今までを振り返ると俺、やっぱりヒロイン?
「た、助かりました、チサト様」
「お、俺も自分の咄嗟の判断に助かった……」
周りには、大量の水の塊。
フヨフヨと俺達の周りを浮いている。
「さきほど、オオザメに使った技が今になって本当の意味で必要となるとは…………」
「う、うん。マジでさっき、試しておいてよかったよ…………」
ロゼ姫の言う通り、俺は降ってきた水に魔力を込め、自身で操作可能にしている状態。
圧が凄く体が重くて大変だったけど、被害は最小限に抑える事に成功。
「これが、ボタンを押したことで発動したトラップ?」
「そうかもしれませんね。チサト様がいなければ水に流され海の藻屑になっていました。本当にありがとうございます」
た、確かに。
いや、俺がこの技を瞬間的に使っていなかったら本気で危なかったぞ。
これがSSSランクダンジョンのトラップ?
単純だけど、食らうと一発アウト。こえぇよぉ……。
「でも、その水はどうするつもりですか?」
「浮かせているのも疲れたが、今落すとここ一体が湖になるだろうしなぁ。ひとまず、階段に水を落としてくるわ」
「お願いします」
リヒトがその間に色んな所を見て変化を探すと言ってくれた。
他の奴らも探してくれるらしい。
俺は自分で言った通り、階段下に水を流し続ける。
ゆっくり流せば、まぁ水に埋まることは無いだろう。
まさか、ダンジョンの構図を凹凸にしたのって、これが理由? まさかな、そんなことないか。
それにしても、はぁぁぁぁぁあ、疲れた。
この異世界に来て、どのくらいの月日が経ったんだろうか。
もう、目まぐるしいから日付感覚、狂ってる。
というか、さすがにチート魔力を持っていると言っても、展開、早過ぎじゃねぇか?
俺がSSSランクダンジョンを攻略しようとするの。
今までは仲間が強くて何とかなっていたが、さすがに不安だ。
運が良かったというのもあるし。
まぁ、ここまで来たからにはやるしかないし、ここで引き返すのも嫌だ。
SSSランクダンジョンをクリア出来たら、今後もダンジョン攻略はスムーズに進むとポジティブに考えよう。
「…………」
――――――――まだ、口に苦い味が残ってる。
気分は最悪、体内に何かが入り込んでいるのではないかと思って、本当に不愉快。
思わず首を触るが、特に何かある感じはない。
ウズルイフは最近現れていないし、魔石は埋め込められていないはず。
トラウマを攻略したとは言えないし、さっきは抜け出す方法はわかったとも言ったが、同じことが今回も起きるなんて保証がない。
もしかしたら、今度こそ俺は精神を壊されるかもしれない。
そう思ってしまうくらい、俺はまだ、母親に捕らわれている。
もういい大人だと言うのに、女々しいな。親離れしろって、俺。
「はぁ……」
「何を考えているんですか?」
――――!?!?!?
「うぉ!?」
え、隣にリヒトが来ていた。
こいつ、気配消すのめちゃくそ上手くね?!
毎回驚かされるんだが……?
「何を考えているんですか?」
「え、なにって?」
「さっきからアルカと共に呼んでいるのに返事がないので。また、一人で抱えているのかなと」
”また”って言われた。
抱えているって………。なんか、その言い方、嫌だ。
自分を犠牲にして、他の人を助ける自己犠牲の塊とか、光ある主人公みたいな思考じゃん。
俺は自分が犠牲になるなんて御免だし、そんな光ある主人公的思考になんてならんぞ。
「別に、なにも抱えていないし何も考えてねぇよ。それより、何か見つけたのか? 俺を呼んでいたという事は」
……………………。
え、なに? なんか、リヒトが何も言わずに俺を見つめて来るんだけど。
あ、俺の周りの水が地面に落ちちまった。
まぁ、ほとんど流し終わっていたし、別にいいか。
「――――おっ?」
上から影が差したかと思うと、アルカが俺を見下ろしてきていた。
な、なんだよ、二人して……。
「カガミヤって、現状攻略を考える時や把握する時って、結構地獄耳じゃん?」
「え、そんなことないと思うんだけど」
なに、急に……。
「でも、カガミヤが周りの声が聞こえない程何か考える時って、大抵自分自身について考えている時なんだよな」
……………………ん? え、どういう事?
わからず何も言えないでいると、リヒトが補足してくれた。
「カガミヤさんは、考えている時は周りの人の声は聞こえていますが、悩んでいる時は周りの人の声が聞こえていないんです」
え、断定されてる?
「それでさっき、私達が呼び掛けても聞こえなかった。つまり、何かを悩んでいる。何を悩んでいたんですか?」
え、そんな…………え?
そんなこと…………あぁ、あるわ。
今までも何回か、二人の声が聞こえなくて驚かされた時があったなぁ。
そん時って、そう言えば大抵、過去を思い出しちまった時だ。
うわぁ、恥ずかしい。
俺、本当に女々しすぎる。恥ずかしい、泣きたい、埋まりたい、死にたい。
金に埋もれて窒息死がしたい。
「カガミヤ」
「カガミヤさん」
アルカがいつの間にか俺の隣に移動してきて、腕を掴んできた。
リヒトも反対側で腕を掴む。
な、なに?
「何回同じような事があっても、何回、カガミヤさんが苦しんでも。私達は絶対に離れませんよ。一緒に悩み、一緒に乗り越えていきたいです」
「そうだぜ。カガミヤが今まで俺達にしてきてくれたように、今度は俺達が、カガミヤと共に悩みや辛い過去を背負って、突き進むぞ!」
…………またしても、この二人は……はぁ……。
土足で踏み込んできやがる。
まったく、こいつらはどれだけ抱えるつもりだよ。
今も、その小さな体で色んなもんを背負っているくせに。
腕を引き抜き、代わりに頭をなでてやると、返ってきたのは満面な笑み。
口には出さねぇが、お前らが笑っているだけでも、俺は結構、気が楽になる。
この世界で知った、この、嫌だけど、本気で嫌だけど!!
消してはいけない、悪く無い感情。
この、言葉に出来ない、感情。
こいつらがいる限り、消える事はないこの感情で、俺は前に進むことが出来る。
そんな気が、するわ。
――――――――絶対に、口には出さんけどな!!!
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