これ以上は危険だと思ったけど、意外と何とかなりそう?
飛んできた刃、避けられない!
「あっ」
水の、魔法……?
ん? 後ろから肩を掴まれた。
「あっぶねぇぇな!!! 何してんだよアマリア!」
「知里……。ごめん、助かった」
知里の水基本魔法、acquaで僕に飛んできた刃を包み込んでくれたみたい。
流石に焦った。
今回は本当に知里に感謝だね、ありがとう。
「…………なんか、既視感」
「奇遇だな、俺も同じことを思っていた」
知里が僕の隣まで来て、苦い顔を浮かべている。
作戦会議は終わったのかな。
後ろを見ると、グレールがアルカようの剣を作り出し、リヒトはロゼ姫を守るように立っている。
「話し合いは終わった。言いもんを試す事が出来たぞ」
なんか、嫌な事を考えているような顔をしているな。
ニヤァって、悪役がしそうな顔。
――――ん? 魔導書、光ってる?
「どうせみんな、私の事が嫌い、怖がってる。なんで? 私は何もしていないのに、なんで嫌われないといけないの」
フィルムが、呟いている。
悲し気に、辛そうに。なんと声をかければいいんだろう。
「なんか、やばい感じか?」
「さっきからやばいけどね。それより、何を企んでいるの?」
横目で見ると、魔導書を見せつけるように上げた。
「もう、力の節約は考えなくてもいいぞ。他の奴らから魔力を貰ったからな」
「え、その魔導書、そんなことまでできるの?」
「できた」
「…………そっか」
これ以上、なにも聞かない様にしよう。
それより、フィルムの方を気にしないと………あ、あれ?
頭を抱えていたフィルムが、突然何も言わなくなった……?
「…………そうか、何もしなかったからだ。言われるがままに他人との関わりをなくし、言われても何も言い返さなかった。だから、殺されかけたんだ。だから、私は殺されそうになったんだ」
殺されそうになった……?
人間時代、フィルムも誰かに殺されかけたって事かな。
それは、結構なトラウマになるね。
僕も同じ経験をしたけど、フェアズがいたから精神的に問題なかった。
フィルムにも、僕にとってのフェアズ的な人かいなかったのかな。
いたような反応だったけど、また違うかもしれない。
それとは別に、拾ったのがあのウズルイフだもんね。
精神的支えより、普通に殺されそう。
ウズルイフは、なぜか僕とアクアばかり狙って、拾ったはずのフィルムはほったらかしみたいだったけど。
「殺されそうになったから、殺しただけ。私は、それだけ。私は……」
渦巻く魔力、僕の頭に警告音が鳴り響く。
これは、体が最初に反応しているんだ。
今のフィルムは、相手にしてはいけないと。
体に鳥肌が立つ、震える。
これが武者震いというかっこいい物なら嬉しいのだけれど、そうではない。
情けない話、汗が出て止まらないし。
あんなフィルム、僕は知らない。
「殺されそうになった、か」
っ、え。
なんか、隣に立っている知里の空気も、変わった?
怒っているわけではない。
なに、この空気、雰囲気。
知里、何を考えているの?
なんと声をかければいいのか、わからない。
「だって、殺されそうになったから、殺しただけだもん。私は、悪く無い。私は、ただ――……」
周りの植物が、ギギギッと動き出す。
なんだ、フィルムを包み込み始めた?
「アマリア」
「な、なに?」
知里、どうしたの?
表情が髪で隠れていて読めないし、声は一定で、感情が乗せられていない。
逆に怖い。
「殺されそうになった奴の気持ちって、お前はわかるか?」
「え、そんなこと急に聞かれても…………」
「俺はわかるぞ。母親に殺されかけたからな」
っ、そうだ。
知里は、知里のトラウマは、実の母親に殺されかけた事。
あの一件で知った、知里の弱み。
「悲しいんだよ。そんで、憎いんだ。何で俺を、何もしていないのにって」
…………まぁ、理不尽だよね。
知里も、フィルムも。
本人達は、何もしていない。
それなのに、殺されそうになるなんて、許せないよね。
「だが、だからと言って、フィルムの事を許してはいけない。それはわかる」
――――あっ、目が、真っすぐ枝に包まれているフィルムに注がれた。
迷いがない、光が宿っている。
もう、知里は乗り越えたのかな。
完全ではないにしろ、今は、前だけを見ているんだ。
「魔力が高まってる。フェアズの時と同じだな」
「そうだね」
知里、冷静になってる。
もう、大丈夫かな。
「アマリアよ、俺はもう、自身の魔力を気にせず精霊を扱う事が出来る。――――という訳で、リンク、任せたぞ」
言うと同時に、知里の頭横にリンクが腕を組み、偉そうな姿で現れた。
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