節約し過ぎて意外と余る事ってよくあるよな
「――――いや、待て待て。魔力のコントロールはアビリティにお願いする予定だから気にしなくていい」
アビリティも出来るだろう。
確認がてら指輪を見ると、光出した。
『問題ありません』
「ほれ。そう言っているんだ、だから安心してくれ」
スピリトに言うが、まだ不安そう。
でも、リンクから離れ俺の元に近づいて来た。
『本当に、大丈夫ですか?』
「当たり前。お前しか今は頼れる奴がいない、頼みたいんだが、無理か?」
最初は少し悩んでいたが、すぐに覚悟を決めてくれた。
眉を吊り上げ、気合を入れている。
『わかりました! 私、頑張ります!!』
……はぁ、最初から気合を入れてくれ。
「よし、炎の竜、|Dragonflameを出すから、それを操作してもらってもいいか?」
『頑張ります!!』
気合十分、良し。
「アマリア」
「わかった。――――|imagination」
おっ、俺が言いたいことがすぐ分かってくれた。
アマリアが魔法で俺達の準備が整ったことをアルカとリヒトに伝えてくれた。
今の魔法は、対象にアマリアの考えやイメージを頭に直接送る事が出来るもの。
声を出して伝える事が出来ない今、これは本当に使える。
最初は驚いた二人だったが、すぐに俺達の方に振り向き戻ってきた。
…………植物を連れて……。
「おいおい……。まず、樹木から伸びている枝を何とかしてから戻ってきてくれよ。そこまで倒せる余裕がなかったのかもしれないけどさ――――準備はいいな? スピリト」
『問題ありません!!』
返事を聞き前に一歩、足を出す。
「ここからは、こっちが反撃タイムだ。せいぜいあがいてもらおうか――――|Dragonflame」
炎の竜を出し、スピリトに纏わせる。
すぐに炎の竜は自我を持ち、まずこちらに向かって来ている枝を燃やし尽くした。
『まさか、魔力がここまで残っているなんて思ってなかった』
「俺も。ここまで魔力が残っていたんだって、ちょっとびっくり」
スピリトを中心に、炎の竜が渦を巻き飛び回る。
杖を頭の上まで抱え、真っすぐフィルムを見据えていた。
フィルムは俺とスピリトを交互に見て、右手を振り上げる。
『わかった。ならこっちも、さっきより大きな魔法を出す』
「その前に燃やし尽くしてやるよ! スピリト! 樹木を全て燃やし尽くせ!」
言うと、大きな声で頷き、宙を泳いでいる炎の竜を操る。
『ヤァー!!!』
炎の竜が渦を巻き、大きな口を開きながらフィルムに向かって行く。
『|vague・plante』
さっきと同じ、植物の波魔法。
炎の竜巻で止めるのはものすごく重たかったけど、スピリトの力も今回は入っているし、大丈夫。
「――――行け」
そのまま、スピリトの操作と俺の魔力で炎の竜は波へと突っ込む。
ガンッと言う、けたたましい音が響き渡り、爆風が流れ体に圧が襲い掛かってきた。
──ぐっ、視界が遮られる。
体を吹っ飛ばされないようにするので精一杯だ。
「チサト様! 何が起こったのですか!? 大きな音と共に爆風が流れ込んできたのですが!!」
後ろ、グレールの声。
目線だけを後ろに向けると、ロゼ姫を爆風から守るグレールの姿。
その奥には、爆風に負け吹っ飛ばされているゴブリン達。
う、うわぁ。なんか、十、二十以上もいるゴブリンが爆風に煽られ、壁に激突している姿を見ると、なんか爽快。
って、そんなことを言っている場合ではなかった。
今はグレールに説明出来る余裕がない。
悪いが、今は現状を自分の目で確認してくれ。
炎の竜と植物の波魔法のぶつかり合い。
すぐに燃やせると思っていたのに、しぶとく粘っている。
弱点属性のはずなのに、ここまで粘っているという事は、今現在魔力があっちの方が量多く使っているということだよな……。
……いや、あいつの場合は魔力が濃いから、俺と同じくらいの魔力量でも押されてしまうのか。
今回は俺が弱点魔法を持っているから、こんな瀬戸際で押さえられているだけの事。
これが炎魔法じゃなかったら、危なかったかもしれない。
まぁ、どっちにしろ、このままではさすがに無理。魔力が無駄に無くなるだけだ。
今だけ瞬間的に魔力を送るか、それとも他の奴に頼むか。
『――――? まだ、残っていたんだ』
え、何が?
と、思っていたら、フィルムの隣にアルカの土人形が拳を振り上げ殴りかかろうとしている姿があった。
アルカは爆風に負けず、地面に手を付き土人形を操っている。
意識がそっちに逸れ、波が一瞬グラッと揺らいだ。
この瞬間、絶対に逃すかよ。
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