なんでそんな約束事を持ちかけられたのか理由がわからない
リトスの件も気になるのに、なぜ俺は王妃達のいる部屋の前で顔面蒼白になりながら立ち尽くさないといけないのだろうか。
「…………入らないの?」
「入りたくない」
「入らないと何も進まないよ?」
「わかってる」
それくらいわかってんだよ、それくらい。俺だって。
でも、気持ち的に進みたくないんだよわかってくれよ。
…………何て言おうか。
言い訳は得策ではない。なにか、自分に有利になるように。でも、いい訳みたいにならないように。
どうする、どうすればいい。
「――――開けますよ」
「え、グレール? まっ――――」
「王妃様、王様。チサト様がお見えです」
ぎゃぁぁぁぁあああ!!!
グレールの裏切り者ぉぉぉおおおお!!!
『どうぞ』
中から王妃の声。
グレールは返事が聞こえたのと同時に後ろに下がりやがった。
自分に被害が来ないようにしやがったな、ふざけるな!!!
「…………入らないの?」
「…………入る」
くっそ、入るしかないじゃないか。
――――ガチャ
ゆっくり、本当にゆっくりと中に入る。
すると、王妃と王が部屋の中心にある丸テーブルにカップなどを置き、飲み物を楽しんでいた。
近くにはポットも置かれている。
クッキーなどを摘みながら雑談を楽しんでいたらしい。
俺の姿を確認すると、王妃が目を輝かせ、王がげんなりと肩を落とし落ち込む。
…………そりゃ、そうか。
うん、忘れていたわけではなかったが、王妃は俺の顔が好みだったな、そーいや。
撫でまわされた記憶が蘇る。
「貴方から来ていただけて嬉しいわ」
「こちらこそ、貴女のような方をお話しできて光栄です。ですが、時間がないかと思いますので、早急に本題に入らせていただきたいと思います」
余計な話など絶対にさせてなるものか。
早く謝罪して、弁償の件を話して、すぐに終わらせてやるよ。
「ゆっくりしていっていいのよ?」
「いえ、私のようなただの冒険者に王妃様が時間を割く必要はございません。それより、本題に入りたいと思います」
明らかに残念と、肩を落とすな。
仕方がないだろう、俺は早く終わらせてリトス達の確認をし、クラウドの容態を見なければならないのだから。
…………あれ、俺は一体何をするためにこの世界にいるんだっけ?
人のお世話をするために転移して来たんだっけ?
いやいや、今は考えない様にしよう。
「お話は聞いております。修練場の一つのフィールドを破壊、一つを修繕しなければならないのでしょう?」
うっ、その通りでございます。
「はい…………」
「そう」
あぁ、頭を抱えている。
これは、謝罪をしなければならない。
「えっと、この度は――……」
「今回の件は、こちらで解決できますので気にしなくて大丈夫ですよ」
……………………神? え、女神様?
目の前で微笑んでいる王妃様が神々しく見える。
あぁ、ここにいたのは女神様だったのですね、ありがたやぁ。
「ですが、さすがに何もお咎めなしでは、また同じことを繰り返される可能性がある為、手は打たせていただきますね」
「うっ……、はい…………」
金を出させるという内容ではないだろう、さっきまでの会話上。
なら、何かお願いされるという事だろうか。
ロゼ姫との結婚なら無理だぞ。
俺は、誰かと添い遂げる予定はない。
「簡単ですよ。一か月間、冒険者としてのお仕事は一切しないでください」
「…………え?」
え、冒険者としての仕事をするな?
それは、どういうことだ?
「ですが、それだとダンジョン攻略などが出来ませんが…………」
「してはいけないと言っているのです。貴方はしばらくダンジョン攻略、依頼を受けるのを禁止します。期間は一か月、破れば今回の修繕費、買い替え費を全額出していただきます。まだ見積もりを出してはいませんが、何百ヘイトで済むと思わないでください」
女神かと思っていた笑顔が、途端に悪魔の笑みへと切り替わった。
えっと、冒険者としての仕事って、どこからどこまでなのだろうか。
俺は、何をすればいいんだ?
あ、あれ?
どうしよう。冒険者としての仕事をするなと言われると、やる事がない。
「お約束、出来ないのですか? でしたら、全額要求をっ――……」
「約束します。全力で約束をさせていただきます」
「わかりました。では、下がっても大丈夫ですよ。私のお話し相手になってくださるのなら喜んで、ですが」
「いえ、ありがたいお言葉ですが、ここで下がらせていただきます、ありがとうございました」
王妃が俺を誘った時、王から殺気が放たれた。
これは、下がらないと面倒ごとに巻き込まれる。
何事もなかったかのように部屋を出て、外で待機していたアマリア達と合流。
そのままリトスがいる部屋へと向かった。
…………俺に出された約束について、話しながら。
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