あんな戦闘をまた繰り広げるくらいなら、普通に話聞いた方が何倍もましだわ
『――――まさか、そんな!』
困惑しているところ悪いな。
こっちはまだ、終わったと思っていないんだ。
植物魔法がなくなり、樹木は炎に包まれている。
炎の竜は薄れ、そのまま消えた。
汗を流し、困惑と焦り、怒りなどと言った感情を含めた言葉をフィルムが零している中、こっちは次の一手に移行だ。
『なんで、なんっ――!?』
お前の背後まで移動したリンクに気づいたな。
だが、もう遅い。
こっちの準備は、整っている。
『空間魔法を発動します』
リンクが両手を前に出し、空間魔法発動。
フィルムの身体を簡単に呑み込めるほどの大きさはあるワープゾーンを作り出した。
すぐに逃げようとしたが、意味はない。
吸い込まれるようにフィルムは、中へと姿を消した。
俺も、後ろに出されているワープゾーンに飛び込む。
その際、最後に見えたのはリヒトの不安そうな顔。
何も伝えることなく、暗闇の中へ。
・
・
・
・
――――ジャプン。
っ、水!? いや、息は出来る。
水の中に入ったような感覚だけど、ここがリンクの作った異空間なのか?
周りは真っ暗で何もない。
違和感のある闇。本当に、闇、ガチの闇。
闇という言葉が具現化して、作り出されたかのような、闇。
見回しても光とか目印になる物はない。
これ、どこにフィルムがいるのかわからんぞ。
「アビリティは声を出せるか?」
『はい』
良かった、アビリティとの会話は出来るみたいだ。
「アビリティ、俺はどうすればいいと思う?」
『すべてをぶん投げないでください』
ちっ、駄目だった。
さて、多分ここのどこかにフィルムがいるはず。
魔法は発動できるはずだよな。
どこからか植物魔法が飛んでくるかもしれない、警戒を怠らないようにしないと──……
『ふざけるなぁぁぁぁぁぁあああ!!!!』
ビックゥゥウウウウ!?!?
「っ、え、は?! どこ?!」
い、今の、子供の、声?!
今の、確実にフィルムだよね。
なんか、覚醒タイムの時と声質が違うような気がするけど、元に戻ったのか?
おっ、地面らしき所に足を付ける事が出来た。
えっと、声が反響していたのと、油断している時だったからどこの方角から声が聞こえたのかわからなかったなぁ……。
『知里様以外の魔力を探知、お伝えします』
「よろしくお願いします」
アビリティに教えてもらいながら進むと、奥の方に人影?? らしき違和感を見つける事が出来た。
目を細めてみると、あーあ。地団駄してるしてる。
やっぱりフィルムって子供なのかな、子供なんだろうな。
近付くと、俺の気配に気づいたのか、こっちを振り向いた。
「あっ」
「…………殺す!!!」
「なんで!?」
こっちに突っ込んでくるなぁぁぁぁ!!
「うわっ!?」
――――バタンッ
いってて……。
魔法とかそういう物ではなく、普通のタックルかよ。
背中を地面に打ち付けちまったじゃねぇかよ!!
「いってて………あ?」
え、なんで跨られているの?
え、俺のお腹の上に座って顔を俯かせてなにしてるの?
普通に怖いんだけど、このまま俺、タコなぐりにされるの?
お願い、それだけは勘弁して。
今マジで俺、無防備なんだけど。
「負けてない、私は、負けてない」
「そうだね、なんだったら今負けてるの、俺だね」
普通に無防備晒しているからね。
これ、こいつに殺意がまだ残っていたならマジ危ないんだけど。怖いわ。
「負けてない、私は、負けてない。だから、捨てられない……」
────ん? 捨てられない?
何を言ってんだ?
――――グスッ
「……泣いてんのか?」
体を少しだけ起こし、顔を上げさせる。
すると、大粒の涙が頬を伝い、落ちていた。
黄緑色の瞳は涙で濡れ、唇を噛んでいる。
……なにこれ、やだこれ。
え、俺はどうすればいいの。頭でも撫でればいいの?
「…………えぇっと、何がしたいの?」
「…………」
沈黙。
声が届いていないのか、無視しているのかわからんな。
いや、この距離で聞こえないわけないだろう、これは無視してやがるな。
おい、ふざけるな。
俺のこの、どうすればいいという気持ちをどうにかしやがれ。
「私は、私は……」
そう言えば、さっきから”負けてない”を連発しているな。
まだ勝敗は決まっていないのに、なぜそこまで負けていないという言葉を連発しているのか。
それって、もう負けを認めているもんじゃないのか? 俺的にはまだ決まってないけど。
今、攻撃されたら普通に死ぬ。
「…………なぁ、さっき言ってた、”捨てられない”って、なんだ? 負けたら捨てられるのか?」
顔を覗き込んで聞いてみるけど、答えてはくれない。
えぇ……。これマジでどうすればいいの。
俺、子供のあやし方とか知らんのだけど。
「…………私は、変だから」
「ん? 変?」
そりゃ、まぁ、変だよな。
何だったらこの世界にいる人達、どこかしらは変だぞ、多分。
「魔力の質が、おかしいから。だから、周りから、殺されそうになった」
「殺されそうになった、ねぇ……」
これは、話を聞いてやった方が良さそうだな。
そうした方が、穏便に話しが終わりそう。
もう、あんな戦闘なんてまっぴらごめんだし、めんどくさいけど、話を聞きますか。
………………………………めんどくさいけど。
ここまで読んで下さりありがとうございます!
出来れば次回も読んでいただけると嬉しいです!
出来れば☆やブクマなどを頂けるとモチベにつながります。もし、少しでも面白いと思ってくださったらぜひ、御気軽にポチッとして頂けると嬉しいです!
よろしくお願いします(*・ω・)*_ _)ペコリ




