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やっと終わったけど、なんとなく後味が悪い気がするのは気のせいにしておきたい

 長を牢屋から出したいが、鍵がない。

 おそらくフィルムが持っているはずだが、それだけは頭から抜けていたらしいな。


「仕方がない……」


 壊すしかないか。

 魔力が少ないからあまり魔法は使いたくないが、仕方がない。


 牢屋の鉄格子を壊すため、魔力を手に込めっ……。


 ――――ギギギギッ


「――――え?」

「魔法を使わずに済んだね」

「う、うん」


 中にいた長がリトスを片手で抱え、空いている方の手で鉄格子を簡単に曲げて壊しちまった。


 アマリアの言う通り、魔法を使わなくて済んだから良かったけど、より一層怒らせてはいけないという事を理解してしまった。


 俺以外も簡単に牢屋を壊した長にビビり、アマリア以外は近づかないようにしている。


 そんな、長。

 アマリアを見ると、リトスを後ろに隠すようなそぶりを見せた。

 警戒、しているという事だよな、これ。


「警戒しなくても大丈夫だけど、まぁいいや。早くここから出ようか、長が辛そう」


 ずっと中腰だもんな、確かに辛いな。

 こんな所にいるのも気分悪いし、鼻が曲がる。


「んじゃ、出るかぁ~」


 俺達は外に出た後、オスクリタ海底に戻る事にした。


 ワープで一瞬で辿り着き、後は城に戻るだっ――……


 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・


 …………え、え?


「アルカぁぁぁぁあ!! カガミヤさぁぁぁああん!!!」

「死にましたね」

「死にましたね」


 ワープして、オスクリタ海底に辿り着いた瞬間、アルカと知里が倒れてしまった。


 もう、二人は魔力的にも肉体的にも限界が近かったし、仕方がない。

 でも、ここまで急に来るんだ。強制睡眠ばりの電池切れだな。


 うつ伏せに倒れたけど、顔面ぶつけてない?


 リヒトがアルカを、グレールが知里を起き上がらせ様子を確認、怪我はしていないみたい。


「…………寝ているだけですね」

「寝息が聞こえる……」


 アルカは無邪気に寝ているけど、知里は眉間に皺が寄ってる。


「運んで寝かせてあげようか。アルカなら一週間で起きるとは思うけど、知里は魔力量が多いから一か月はずっと寝ているかもしれない。点滴とかで栄養を送って、起きるのを待とう」


 そこからはグレール達も疲れているだろうに、アルカと知里を部屋に送り、医師に連絡。見てもらって、点滴準備。


 スムーズだったからすぐに終わった。


 今は部屋でゆっくりタイム。

 グレールとロゼは自室へと戻り、僕とリヒトは知里達が眠る部屋で過ごす事となった。


 それはそれでいいんだけど、いいんだけどさぁ。


「…………リトス達は、大丈夫かなぁ~」


 オスクリタ海底の王、ロゼの父親に回収されたリトスと長。


 なんか、王の後ろにいた王妃が目を輝かせていたような気がしたけど、大丈夫かなぁ。

 襲われていないかなぁ、まぁ大丈夫か。


 襲われていたとしても、長ならあの大きな体で包み込むでしょう。


「…………顔色、めっちゃ悪い」


 アルカはリヒトに怪我を治してもらったとはいえ、さすがに疲労などは体に残っているはず。


 リヒトの回復魔法は、外傷を治す事が出来るだけで、疲労回復できる癒し魔法とかは使えない。


 隣に座るリヒトは、顔を俯かせ知里を見守っている。

 元気がないなぁ、空気が重い。


 いや、管理者達の会議よりは全然軽いからいいんだけど。


「…………アマリア様」

「ん? どうしたの?」


 顔を俯かせながら、何故か僕の事を呼んできた。

 珍しいな、自ら僕と関わろうとしないのに。修行の件から。


「あの、私って、もっと強くなれますか?」

「唐突だね。もしかして、遠回しに前回と同じように修行がしたいと言ってるの?」


 ――――ビクッ


 あ、肩を震わせた。

 それは普通に怖いんだなぁ。


 まぁ、あれは時間もなかったし、無茶させていたからね。


 普通はあそこまでの事はしてはいけない、リヒトみたいに若くて普段から体を動かしている人じゃなかったら普通に体を壊してる。


「…………あの、また私に修行を付けて下さいませんか?」

「…………え、まじで?」

「はい」


 こっちを見て来るリヒト、目に迷いがない。


「…………耐えられる?」

「た、えられます!」


 ものすごく体が震えているよ?


