人を信じるのは難しいが、気持ちにこたえる事はなんとなくできる気がする
グレールの方は、ひとまず大丈夫そうだな。
アマリアがどうなっているのか気になるが、今はこっちに集中しなければならない。
「……………………どうやった。空間、抜け出す、不可能」
「不可能を可能にした男が目の前にいる、ただそれだけだ。あまり深く考えるな、教える気はないし考えるだけ無駄だぞ」
まぁ、俺達が抜け出す事が出来たのは、グレールの力が大半なんだけどな。
あの空間、グレールの辺りが氷始めたかと思うと、氷の塊が自然と出来上がった。
それがあの空間を作り出していた核。それに触れると、地上までの道筋を辿る事が可能となった。
リンクがその道筋を辿りワープゾーンを作り、俺達は地上に出る事が成功。
魔力を大量に使うしウズルイフにばれると思っていたんだが、意外と気づかれずにここまで来ることが出来た。
そんで、現状を見て本当に急いで良かったと思った。
ロゼ姫とリヒトは気を失い、アルカとアマリアは頑張っていたみたいだけど押されていた。
あともう少し遅かったらと思うと、マジで体がぞっとする。
「わかった、考えない。考えても、無駄」
「わかってもらえたのなら良かった」
「わかった。考えても、無駄。お前、死ぬ」
「……………………はぃ?」
え、俺が死ぬ? え、予言?
俺今、予言されたん?
──あ、”死ぬ”じゃなくて”殺す”と言いたかったのか?
おっ?! 上に飛んだ。
黒いローブは全員同じ大きさなのか? 体の関節とかが見えないし、手がどこに向けられているのかわかりにくい。予備動作が捉えられん。
「殺す――――|armure・plante」
魔法を唱えると、黒いローブから植物が伸び始めた、だと?
あいつの属性は、植物?
黒いローブから現れた植物はフィルムの足に伸び、鋭い刃を作り出す。
まさか、あれを武器に肉弾戦に持ち込む気か?
それはまずい、相手の得意な土俵に立つわけにはいかない。俺は肉弾戦苦手だし。
「っ、おい、アルカは下がってろ。その怪我で動くのは難しいだろうが」
何を思ったのか、アルカが俺の隣に立って剣を構え始めやがった。
魔力もあまり残っていないはず。
だって、今もまだ土人形が残っているし、土で作られている刃もアルカの周りを飛んでいる。
剣も、折れてるじゃねぇかよ。
そんな状態の剣を構えたところで、危険度が増すだけだ。
「確かに、俺はもうあまり体が動かない」
「ならっ――――」
後ろにいろ、そう言いたかったのに。
アルカの目を見たら、その言葉を言う事が戸惑われてしまった。
「カガミヤ、俺は、少しは強くなったんだろうか。俺は、カガミヤに少しでも、近づけたのだろうか」
アルカの、闘志の込められているような、強い瞳に言葉。
その言葉に、俺はなんと返せばいいのか、わからない。
「もし、俺が少しでも強くなったと思ってくれたのなら、このまま戦わせてくれ。カガミヤの隣で、剣を握らせてくれ」
折れた剣を握り直し、俺から目を離したアルカは、上空にいるフィルムを見据える。
…………そんなことを言われちまったらもう、何も言えない。
ここで無理やり下がらせてしまえば、アルカの気持ちを無下にすることになる。
何より、こいつは俺とグレールが必ず戻ってくると信じていただろう。
その気持ちで、アマリアと共に頑張ってくれていただろう。
そんなアルカの気持ちを無下には出来ないし、俺を信じてくれているアルカを信じないのも、居心地が悪い。
「――――わかった。だが、約束しろ。魔力の枯渇で眠りにつく前に離脱する事。それと、体の限界を感じたら速やかに避難する事」
「……………………」
「返事」
「……………………オウ」
声小さいなぁ、まぁ、いいけど。
「それなら、やるぞ、アルカ。俺に、お前が成長したという姿を見せてくれ」
「おう!!」
ここからは俺も本気だ。
だいぶアマリアとリンクが魔力を使っちまったが、まだ俺は戦える。
魔力がどのくらい残っているかとか知らん、眠くならなければ問題はないだろう。
魔導書を構え、空中にいるフィルムを見ると、あいつも準備が出来たらしい。
俺達を蔑むような瞳で見下ろしていた。
おい、蔑むな、せめて、こう、なんか、テンションが上がるような瞳を向けやがれ。
殺気以外の、なんか――――無理か。
「必ず、殺す」
「なら、俺も言おうか。必ず、お前を、始末。アルカ、二人で」
「……………………真似、うざい」
いや、こっちとしては文章で話してくれないお前の話し方がうぜぇよ。
なんだよ、なんで片言単語なんだよ。もっとスムーズに話してくれよ。
「――――っ」
黒い煙? しかも、グレールの悲鳴。
横目で見てみると――ウズルイフが、消えてる?
姿を晦ませたのか、それとも本当にこの場から姿を消したのか。
「来るぞ!!」
「っ、ちっ」
考える暇すら与えてくれないらしい。
フィルムが空中を蹴ったかのような勢いで俺の方へと突っ込んできた。
黒いローブから突き出してきた拳にも、足に纏わりついている植物と同じものを纏わせていた。
俺の炎の拳魔法と同じか!!
なら、こっちも同じ技を繰り出してやるよ!
「fistflame」
拳を作り、炎を纏わせながら突き出された拳に俺も突き出した。
似たような魔法のぶつかり合いなのなら、魔力の強い方が勝つ。
絶対に負けない。魔力を拳にそそっ――――え?
フィルムの拳に纏われていた植物が、俺の炎を消すように絡みついて来た――――だと?
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