少しでも楽がしたいけどこればかりは仕方がない
「――――よっと」
地面に足を付ける事が出来た。
えぇっと、ここはどこだ?
周りを見回すと、崖に囲まれている所という事はわかった。
ここって、ダンジョンに行くために通った崖下か?
道は一本、前と後ろに続いている。
「ここは、来た道に戻ってきた感じですね」
「そうみたいだな」
空を見上げると、もう日が沈み暗くなっていた。
星空が雲のせいで少しだけ隠れ、薄暗い。
月も隠れちまってるのかな、辺りがあまり見回せない。
でも、気色悪い暗さではないし、自然が作り出した闇だから特に影響はないな。
――――ガラガラ
「あ、ダンジョンが……」
「崩れているな」
音だけが聞こえる。
ダンジョンが崩れる音。
フィルムは、しっかりと納得していたのだろうか。
今更考えても答えなんてわからないけど。
――――ヒラヒラ
「…………ん?」
「カガミヤさん、これって……」
なんだ、光が……。
みんなで空中を動き回る光を見ていると、やっと輪郭がしっかりして来た。
「…………もしかして、こいつがフィルムの言っていた精霊か?」
目の前に現れたのは、白い髪に白いワンピースを身に着けた精霊。
無表情で、真っすぐ俺を見て来る。
『――――私の名前はシロ。フィルム様の命令により、貴方達をご案内します』
それだけを言うと、精霊は俺達の横を通り一本道を進む。
最後の最後でいい事をしてくれるな、フィルムよ。
あんな冷静な精霊もいるんだな。
俺んとこにいる精霊もあそこまで冷静だったらいいのに。
他の奴らを見回し、進む――――あれ。
「そういや、リトスってどこだ?」
俺の言葉に、前を進んでいた精霊も止まる。
んで、他の奴らも辺りを見回しリトスを探す。
だが、近くにはいない。
え、いない?
「り、リトスくーん!!」
「リトスーどこだー?」
――――シーン
…………ダンジョンに、置いてきちまった?
いや、まさかそんなことはないはず。だって、そんな事……。
「リトスーーー!! どこだぁぁぁあ!!」
みんなで名前を叫び呼ぶと、やっとどこからか声が聞こえた。
「ここなんだぞー!!」
何処だ、どこから声が聞こえる?
こんな、隠れる所がない場所で……。
「こっちなんだぞー!!」
…………え、精霊のいるさらに奥?
みんなで目を合わせ向かうと、精霊もまた動き出す。
そのまま全員で進むと、リトスが闇の中からジャンプしている姿を見つけた。
「ここなんだぞー!!」
…………はぁ、元気そうでなによりだよ。
一人でここまで進んだのか?
ものの数秒だったけど、まさか……。
隠れる所はなかったけど、闇に隠れてここまで一人で向かっていたとは……。
「おい、リトス。一緒に戻ってきていたなら俺達から離れるな。今みたいになるだろうが」
「でも、こっち、ここ。なんか、変なんだぞ」
変?
何が変……なんだこれ。
「地面に、何かが現れてる」
なんか、四角い何か。
これって、現代社会によくある地下収納用の扉によく似ている。
「これって――……」
――――バチンッ!!
「いって!!!」
「カガミヤさん!? 大丈夫ですか!?」
こ、この扉、俺の手を弾きやがった!
大きな静電気が走ったような痛み、なんなんだよ……。
『まだ封印を解除しておりません。姿が見えているだけです』
「…………スイヤセンデシタ」
『いえ』
無表情なのがまた腹立つ。
まぁ、いいわ。俺が先走ったのが悪いんだし。
俺が大人しくなったのを確認すると、精霊が扉の上に立ち右手を下に向ける。
淡い光がドアを包み込み始め、目を奪われちまう。
辺りが暗いのもあり、綺麗に見えるな。
花火を見ているような感じに近い。けど、胸が高鳴る感覚はなく、逆に落ち着く。
数秒、光で包んだかと思うと、少しづつ薄れ、辺りがまた暗くなる。
『――――私は、最後の主の命令をやり遂げました。また、眠ります』
「え、あっ……」
本当に命令だけを済ますと、精霊は姿を消しいなくなる。
精霊は主がいなくなると、また深い眠りにつくのか……。
そして、また違うダンジョンに現れ、他の人を主にして共に行動をする。
こんな感じで、回っているんだな。
「チサト様、行かないのですか?」
「…………いや、行こう」
今の精霊、消えないで俺を新たな主にしてくれたら、リリースを使う精霊を見つける時間を削減できるんじゃないかとか考えてしまった。
しかたがない、俺は俺で今はこの扉を潜りユウェル族の長を見つけるか。
今度は弾かれることなく、扉を開くことが出来た。
中は暗い道、階段が続いている。
耳を澄ましても、風の吹く音しか聞こえない。
風はしたから舞い上がるように吹いている。なんとなく寒い。
「寒いの? 白衣、いる?」
「…………いらない」
「そう」
アルカとリヒト、グレールとロゼ姫を見てから階段を下がり、地下へと向かった。
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