 うーん、どうしようかなぁ。

 修行付ける分には特にいいんだけど、それを知里がゆるっ――さないわけがないか。


 …………今、フィルムがいなくなったって事は、残りの管理者は四人。

 アクア、クロ、ウズルイフ、クロヌ。


 この中で一番倒しやすいのは、クロかな。

 戦闘能力はそこまで高くはない。

 ウズルイフみたいな歪んだ趣味もないし。


 厄介なのは、姿を眩ませるのが誰よりもうまいという事。

 スナイパーだしなぁ、アクアと共に行動することを主に言いつけられているし。


 クロを相手にするのなら、同時にアクアも相手にしないといけないかも。

 そうなると、今の戦闘技術では確実にこっちが負ける。


 リヒトにも、今以上に回復魔法や拘束魔法を使いこなせるようにしてほしいかも。


「今は、体を休むことに集中して。この後の事はまた、知里達が起きた時にでも考えよう」

「わかりました」


 さて、もうそろそろリヒトを寝かせないといけないな。

 物理で寝かせるか、それとも諭させるか。


 よしよし、今からは、休暇タイムだ。


 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・


「うっ、わぁ、マジか。やられた……」

「なにしてるのさ、ウズルイフ」

「うるせぇぞ、クロ。まさか、あのアマリアがあそこまで粘ってくるなんて思ってなかったんだよ。さすがに油断した」


 魔力がなくなり戦線離脱したウズルイフは、クロと地上で合流していた。


 今はもうフィルムの方も戦闘が終わっており、ダンジョンは崩れ、跡形もない。

 そんなダンジョンを見ている二人の周りには何もない、崖の上。


 下を覗くと、知里達が崖下を歩いている姿。

 今襲えば簡単に倒す事が出来るが、ウズルイフに知里達を殺せるほどの力は残っていない。


 クロが殺すか聞いても、ウズルイフは拒否。

 自分が知里を殺すと譲らなかった。


「なんでそこまで知里に固執するの? 普通に殺すだけじゃ駄目なの?」

「ここまでこっちがやられてるんだ、普通に殺すわけにはいかねぇだろう」


 管理者はもう三人もやられ、残っているのは四人。


 カケルを相手にした時は、管理者全員が相手にしていたため、管理者側にダメージはなかった。


 ここまでくると、クロヌ以外の管理者全員で相手にしないといけないかとクロは考え始めており、クロヌに相談しようと企んでいた。


 ウズルイフはそんなクロの心情を察してか、ギロッと睨み殺気を飛ばす。


 ウズルイフの気配は管理者の中でも殺意が高く、慣れていない人ではすぐに失神してしまう程鋭い。


 殺気を向けられ慣れているはずのクロでも、顔を真っ青にし、背筋が凍るような感覚が走った。


「余計な事、考えるんじゃねぇぞ?」

「…………わ、かりました……」


 体をガタガタと震わせ、クロは頷く。

 ウズルイフはその様子に安心し、いつもの飄々とした態度に戻った。


「それなら、よかった」


 ウズルイフはそのまま一瞬のうちに姿を消した。


 残されたクロは、ウズルイフがいなくなってからも動くことが出来ず、緊張の糸は切れない。


「…………なんで、ここまで知里に執着するんだよ……。うちには、わからない」

ここまで読んで下さりありがとうございます!

出来れば次回も読んでいただけると嬉しいです!


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よろしくお願いします(*・ω・)*_ _)ペコリ

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