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いきなり豹変するのは勘弁してほしい

 ”恩を返したい”


 もしかして、今までの管理者での仕事、そんなことを思ってやってきたのかな。


 あんな、残虐非道な行動しかしない人達の事を、そんな風に考えなくてもいい気はする。

 けど、これは僕の意見だし、フィルムに言っても逆上させるだけ。


 どうやって、今の感情を抑え込んでやろうか。

 何通りかやり方はあるけど、どれもそこまで確率は高くない。


 …………息がまた荒くなってきたな、興奮してきたみたい。

 早く何とかしないと、またあの特大植物魔法が来ると、手に負えない。


 モンスターもまた連れてくるかもしれないし、早く手を打たないと。


「…………ねぇ。フィルムは、管理者が好き?」

「……? す、好き、だよ」

「それは、君を認めてくれるから?」

「そう。管理者だけは、私の力を理解してくれた。怖がらないでくれた。他人のように扱わなかった。だから、私は管理者が好き」


 怖がらないでくれた、ねぇ。

 怖がることは確かにないね。みんな、自己中だけど力はあるし。


 …………ふーん、今の言葉から察するに。

 人間だった頃は、その密度の高い魔力のせいで、周りから怖がられていたんだな。


 アクアと似たような生活を送っていたという事でいいのかな。

 ずっと孤独で、誰にも頼ることが出来なかった。そんな、生活。


 いや、もしかしたら、いたかもしれない。

 管理者以外にも、フィルムを見ていた人が。


 感情が先走り、本来の記憶を思い出せていないのかもしれない。


「本当に、管理者だけだった?」

「そ、そうだ。管理者だけが、私を怖がらず見てくれた」


 動揺、かな。

 今の言葉で動揺を見せたということは、管理者以外にも自分を見てくれた人は居たって理解はしているな。


 フィルムの迷いのある口調、目。

 心当たりはあるけど、否定したい。そんな感じの空気だ。


「ねぇ、今まで一度も聞いてこなかったけどさぁ。君は人間だった頃、どんな生き方をしてきたの?」


 何となく、今になってフィルムの人間だった頃が気になり始めた。


 この質問で何かを引き出す事が出来れば、それを材料に話を持っていくことが出来るかもしれないし、聞いて損は無いはず。


 そんな事を思っていると、なんか、フィルムの空気が、変わった……?


 顔を俯かせて、動かなくなってしまった。

 まさか、地雷だった……とか?


「――――人間だった頃なんて、覚えてない。もう、数百年も前。覚えているわけが、ない」


 いやいや、それはさすがに無理あるって……。

 さっき、動揺してたじゃん。つまり、記憶はある。けど、話したくないからそんなことを言って否定しているんだろうな。


 これ以上追求したら地雷を踏み抜く可能性もあるし、やめておこう。


「確かに、覚えていない事の方が多いね」

「うん、覚えていない事の方が多い。覚えていることもあるけど」


 あ、それは言ってくれるんだ。

 話してもいい記憶があるってことか。


「覚えている記憶って、どんなもの?」


 …………すぐに返答はなし。

 これは、話したくないのか?


 頭の中にはあるけど、思い出したくない、とか?


 僕も覚えている記憶はあるけど、どれも思い出したくもない物ばかりだし。


 蔑まれたり殺されかけたり。

 そんな記憶ばかりで、いい思いでなんてフェアズとの記憶だけ。


 悪い記憶ばかりで、本当に嫌になるなぁ。



 ――――ゾクッ



 体が重く、悪寒が……。


「―――― 僕と似ているみたいだね、覚えている記憶」


 フィルムの魔力が噴き出している、感情を抑え込めていないみたいだね。


 嫌な記憶を思い出してしまったみたい。

 これは、またしても馬鹿でかい植物魔法を出してくるかも。あと、モンスターも大量発生してくるかな。


 知里の魔力はどれだけ残っているだろうか。

 もう一度、vibration(ヴィブラシオン)出せるかな。


「私のことを、誰も見ていない。そう、私の事は誰も見ていない。誰も、私は他人。誰も、誰も……」


 なんだ、なんか、嫌な感じがする。

 さっきまでの怒りとは違う。言葉に出来ないけど、嫌な感覚が……。


 フィルムは顔を俯かせ、今も何かをぶつぶつ呟いている。


「私は結局他人、誰も私を見ていないし、誰も私を気にしていない。そのはずなのに……」


 ────結局他人?

 そう言えば、今までもフィルムは基本他人事で物事を考えている傾向があったな。


 あまり自ら話に入らなかったし、必要最低限な事しか答えなかった。

 それが、人間だった頃のフィルムと関係があるの?


「私の事は、誰も見ていない。誰も気にしてない。…………そんなことない」


 なんか、駄目な気がする。

 このまま黙っていたら、駄目な、気がする。


「みんな、私の事を怖がってた。みんな、私を嫌がってた。無理、無理だよ、おじいちゃん。私、もう、気にしない事、出来ない。出来ないよ……」


 おじいちゃん?

 どうしたんだ、今にも泣きそうな声を出して顔を隠して……。


 何を、思い出したんだ。

 あの小さな体で、何を背負っているというんだ。


「フィルム、一体なにがっ――……」


 手を伸ばした時、視界の端には、刃のように鋭い枝。

 僕を取り囲むように、刃先を向ける。


「…………ちょっと、やばいかも」

ここまで読んで下さりありがとうございます!

出来れば次回も読んでいただけると嬉しいです!


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よろしくお願いします(*・ω・)*_ _)ペコリ

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