※何がどうなっているんだ
俺を担いだまま、少年と少女は広場から細い通路へと駆け込む。
ドラゴンの咆哮はまだ聞こえるが、だいぶ遠ざかってきた。
「はぁ、はぁ……こ、ここまでくれば……」
「そうだな」
ようやく足を止める。
……いや待て。
俺みたいな大人を担いでいるのに、息一つ乱れていない。
この男、体力どうなってる?
あと、そろそろ下ろしてくれ。
普通に恥ずかしい。
「アルカ、大丈夫?」
「あぁ。リヒトの拘束魔法がなかったら危なかったかもしれないが、一応な」
拘束魔法?
さっきドラゴンの足元で光っていた鎖か。
「というか、このダンジョンはBランク向けのはずなんだけど。でもワイバーンは確かSランク……」
「くっそ!! 今回も報酬なしかよ!!」
「もう何回目なの……」
……完全に俺の存在が抜け落ちている。
ぼんやりしていると、リヒトと目が合った。
「ねぇアルカ。その人、いつまで担いでるの?」
「あ、忘れてた」
忘れられていたのか、俺。
ようやく地面に下ろされる。
「なぁ、お前はなんでここにいるんだ?」
そう聞かれても、俺が知りたい。
視線を逸らすと、水たまりに自分の姿が映った。
黒髪、黒目。
見慣れた顔。
黒いスーツに革靴。所々に赤黒い染み。
怪我をしていたのは本当らしい。
……ここはどこだ?
異世界転生?
いや、これは転移か。
そんなアニメみたいな話、あるのか?
いや、今ドラゴンがいたな。あるのか。
もっと情報が欲しい。
「まず、お前らについて教えてくれ。俺は今まで経験したことのない出来事の連続で、状況がわかっていない」
二人の会話でも、少しはわかったことがあるが……。
まず、ここがダンジョン。
ランクがある。
ワイバーンは想定外。
剣と魔法の世界確定。
……よりにもよって俺かよ。
「そうだな。聞くならまず名乗らないとな! 俺はアルカ=フェデリオ。アルカでいいぞ!」
「私はリヒト=ケインです。リヒトって呼んでください!」
律儀だな。フルネームで名乗るのか。
「……アルカとリヒト。ここはダンジョンで間違いないんだな?」
「そうだ。最近できたBランクのダンジョン……のはずだった」
「ギルドの手配ミスってやつか」
「そうなんです。もう五回目です。攻略しないと意味がないので諦めず挑戦していますが……」
毎回空振りか。
それ、絶対ミスじゃないだろ。
「ギルドに抗議は?」
「意味ないんだ。全部潰される」
……事情はわかった。
だが、俺はどうすればいい?
元の世界に戻れるのか?
考えていると、アルカが顔を覗き込んできた。
「本当に見ない顔だな。同じ冒険者なのに会ったことがないのも不思議だ」
「は? 冒険者? 俺は一般人だぞ」
アルカが目を丸くする。
「何言ってるんだよ。冒険者の証、左手につけてるだろ」
「は?」
左手を見る。
……指輪?
見覚えのない指輪がはまっている。
二人も左手を見せる。同じ形状。
「それがないとダンジョンには入れないぞ?」
「……誰だ。俺にこれをつけたのは」
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