー本が置かれている。
流石に、ジャンル的にここじゃないだろう。
戻す所がわからなくなったから、適当に戻したのか?
「…………いや、ここで、いいのかもしれない」
時代の本、天使。
自然と動く手が、本棚に収められている本を手に取る。
パラパラと開いてみると、中身は語り口調で物語が進むような構成になっている小説だった。
やっぱり、歴史や時代の本とはまた違う。でも、ファンタジー小説とも違う。
まるで、本当にあった出来事を、語り手がそのまま本にしたような感じだ。
「――――ん? この語り手が話している天使族って…………」
この物語に出て来る王族の血、ありとあらゆるものの力を無効化にすると書かれている。
確か、クラウドって王族じゃなかったか? それに、水圧とかを感じないと言っていたな。
ありとあらゆるものかはわからんが、なんとなく似ている。
「――――ちょっくら読んでみるか」
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