突如現れた絶望
名前を聞いた瞬間、アルカ達は目を見張り、体を硬直させる。
三人の反応を見てククッと笑うと、何かに気づき片眉を上げた。
「あぁ? なんか、人数足りなくねぇか?」
「俺が落したのは~」と、指折り人数を確認する。
その時、すぐに誰がいないかわかり名前を口にした。
「――――あ。アマリアと言う、俺の元玩具がいないのか」
言うと同時に、ウズルイフの後ろに小さな人影が現れる。
姿勢を低くし、視界から外れ、人影は右手を前に突き出した。
「お~、そこにいたか」
「っ」
ウズルイフは、人の何倍も周りの気配に敏感。
にやぁっと笑い視線を後ろへと向け、左右非対称の瞳と目を合わせた。
「sunet!」
「temps」
音魔法と時魔法がぶつかり合い、相殺。
爆発が起き、アマリアの身体が吹っ飛ばされる。
ウズルイフは顔を抑え、地面を踏みしめた事で吹っ飛ばされずに済んだ。
「ほぉ~、気配を消していやがったな、アマリア」
「さすがに消すでしょ。消しても意味はないとわかっていても、ね」
吹っ飛ばされたアマリアは、空中で何とかブレーキをかけウズルイフを見下ろした。
逆に、ウズルイフは彼を見上げ、笑う。
「意味がないとわかっているのなら、良かったわぁ~。に、しても……」
言葉を途中で切り、後ろにいるアルカ達を一目見た。
「アマリアも共に離れさせ、簡単にあの三人とモンスターを殺そうと思ったんだがなぁ。まっ、何とかなるか」
にぱっと笑顔になり、アマリアを見上げた。
ニヤついているウズルイフと目が合い、アマリアは不愉快というように眉を顰める。
「…………ねぇ、ここにはウズルイフしかいないの? そんなことないよね?」
「わかっているのに質問する意味がわからんな」
「そう言うって事は…………」
アマリアは周りに視線をさ迷わせる。
だが、ウズルイフ以外に誰もいない。
必ずどこかにフィルムがいるはずなのにと、探した。
「探していてもいいが、俺がその間、何もしないと思っているのか?」
「何もしないでほしいかな」
「それは無理な話だな」
「だよね」
ウズルイフが右手を前に出す。
同時にアマリアも前に出し、魔法を発動した。
「temps」
「vibration」
またしても、二人の魔法がぶつかり合い爆風が吹き荒れる。
アルカ達は、吹き飛ばされないように地面を踏みしめ、顔を覆い隠し耐えた。
「な、なんで!! なんで、ここにウズルイフ様が現れるの!?」
「わかりません! ですが、アマリアさんがウズルイフさんを引き付けている今がチャンスです! 先ほどの二人の会話、どこかにフィルムさんがいるはずです! 仕掛けられる前に見つけましょう!!」
ロゼ姫は氷でいつものように杖を作り出し、アルカとリヒトを見た。
頷き、二人も周りを見回し、隠れているかもしれないフィルムを探す。
だが、今はウズルイフとアマリアの魔法がぶつかり合い、まともに周りを見る事が出来ない。
それでも、気配を探ろうと集中。
すると、リヒトが何かに気づき天井を見上げた。
「――――う、え?」
リヒトの言葉に、ロゼ姫とアルカも上を向く。
上は何も見えない闇。
だが、そこに浮かんでいる何かは、見つける事が出来た。
「ま、まさかっ――……」
瞬きをした一瞬、目視出来ていた”何か”を見失う。
また瞬きをすると、眼前に現れたのは、深緑色の瞳。
リヒトは体を動かす事が出来ず、繰り出された拳をまともに食らい後ろへと吹っ飛ばされた。
――――ドゴン!
「リヒト!!」
「リヒトさん!!」
アルカとロゼ姫がリヒトに気を取られてしまい、背後に立ったフィルムに反応が遅れる。
ロゼ姫は振り返り際に氷の杖を振りかざす、だが、簡単に折られ蹴り飛ばされた。
次に狙いを定めたのは、アルカ。
小さな体を活かし、ロゼ姫を吹っ飛ばした足で地面を蹴り、一瞬のうちにアルカとの距離を詰めた。
またしても一瞬でアルカも蹴り飛ばされる――――そう思ったが、アルカの反射神経がフィルムの動きを上回り、後ろへと跳び回避に成功。
「――――避けられた。驚いた」
やっと動きを止めたフィルムは、剣を握り驚愕しているアルカを見据える。
「っ…………」
視られているアルカはちらっと、壁の方まで吹っ飛ばされてしまった二人を見た。
二人とも一発で気を失ってしまい、動かない。
一気に戦力を削られ、先ほどまで一対四だったのだが、一瞬のうちに二対二になってしまった。
しかも、相手は管理者。
アマリアはともかく、アルカが管理者である二人に敵うわけがない。
そう、自分自身で思っており、汗が滲み出て焦るが募る。
「体、震え。怖い?」
「っ、怖いか、聞いているのか……?」
アルカは言葉の意味をうまく理解出来ず、聞き返す。
すぐにコクンと頷き、アルカを指さした。
「怖い? なら、すぐ、楽にする」
「? 楽にって…………」
アルカとフィルムが話していると、アマリアが突如、大きな声でアルカに叫んだ。
「油断をするなアルカ!!!!」
アマリアの言葉と同時に、アルカとの距離を詰めたフィルムは、拳を握り殴り掛かった。
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