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絶対に、ここで負けられない

「――――意外としぶとかったなぁ~。やっと片付いた」

「ウズルイフ、時間、かかった」

「アマリアが意外としぶとかったのもあるが、お前もお前で人のこと言えないじゃねぇーか。一発で仕留められなかったくせに」

「うるさい」


 ウズルイフは自身の頬についた傷から流れ出る血を拭いながら、隣に立つフィルムを横目で睨む。


 そんな二人の前には、地面に倒れ込んでいるアマリア達。


 リヒトとロゼ姫は、最初にフィルムの一発で気を失ってしまっていた。


 アルカは、一発で仕留めに来たフィルムの蹴りを何とか反射のみで避けたが、その後の攻防について行けず、今は地面に倒れ込み動かない。


 最後まで粘っていたアマリアの身体は、もうボロボロになっている。


 青年の姿になり、魔法の上限を消し全力で戦っていたが、ウズルイフの時魔法により全ての魔法は相殺され、アルカ達を倒し終わったフィルムの植物魔法で攻められていた。


 何とか避けたり受け流したりしていたが、それにも限度がある。


 徐々にフィルムの攻撃魔法を避けきれなくなり、今では体の至る所から血を流し、地面に倒れ込んでいた。


 無理やり立ち上がろうと腕や足に力を込めるが、力が抜け立ち上がれない。


「はぁ、はぁ……」

「しぶといなぁ~。このままだと本当に殺しちまいそう」


 ウズルイフはまだ気を失っていないアマリアに近付き、しゃがむ。

 動こうと抗う彼を見て、目を細め右手を頭にかざした。


「ウズルイフ、殺す?」

「これ以上邪魔されても困るしなぁ~。精神を破壊させた時の顔を拝みたかったが、仕方がない。それは、知里で我慢する」


 珍しく笑っていないウズルイフの隣に立ち、フィルムは肩を竦めた。


「珍しい」

「俺が俺の目的を諦める事がか? 安心しろ、裏切り者をこのまま何もなく殺すわけがないだろう」


 白い八重歯を見せ笑い、アマリアにかざした右手に魔力を込める。


 ────まずい、避けなければ。

 そう思うも、アマリアの身体は動かない。

 歯を食いしばり立ちあがろうとするも、力が入らず無理。


 藻掻き、足掻いているアマリアの姿を滑稽というようにウズルイフは嘲笑っていた。


「それじゃ、苦しみながら死んでくれ、裏切り君」

「くっ、そ…………」


 魔法すら出せず、動くことすらままならない。

 アマリアは苦しみ声を出すしか抵抗が出来ず、歯を食いしばる。



 ────あと、《《もう少しなのに》》──……



 歯を食いしばり地面を強く握ると、隣から大きな声が聞こえた。


「|ground・bladeグランド・ブレード!!」


 魔法を唱えるのと同時に、アマリアを囲う二人の周りに、土で出来た複数の刃が現れる。


 そのうちの一本がウズルイフの腕に勢いよく放たれた。


「ちっ」


 すぐに後ろへ跳び、避けられてしまった。

 誰が出したかは、魔法の属性ですぐわかる。

 

 横を向くと、先ほどまで倒れ込んでいたはずのアルカが起き上がり、地面に両手を付き魔法を発動していた。


 額は深く切れ血がポタポタと流れ出ている。

 息も荒く、痛みもある。


 それでも、アマリアをここで失う訳にはいかないと、必死に魔法を出し二人に刃を放ち続けた。


「まさか、気を失っていなかったなんてなぁ~。おいフィルム、どうなってやがる」

「失った、気を、失わせた。絶対に」

「あぁ?」


 ウズルイフはいつも通り、自身のペースを崩さないが、隣に立っているフィルムは何故か驚き、目を見開いていた。


 そんな二人の様子など、アルカは気にしない。

 魔力を両手に込め、空中を自由に飛び交っていた土の刃を二人に向けて操作し放つ。


 二人は隙間隙間を使い、体を自由に動かし避ける。

 時々肌を刃が掠め血が流れ出るが、二人にとっては些細な事。


「何をそんなに驚いてやがる。あいつは弱い、また同じように仕留めればいいだろう。今回は、殺す勢いでな」

「……………………わかった」


 フィルムはウズルイフの言葉で落ち着きを取り戻す。

 すぐに地面を蹴り、アルカへと駆けだした。


 自身に近付かせないように土の刃をフィルムに集中させるが、当たらない。

 掠ってはいるが、足を止めるほどの威力はないため、徐々に距離を詰められる。


 ――――カガミヤは必ず戻ってくる。必ず、俺達の元に戻ってくるんだ。

 だから、こんな所で俺が、負けるわけにはいかないんだよ!!


 負けられない、そんな気持ちのみでアルカは動いていた。

 魔力を今よりも強く込め、他の魔法も同時に発動させる。


「|ground・dollグランド・ドール!!!」


 土の刃と土人形。

 すぐさまフィルムへと襲わせる。


 刃の方は簡単に避ける事はできるが、大きな土人形の手は一度足を止めなければ避けられない。


 めんどくさいというように舌打ちを零し、一度後ろに下がり避ける。

 すぐに手と胴体の隙間を縫い、アルカへと駆けだした。


 これ以上違う魔法を発動する事も出来ないアルカは、土の刃で何とか足を止めようとし、土人形も駆使して足掻く。


「結構粘るなぁ。まぁ、こっちはこっちでやればいいか」


 意外と粘るアルカを横目に、ウズルイフはアマリアを始末しようと魔力を再度込め始めようとした。


 だが、その手は途中で止まる。

 理由は、アマリアの目を見てしまったから。


「――――なっ」


 アマリアはほんの少しだけ顔を上げ、ウズルイフを見上げていた。


 その瞳には、強い決意と怒りの業火がメラメラと燃え上がっており、一目見たウズルイフの身体をかすかに震わせた。

ここまで読んで下さりありがとうございます!

出来れば次回も読んでいただけると嬉しいです!


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よろしくお願いします(*・ω・)*_ _)ペコリ

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