負けられない、絶対に
「一つなわけないないだろ!! パッと見ただけでも四つの魔法が発動されているんだぞ!!」
『いえ、一つです』
いやいやいやいや!!
あれが一つの訳が――………
「そうだよね、おかしいと思った」
さっきまで慌てていたように見えたけど、今は冷静を取り戻している。
一体、何がおかしいと思ったのだろうか。
「一周回って冷静になった。それより、知里」
「ん? うん」
「樹木が弱点だよ」
え、樹木?
あの、二本の樹木が、フィルムの弱点なのか?
軸にはなっているかなとは思っていたけど、弱点という言い方は……?
「あの樹木さえどうにか出来れば、ダンジョンも改造されなくて済むだろうし、すべての攻撃が収まるはずなんだ」
「よくわからんが、アマリアの言葉を信じるぞ」
スピリトは突然動き出したダンジョンにビビッて、炎の竜で自身を囲い縮まってる。
「スピリト!! お前は何も考えず、二本の樹木を燃やし尽くせ!」
俺の声に反応を見せたスピリトは、怯えながらも自身を奮い立たせ、炎の竜を再度操り始めた。
でも、簡単に燃やさしてくれるほどフィルムも甘くはない。
すぐに枝を使い、ダンジョンを操りながらスピリトを止めようとしてきた。
『ヒッ!!』
「させるかよ!!」
おっ、アルカが土人形を動かし、枝を腕で巻き取った。
だが、次に迫ってくるのは枝の刃。それに、また違う所から枝が伸びてきてキリがない!
「frost!!」
っ、冷気。
枝に霜が張っていく。でも、凍らせるまでの威力はない。魔力が負けているんだ。
俺が水を出せたらいいんだが、今は他に魔力を使うことが出来ない。
「ちっ。リヒト様!! 貴方の水の盾を私の前に出してください!」
「っ、は、はい! lehrd!」
リヒトの水の盾――――なるほどな!
「frost!」
水の盾を通し、冷気を噴射。
霜が張っていた枝が、今度こそ凍る。
動きを止め、スピリトは改めて炎の竜と共にフィルムへと向かって行った。
「そのまま、行け!!」
魔導書に魔力を注ぎ、炎の竜を大きくする。
大広場を覆いつくすほどの大きさになった炎の竜、轟音を響き渡らせ樹木へと向かう。
『――――負けない。負けない!!! 私は強い、私は、負けない!! |vague・plante!!』
今までにないほど勢いのある植物の波。
またしても炎の竜と植物波魔法のぶつかり合い。
爆風が吹き荒れ、またしても視界が覆い隠される。
「っ、わっ!?」
しまった、爆風に負けて吹っ飛ばされっ――わぷっ!!
「大丈夫か、カガミヤ!!」
「助かった、アルカ!」
土人形が吹っ飛ばされた俺を受け止めてくれた。
――――――――ガンッ! ガンッ!!
くっそ、土人形に支えられているけど、本当に勢いが強いし、炎魔法使っているから熱風が凄まじい。
体が熱いし、大丈夫なのか、これ……。
『もう少し魔力を送り込んでください。まだ余裕があります。長引かせるよりましかと』
「まじかよ……分かったよ!」
長引させるのは本当に無駄だ。
ここで一気に畳みかけてやるよ!
「スピリト、押せ!!!」
『分かりました、主様ぁぁぁあ!!! やぁぁぁぁああ!!』
杖を前に出し、炎の竜を攻めさせる。
――――グオォォォオオオオオオ!!!!
炎の竜の咆哮。
植物の波が燃え始める。
炎の熱風でか、樹木にも火が付いた。
『くっ、負けない。私は、負けないんだから!!!』
あっちも魔力を注いできた!
あっちは質で勝負、俺は量で勝負。
「こっちも、負けるわけにはいかねぇんだよ!!!」
絶対に負けない、絶対に負けてやるかよ!!
ここに来て、ここまでこいつらに危険な事をされて。
負けるわけにはいかない、ここまで頑張って耐えて、耐えて、耐えて。
「俺は絶対に、管理者全員ぶっ飛ばすんだよ。お前は俺に負けやがれ!!」
炎がいたるところに飛び、植物を燃やしていく。
徐々に燃え広がる炎、グレールが張った霜や氷も溶かし、燃やす。
────驚愕、そんな顔を浮かべているな、フィルム。
いや、驚愕と困惑かな。どっちでもいいか。
行け、行け、行け!!!
「「「いっけぇぇぇぇぇえええええ!!!!!」」」
全員の声が重なる。
瞬間、植物魔法は全て炎に身を包まれ散りとなった。
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