生きたいと思う感情は、誰もが持っているもの
耳が痛い!! この魔法を出す時は絶対に声をかけてほしいよマジで!!
「~~~~~~~!! あ、落ち着いて来た?」
やっと音が落ち着いて来たから周りを見ると──あぁ、一掃されてんなぁ……。
いや、うん。
何も残ってない。植物ですら地面にボトボトと落ちている。
俺の近くにアマリアが寄ってくる。
目線は、悔し気に顔を歪めているフィルムへと向けられていた。
「こんの、こんの!!!」
「落ち着きなよ、フィルム。いくら少しの魔力で強力な魔法を出せるとはいえ、限界はあるんじゃない?」
冷静に言うが、フィルムには通じない。
鼻息を荒くし、肩を上下に動かしている。
血走らせた目をアマリアに向け、叫び散らし続けた。
「うるさい!! 裏切り者が!! 裏切り者!! 裏切り者!! お前はあのお方から受けた恩を仇で返した!! 生き物の恥! 仲間である私達を裏切るなんて最低だ!!」
感情のままに”最低”と言ったり”恥晒し”と言ったり。
知っている暴言を全て吐き出すように、アマリアを責め続けてやがる。
隣にいるアマリアの表情は一つも変わらない。
聞いていないのか、それとも気にしないようにしているのか。
「お前は、あのお方の恩を……。許さない、許さない!! 裏切り者は殺す!!!」
っ、また植物が動き出した!
アマリアは、何を考えているんだよ。
表情を見ても、表情一つ変えない、無表情。
「──――恩って、何? フィルム」
「!!??」
――――ほえ?
なんか、動きを止めた。
……なんだ、なんか。
こいつらにしか分からない繋がりがあるのか。
俺にはわからない事があるみたいだ。
いや、当たり前なんだけど。
こいつらの事、理解しようともわかろうともしたくないけど。
――――トントン
後ろから肩を叩かれた。
振り向くとグレールが指を後ろに向けている。
指を指されている方向を見ると、アルカとリヒトが俺達を見ている姿。
なるほどな、アマリアが気を引いている時に作戦会議か。
さっき俺が考えた事も伝えたいし、いい機会だ。
――――任せたぞ、アマリア
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裏切り者、裏切り者。
まぁ、管理者を裏切ったし、裏切り者だからそう言われるのは仕方がないし、気にしてない。
ただ、恩と言われると、僕の場合はフェアズのついでだったし、特にないんだよなぁ。
だから、恩を仇で返すとか言われても、僕はその恩を貰っていないわけだし、特にって感じ。
でも、それは確かフィルムも一緒だったはず。
こいつを見つけたのはあのお方――――クロヌじゃない。
ウズルイフがフィルムを見つけて、クロヌに言って管理者としての力を授かったはず。
詳しいことは聞いていないけど、恩はあまりないことはこれだけでも分かる。
あったとしても、それはウズルイフ相手だろう。
まぁ、ウズルイフの普段の言動や行動でフィルムは困らされている。
めっちゃ嫌がっていたしね。
「ねぇ、もう一度聞くけど、恩って、なに?」
「恩、それは、私達を拾ってくれたこと……」
「僕は拾ってほしいなんて思っていなかったし、フェアズがいなかったら断ってた。それに、今までやらされていたことを、僕は恩とは感じていない」
逆に、いっそあの時に死ねば良かったとも思っていた。
だから、恩は感じていないし、さっきの暴言は通じない。
でも、逆にフィルムには効くでしょ。僕の言葉。
今はリヒトのおかげで体が言うことを効くようになった。
痛みはないにしろ、体は重たかったし、思考も回らなかった。
今なら、こいつと普通に会話が出来る。
「ねぇ、本当に恩を感じているの? 本当に、あのお方に――――クロヌに恩、感じてんの? もし、何も感じていないのなら――……」
「うるさい!!!!」
…………もう、自分で言っているもんじゃん。
はぁ、管理者のメンバーは、アクアとクロ、フィルムは人間だった頃はまだまだ子供。
感情的になるのは仕方がないし、そこを利用してきたこともあった。
今回も、”子供”という所を利用しようとしている。これが、大人のやり方。
子供の扱い方もわかっているし、どこが沸点か、なんの言葉を言えば怒り出すか、悲しむか喜ぶか。
全ては計算、子供は強いけど、扱いやすい。
「……──私は、恩を感じている」
「本当に?」
「本当、感じてる」
……? いきなり冷静になった?
でも、声は微かに震えてる。
「あの時、私を拾ってくれなかったら、どうなっていたかわからなかった。死にたいとは思っていなかった、生きたかった。生きたかったから、生かせてくれたウズルイフやクロヌ様には恩、感じてる」
生きたかった、のか。
いや、確かに、普通ならそう思うか。
僕が、なかなかにバグっているだけで……。
「生きる事を許してくれたから、恩を感じている。だから、私はその恩を返さないといけない。裏切り者排除と、異世界人排除で。私は、恩を返すんだ!!」
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