知らぬが仏とはまさにこのことだった
「あのなぁ、何か気にいらないことがある度、殺意マックスの攻撃を仕掛けるのやめてくれねぇか?」
光の刃を振りかざされた時は、マジで心臓止まったわ。
咄嗟にfistflameを発動し事なきを得た。
「俺様のもんを勝手に触るからだろうが」
「俺が勝手に触ったわけじゃねぇのに………」
「俺様が起きた時点で触っていたのはおめぇだ。おめぇが悪い」
「解せぬ…………」
アマリアが最初、手に取って読んでいたのに。
たまたま、俺が触っている時にクラウドが起きただけなのに。
ほんの少し、読んでいただけなのに……。
まさか、そんな少しの時間でタイミング悪くこいつが起き、命を刈り取られそうになるなんて……。
俺、どんだけ運が悪いんだよ。
巻き込まれ系主人公とかいらねぇんだよ、此畜生。
「ねぇ、その本。僕、読めなかったんだけど、君は読めるんだよね? 何が書いているの?」
「中、見たのか?」
「うん。知里より僕の方ががっつり見ていたね」
素直に言ったアマリアにポカンとするクラウド。
「あぁ?」って、何故か疑問符を浮かべている。
これ、俺が同じことを言っていたら確実に光の刃を出していただろうな。
何でこうも周りの奴らは、俺とアマリアへの態度を変えるんだ。
俺にももっと優しくしてくれよ、俺が何をしたって言うんだ。
一人落ち込んでいると、クラウドが俺から奪い取った本を見下ろし、ギュッと握る。
何を考えているのか、わからんな。
前髪で表情が隠れちまっているし。
「…………これは、何も意味はねぇよ」
「意味を聞いているんじゃなくて、その中身の内容を聞いているんだけど」
「お前に関係がねぇもんだから説明する必要はない」
「関係ないかもだけど、内容は気になるの。教えてくれないのなら、文字の読み方を教えてよ」
え、文字の読み方?
おっ、さすがに予想外だったらしい。微かに顔を上げ、アマリアを見た。
「教えてどうする」
「読めるようになれば、僕自身でその中身を確認出来るでしょ?」
「文字が読めるようになる方が意味ねぇだろうが」
「いや、そんなことはないよ」
アマリアが自信満々に腕を組み、鼻を鳴らしている。
何か考えがあるのか?
「アンヘル族の文字を今初めて見たんだけど、興味深くてさ」
「そうかよ。個人的な理由じゃねぇか」
「それだけじゃないよ、理由」
他になにか理由、あるのか?
「この文字って、人間である僕達は読めない。これって、こちらとしては大きな利点になると思うんだよね」
「利点? なんのだ」
「僕達がこれから相手にする奴らに対して、少しでも優位に立つことが出来るって事」
ちらっとこっちを見て来る。
あー、なるほど。でも、それって、つまり……。
「俺も、文字の勉強しないといけないという事?」
「ついでにグレールも出来たら嬉しいとは思っているよ。僕と知里、グレールがアンヘル族の文字の読み書きができれば、結構いい感じに事を進められそうじゃない?」
…………言葉には出さない、出さないけどよ。
どうせそれ、だしにしているだけだろうが。
個人的にアンヘル族の文字を解読したい、読み書きしたい。
クラウドが持っている本を読みたい、などなど。
そんなことばかり思っているだけだろうが。
もっともらしい事を言いやがって。
「なんだ、おめぇら。なにか、抱えてるもんでもあるのか」
「めちゃくそ」
「お、おう……。大変そうだな……?」
なんか、俺が真顔で言ったら同情されたんだが。
いや、同情されるような人生をこの世界に来てから送っているからな、仕方がない。
「…………そういう理由があんなら、俺も手を貸してやるよ」
「マジで?」
「ただし、お前の炎を見せてくれるのなら」
「…………」
悪魔のような笑みを浮かべながら、悪魔が発するような言葉を平然と言いやがった。
戦闘は嫌なんだが? 嫌、なんだが?
断ろうとすると、アマリアが先に口を開いちまった。
「それ、結構いい条件じゃない?」
「なんで?」
「これからも戦闘がメインになるだろうし、炎魔法は必然的に使う事になるでしょ」
「…………確かに」
俺は意識せず、炎を見せる事が出来る。
まぁ、水魔法を使う時もあるが、それは仕方がない。
無条件でこいつの力を俺達が使えると考えるのなら、アマリアの言う通りいい条件かもしれないな。
だが、なぜいきなりそんな事を言いだしたのかわからん。
…………今はだいぶ体も回復したし、ちょっくら透視を使うか。
(「アビリティ」)
(『はい、透視発動準備整っております。意識すれば使用可能』)
いつでも心が読まれている状態なのは、気にしなければ特にストレスでもなんでもないな。
逆に、説明しなくてもいいから楽。
(『何か考えましたか?』)
(「便利な力と思っていただけだ。使うぞ」)
透視を発動。
アンヘル族に効くのかどうかわからんかったが、無事に見えるな、よし。
(『こいつの炎は、今まで見たどの炎よりも綺麗で、純粋。見たい、もっと。見ていたい、あいつを。────俺様のもんにしたい』)
…………………………………………見なければ良かった。
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